こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
「こんなことはできないのかな?」とご質問を頂いているのですが、その中で数多い質問が「人の頭上でドローンを飛行できるのか?」という内容です。
誤った情報や誤った理解が広がらないために、国土交通省から出ている資料を元に紹介します。
直接的や間接的な人間なら条件付きでOKな場合がありますが、第三者の頭上でドローンを飛ばすのはNGです。
このページに書いてあること
ドローン飛行に必要な安全体制が大前提。
ドローンは何でもできる!と思いがちですが、あまり知られていない大前提があります。
それは、安全体制を整えていることです。(プロなら尚更です)
ドローンを扱うにあたって必要以上の安全を求めなければなりません。国土交通省のガイドラインにも記載があります。
無人航空機を飛行させる者は、航空法や関係法令を遵守することはもちろんですが、使用する無人航空機の機能及び性能を十分に理解し、飛行の方法及び場所に応じて生じるおそれがある飛行のリスクを事前に検証し、必要に応じてさらなる安全上の措置を講じるよう、無人航空機の飛行の安全に万全を期すことが必要です。
ドローンは落ちます。空中に飛ぶものは重力があるかぎり、必ず落ちます。100%落ちないということは、一切ありません。
ここからは国土交通省が記している、安全を確保するための体制をベースに記載していきます。
ドローンによる人的被害を限りなく少なくするために、国土交通省には以下のような文章があります。
4-3 無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制
4-3-1 次に掲げる事項を遵守しながら無人航空機を飛行させることができる体制を構築すること。
(1)第三者に対する危害を防止するため、原則として第三者の上空で無人航空機を飛行させないこと。
このドローンを飛行する時の安全体制として登場するのが、上記の太字にした一文です。
この一文、実は深い内容なのです。しっかりと読んで欲しいので、もう一度抽出しますね。
(1)第三者に対する危害を防止するため、原則として第三者の上空で無人航空機を飛行させないこと。
第三者の上空でのドローン飛行とは何か?
前述の一文に記載のある「第三者」というのが、まずは注目ポイントです。
そもそも第三者というのは、何を指しているのでしょうか?
国土交通省では「人」について以下のように記載しています。
「人」とは無人航空機を飛行させる者の関係者(例えば、イベントのエキストラ、競技大会の大会関係者等、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者を指します。
ここで登場するのが、
- 操縦者(飛行させる者)
- 操縦者の関係者(直接的または間接的に関与する者)
- 上記に当てはまらない者(=第三者)
の3つです。
ここで第三者が何なのかが見えてきますよね。では、もう一度、一文に戻ります。
(1)第三者に対する危害を防止するため、原則として第三者の上空で無人航空機を飛行させないこと。
この解釈で「第三者の上空で飛行させない」とありますが、つまるところ、操縦者および操縦者の関係者の上空では飛行ができることになります(あまり好ましくないですが)。
例えば、エキストラが100人いる上空で撮影したり、撮影協力者1人の頭上で撮影したり、可能になるわけです。
それ以外の第三者の上空では飛行させないというのが、そもそもドローン飛行のルールなのです。
そして、もう一度注意して一文を読むと「原則として」とあります。この「原則として・・・を上手くできないかなぁ~」なんて思いますよね?
