こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
「ドローンって空を自由に飛べるから、他人の土地(私有地)を飛んでもいいよね?」
このような、ドローンならではの疑問が湧いてくると思います。
ドローンには航空法という法律があるのは認知されつつありますが、実際には、その他にもたくさんの法律や条例が関わってきています。
空のルールだけではなく、地上にも、地上のルールがあるからです。
今回のブログ記事では…
- ドローンに関わる「土地の所有権」とは?
- 航空法の「飛行前確認」で違反になる場合がある
- どこでも自由に飛行できるわけでない理由
以上の3点を中心に「他人の土地(私有地)で飛行するのは、あらゆる法律に抵触する」ことの情報シェアをします。
ドローンには制限があります。
どこでも自由にドローンは飛行できるものではないので、十分に注意しなければなりません。
このページに書いてあること
他人の土地(私有地)にドローンを飛行して、航空法違反+権利侵害する?
結論からです。
ドローンには、航空法だけではなく…
- 民法の「土地の所有権」
- 各種条例
- 道路交通法
などの地上のルール(法律)があります。
例えば京都の金閣寺で、いきなりドローンをぶっ放したら、どうなるかは容易に想像ができますよね。
日本の土地は、どこ場所にも土地の所有者がいて、その土地の管理者もいます。それが海岸だとしても、山奥だとしても。
「土地の所有権」に権利侵害するのは言うまでもなく、さらに昨今の航空法は改正されて、場合によっては航空法違反にもなります。
ドローンは他人の土地(私有地)の上空を飛行することはできません。
その理由を順序立てて説明します。
ドローンに関わる民法の「土地の所有権」とは?
土地というのは、かならず権利者がいます。
例えば、あなたが庭付きの一軒家を所有していたとして、その土地の所有権はあなたであり、「ここはオレの土地だ!」と権利主張できるのは当然のことです。
なぜなら、高額な土地を購入しているからですね。
ドローンが飛行することは土地の所有権に侵害にあたるのでしょうか?
航空法を管轄している国土交通省航空局では…
航空法に従って飛行すれば、第三者が所有する土地の上空を飛行してもよいのでしょうか。
航空法の許可等は地上の人・物件等の安全を確保するため技術的な見地から行われる ものであり、ルール通り飛行する場合や許可等を受けた場合であっても、第三者の土地の上空を飛行させることは所有権の侵害に当たる可能性があります。
つまり、空のルールである航空法を守っていたとしても、土地の所有権に侵害にあたると書いています。
では、ドローンと土地の所有権について…
- 地上の所有権
- 空の所有権
の2つの観点から、ドローン飛行を考えていきます。
地上の所有権:他人の土地(私有地)に入って、ドローンを飛行させること
まったく関係のない他人の土地(私有地)に入り込んで、ドローンを飛行させるとどうなるでしょうか?
当たり前ですが、土地の所有権の侵害にあたりますし、刑法である不法侵入にもあたる場合があります。
考えてみれば当然のことで、あなたが所有している一軒家の庭で、見知らぬ人が入り込んでドローンを飛ばしていたら、間違いなく激怒しますし、警察にも通報しますよね。
常識過ぎて多くは書きませんが、他人の土地(私有地)に勝手に入ってドローンを飛ばすのは完全にOUTです。
空の所有権:他人の土地(私有地)の上空をドローンが飛行すること
ドローンが飛んで、他人の土地(私有地)の上空を飛行するのはどうでしょうか?