「原則として」に該当する要件と飛行条件
「原則なんだから、別に仕方のないときはOKなんじゃないの?」と思っちゃうのは早合点です。
原則ではない場合が記されており、下記の要件は飛行OKと記載があります。
人又は家屋の密集している地域の上空における飛行の条件の中にある第三者の上空の話で・・・
やむを得ず、第三者の上空で最大離陸重量 25kg 未満の無人航空機を飛行させる場合には、次に掲げる基準に適合すること。
ここで出てきました、「原則として」を取り払う条件です。
ちょっと長いので、さらっと見て下さい。要点は後ほど記載します。
a)機体について、次に掲げる基準に適合すること。
ア)飛行を継続するための高い信頼性のある設計及び飛行の継続が困難となった場合に機体が直ちに落下することのない安全機能を有する設計がなされていること。
当該設計の例は、以下のとおり。
・バッテリーが並列化されていること、自動的に切替え可能な予備バッテリーを装備すること又は地上の安定電源から有線により電力が供給されていること。
・GPS等の受信が機能しなくなった場合に、その機能が復帰するまで空中における位置を保持する機能、安全な自動着陸を可能とする機能又はGPS等以外により位置情報を取得できる機能を有すること。
・不測の事態が発生した際に、機体が直ちに落下することがないよう、安定した飛行に必要な最低限の数より多くのプロペラ及びモーターを有すること、パラシュートを展開する機能を有すること又は機体が十分な浮力を有する気嚢等を有すること 等イ)飛行させようとする空域を限定させる機能を有すること。
当該機能の例は、以下のとおり。
・飛行範囲を制限する機能(ジオ・フェンス機能)
・飛行範囲を制限する係留装置を有していること 等ウ)第三者及び物件に接触した際の危害を軽減する構造を有すること。
当該構造の例は、以下のとおり。
・プロペラガード
・衝突した際の衝撃を緩和する素材の使用又はカバーの装着 等
この(ア)(イ)(ウ)の3つをクリアしなくてはなりませんが、そもそも(ア)の段階でこの要件をクリアするのは非現実的です。
ドローンの機体として、ほぼ自作機でない限り不可能な条件だからです。特に下記の2点です。
- バッテリーが並列化されていること、自動的に切替え可能な予備バッテリーを装備すること
- パラシュートを展開する機能を有すること又は機体が十分な浮力を有する気嚢等を有すること
これをクリアした場合、原則として第三者の上空でも飛行ができるという話ですが、ほぼ該当するドローンは(特殊すぎて)ゼロに近いと思います。
2019年9月航空法の改正で「飛行に必要な準備」がルール化
2019年9月18日付けで、航空法の一部が改正されました。
その1つにあるのが「飛行に必要な準備」です。これを怠ってしまうと航空法違反となってしまいます。
簡単に言うと「ドローンを飛行する前に必ずチェックしてね」という法律。
飛行前に機体の点検等を実施することで故障等による落下を防止するため、航空法 第 132 条の2第2号により、飛行に必要な準備が整っていることを確認した後にお いて飛行させることとしている。
いろいろと飛行前チェックの項目があるのですが、その中の1つに「人の上空」という項目があります。
(2)当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況を確認すること
具体的な例
- 飛行経路に航空機や他の無人航空機が飛行していないことの確認
- 飛行経路下に第三者がいないことの確認
この文言は国土交通省航空局の解説なのですが、「飛行経路下に第三者がいないことの確認」についても記載があります。
つまり、ドローンを飛行する上で、すべての場所で第三者の上空はNGなわけです。
たびたび問題になっている「第三者の上空」というのが、全面的に禁止になったと言えます。
第三者がいる上空で飛行するためには?
唯一いろんな条件の中でも、比較的簡単にクリアできる方法があります。
飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。
つまり、関係者が誘導して「第三者が立ち入らない」環境にすることです。
例えば、新築マンションのドローン撮影をする時。飛行する場所に数人のスタッフがいて、第三者が入らないように目を見張る。もし第三者がドローンの飛行エリアもしくは直下にに入りそうだったら、誘導をして入らないように促す。
ドローン撮影のご依頼を頂く時にお話しているのが、この誘導が出来るか出来ないかです。
これをクリアできない限り、ドローンの飛行はできず、何かあった時も、何もなかった時も、そのドローン操縦士および依頼者がすべての責任を負うことになりますからね。
第三者の上空ではドローン飛行は実質的に不可、関係者の頭上で飛行を。
ここまでズラズラと記載しましたが、結論はコレです。
- 第三者の上空・直下ではドローン飛行は不可
- 第三者が直下にいない環境ならドローン飛行はOK
- 関係者の上空・直下ではドローン飛行はOK
ドローン飛行に覚えておきたい3つです。
ドローンが第三者の頭上で墜落して、ヤフーニュースに出るのは避けたいですよね?
例えば、重さ1.2kgのモノが上空50mから人の頭の上に落ちたら(ストレートな言い方ですが)即死です。
決して安易に第三者の上空でドローンを飛行しない、飛行させないようにしましょう。
あとがき
第三者の上空はNGです。映像が残って、それが証拠になる場合もあります。
⇒参考:違反性の高いドローン飛行、映像・動画が証拠になり捕まる可能性あり。
国土交通省の指針のもと、ドローンで第三者に怪我をさせないためにも、広く浸透していければと願うばかりです。