土地の所有権がどこまで関わってくるのかが焦点になります。
「土地の所有権」には、空も含んでいる
土地自体の所有権はわかりやすいのですが、その上空は誰のものなのか?がポイントになります。
民法207条の「土地の所有権」には…
(土地所有権の範囲)
第二百七条 土地の所有権は法令の制限内においてその土地の上下に及ぶ
法律の制限内で上空も地下も所有権があると記載されています。
つまり、土地の所有権は「空」も含んでいます。
ドローンが他人の土地(私有地)を飛行することは、民法上での土地の所有権の侵害にあたります。
この時点でドローンが上空を飛ぶことはOUTになります。
通説では「土地の所有権」は上空300mまで
ではどこまでの高さまで所有権が存在するのかが気になりますよね。
世間一般に広まっている説となっているのが、航空法からなる300mです。民法207条に記載のあった「法令の制限内」の法令=航空法と結びつけた高さです。
航空法81条にある一文を引用すると…
航空法による最低安全高度 / 最も高い障害物(建物等)の上端から300mの高度
(航空法81条,航空法施行規則174条1号イ)
つまり、建物の高さが20mあった場合に、300mをプラスする計算です。飛行機等が上空を飛行する上での「最低安全高度」が所有権の限界値と考えられています。
多くの法律専門家も上空300mまでが所有権にあたると認識されています。
利益や支配下を考えた範囲が所有権の上限という考え方
土地の所有権に関しては、「法令の制限内」という言葉があるため、300mとされていますが、その権利者が利益や支配下を考えたのが所有権の高さの上限という考え方もあります。
土地の所有権は、民法第207条の規定により、土地所有者の利益の存する限度内でその土地の上下に及ぶと解されるため、土地の所有者の許諾を得ることなくドローンをある土地の上空で飛行させた場合には、その土地の具体的な使用態様に照らして土地所有者の利益の存する限度内でされたものであれば、その行為は土地所有権の侵害に当たると考えられる
土地の所有者が「オレの利益を損なった」「支配下に入り込んだ」とした場合、ドローンが土地の上空を飛ぶ行為は、土地の所有権の侵害にあたると考えられるとしています。
つまり、「◯mといった尺度」ではなく、「権利者の利益の主張」がベースになる場合もあるとのこと。
どちらにせよ、結局のところは、土地の所有権の侵害に当たると言えます。
所有権のある土地の上空をドローン飛行するには?
実際問題として、上空300mまで所有権がある場合にどうすればいいのか?という話です。
多くの場合で、所有権を持つ人に許可を得る、というのが手っ取り早い解決方法です。
- 「ドローンが上空に飛んでもいいですか?」
- 「いいですよ」
もちろん、もともとの所有地で飛行させる場合には、その所有者の許可を得ていることなので問題はないですね。
しかし、何十軒もあるような民家や、複雑に区分けされている土地の場合に、ドローンを飛行させるとなると1軒1軒に承諾を得る必要があります。
航空法の「飛行前確認」によって違反になる場合もある
ところかわって、航空法です。
航空法には、飛行禁止エリアや飛行禁止方法があり、ドローンは法律的に規制されています。違反飛行となれば、罰金刑に処されます。
今回、他人の土地(私有地)の上空にドローンを飛行させることで、航空法違反にあたる場合があります。
それが、航空法 第百三十二条の二 です。
第百三十二条の二
無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。(中略)
二 国土交通省令で定めるところにより、当該無人航空機が飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整つていることを確認した後において飛行させること。
この条文には、ドローンを飛行する前に「必要な準備が整っているか」の確認をしなければならないとされています。
では、「必要な準備が整っているか」というのが…
飛行に必要な準備が整っていることを確認した後の飛行
飛行前に機体の点検等を実施することで故障等による落下を防止するため、航空法 第 132 条の2第2号により、飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させることとしている。また、航空法施行規則第 236 条の4に定められた確認しなければならない事項とその具体的な例は次の通りである。(中略)
(2)当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況を確認すること
具体的な例:
・飛行経路に航空機や他の無人航空機が飛行していないことの確認
・飛行経路下に第三者がいないことの確認
ドローンを飛行させる空域およびその周辺状況を確認するとあって、もっとも関連するのがコレ。
飛行する前(離陸する前)に「飛行経路下に第三者がいないことを確認」です。
これを怠ると、航空法 第百三十二条の二 の違反となるわけです。
他人の土地(私有地)の上空を飛行する場合、離陸前に、その私有地のなかに第三者がいるかどうかの確認をしようとしても困難です。
勝手に立ち入りして「人はいるかなぁ」と確認することはできないですし、物陰にいたり、木の下にいる可能性もあります。それを事前に第三者がいるかどうかを確認しなければなりません。
自分の土地(私有地)なら確認ができますが、他人の土地で確認しようとするのなら、不法侵入しなければなりません。
この第三者の上空というのは、航空法上では絶対的な禁止事項となっています。
国土交通省航空局の飛行許可を得ている場合でも、飛行経路範囲に補助員を置かなければならない
もし飛行禁止エリアや飛行禁止方法を、条件付きで国土交通省航空局から許可を得た場合。
上記と同様に、第三者の上空を飛行しないよう
- 必ず飛行経路に補助員を配置する
- 補助員は経路下に第三者が入らないよう注意喚起する
この2つが条件付きとなっています。
3.安全を確保するために必要な体制
3-1 無人航空機を飛行させる際の基本的な体制
- 飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。
- 補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。
補助者を飛行範囲に配置する…ということは、他人の土地(私有地)を上空を飛行させようとした場合、そこに補助者を配置しなければなりません。
つまり、ドローンを他人の土地の上空を飛行する場合には…
補助者を飛行ルートに配置することになります。
現実的に無許可で補助者が立ち入った場合、「不法侵入」になることは間違いありません。
さらに飛行マニュアルに沿ったとするのなら、民家の上空にドローンを飛行させた場合…
- その軒先や庭に、第三者がいるか確認しましたか?
- 建物と建物の間の路地に、第三者がいるか確認しましたか?
- 屋上に第三者がいるか、確認しましたか?
- 車や通行人がいるか、確認しましたか?
さらに、
- 路地の1つ1つに監視員を置いて注意喚起をおこないましたか?
- 建物の1つ1つに連絡をして第三者が出ないように連絡しましたか?
これらを実行しないと航空法違反になり得る可能性が充分にあります。
監視できない・注意喚起できない状態で飛行させるのですから。
つまり、現実的に、土地の管理者の許可なしに、他人の土地(私有地)の上空をドローンが飛行するのは不可能になります。
その他にも各法律・条例がドローン飛行に影響する
ドローンというのは、どこでも自由に飛ばせるものではありません。
民法の土地の所有権の他にも、様々な地上のルールは存在します。
たとえば道路だとしたら、道路交通法によって危険行為は禁止されています。公園も同様に、条例等で禁止されています。
河川敷や神社など、最近では明確に「ドローン禁止」を出している場所が激増しました。
ドローンは、第三者をケガさせたり、事故を起こしたりします。またドローンは100%安全ではありません。人為的なミスによって重大事故を簡単に引き起こせます。
だからこそ、航空法やその他条例等が存在しているわけです、
「よーし、勝手に他人の土地で飛ばしちゃおう!」
そのような身勝手にドローンを飛ばすことで、いつの間にか違反者になっていたり、事故の加害者になっていたりします。
これは脅しではありません。
それだけ強い法律や危険性があるのがドローンである、という認識を持たなければならないのです。
ドローン飛行はどこでも自由に飛行できるわけでない
まとめです。
ドローンは、他人の土地(私有地)やその上空を含めて飛行はできません。
理由は3つです。
- 民法の「土地の所有権」の侵害が問題になる
- 航空法の「安全確認」が必要である
- その他の法律や条例が関わってくる
そのため、ドローンはどこでも自由に飛行することはできません。
「じゃあ、どうすればドローンは飛行できるの?」
それは、各法律を守るという点で、
- 私有地およびその上空のみでの飛行をする
- 土地の管理者から許可を得た場所および上空のみで飛行する
これがドローンを飛行する上で「地上のルール」をクリアする大前提となります。
もちろん「空のルール」もあるため、両方を守らなければ、ドローンは飛べません。
あとがき
「なんだよー」と思う方が多いかもしれませんが、ドローンって、そういうものなんです。
その上で、ドローンを扱うしかありません。