ドローン操縦士は儲かる?需要は?夢見る”甘いビジネス”ではない理由。

ドローン操縦士は儲かる?需要は?夢見る”甘いビジネス”ではない理由。

こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。

ドローン!ドローン!っと騒がれ始めていますね。いろんな人が「需要がありそうだから、ドローンでビジネスできるんじゃない?」と考えますよね。

そして、ドローンで空撮をすれば儲かる!と夢が広がっていき・・・

さて、そんな夢を見るドローンビジネスですが、どこにも現実を語っている話が転がっていません。

将来性や夢、希望を膨らませるのは楽しいことですが、実際問題として「どうなの?」という視点がなければ、馬鹿を見てしまいます。

最悪の場合には、あなたの人生も狂わしてしまうことも。

「ドローン操縦士をやってみたい」と思う方へ。どのような現実があるのか、どのような壁があるのか、それでもなお目指したいのか・・・

良くも悪くも、あなたが誤った道を進まないための、現場目線で語る1万4000文字の長文です。

このページに書いてあること

夢として見てしまうドローンビジネス

2016年はドローンにとって飛躍的に注目を浴びる年になりました。

例えば、ドローン宅配やドローン測量、ドローン調査など、ドローンの活躍の場が劇的に増加すると予想され、大手企業がこぞってドローンビジネスに参入

そんな中、ドローンを扱う現場では、「ドローンスクール」「ドローン学校」といったスクールビジネスも2016年が盛んになり、大きい団体から小さい団体まで立ち上がりました。(一部では資格商法化してますが・・・)

そのスクール等の活性化から出てくるのが、「ドローン操縦士」というドローンを操縦する人たちです。

「憧れるなぁ~」「儲かるんだろうなぁ~」と想像だけが膨らんでしまうのは当然だと思います。

  • ドローンパイロットの請川さんは年収1億円とテレビ放映
  • ドローン世界市場規模が1兆2410億円、5年後に2倍の2兆2814億円になる成長産業
  • ドローン操縦士が14万人以上足らないというWEBニュース

こんな話が飛び込んでしまったら、誰もが夢を見てしまいますよね。

実際に私宛に「ドローン操縦士として独立したい」「ぜひ弟子にして欲しい」なんて連絡が来ます。数字で言うと、月に5人前後。連絡をする方は思いっ切りの良い方なので、もっと潜在層はいらっしゃるかと想像できます。

しかし情報に流されず、賢い視点を持っている方はすぐに気付いちゃいます。多方面の経営者とドローンについて話すことがありますが、「ドローンは甘いビジネスではない」とほぼ共通の意見

これは現場にいる私も全くの同感。「なにかと騒いでいるけど、夢だけが先行しちゃっているなぁ~。どんなビジネスでも甘くないのに」と。

つまり、作り出された情報をもとに、妄想だけが先行してしまう。実際の現場を知らず、情報の本質を見極めていないのです。

結論から言えば、ただ普通にドローンで操縦する人は儲かりません。

他のビジネス同様に、ビジネスの嗅覚、ビジネスのセンス、そしてビジネスの経験など持ち合わせてないと儲かりません。

「誰でも儲かる」そんな甘い話が転がっていないことを、あなたは知っているはずです。

情報の本質を捉え得ると、現実的な視点になれる

数値は非常に分かりやすい指標になり、よくビジネスの場でも「数値で表わせ」と言われますよね。

多数の人を納得させるのに数値は有効です。しかし時として、本質が見えにくくなります。

先の項目で挙げた「夢が膨らむ情報」を、せっかくですので本質をご紹介しますね。

ドローンパイロットの請川さんは年収1億円とテレビ放映?

「月曜から夜ふかし」という日本テレビの番組があり、ドローンパイロットとして請川さんを紹介してました。

一般人からの目線だと、「この請川さんって誰よ?」という話なのですが、番組は進行していき「私の年収は1本(1億)です」とコメント。

それを見た視聴者が思うことは1つ。「ドローンパイロットって儲かるんだなぁ」ということです。(このテレビ放送のときは、当ブログのアクセス数も激増しました笑)

さて、ここですでにお気づきの方は、知見を持っている方ですね。

請川さんは、この業界の中で頂点にいる方です。NHKのプロフェッショナルという番組にも出演したこともあります。

もっと分かりやすく言えば、野球で言うとイチロー。誰もが認める野球界の頂点ですよね。

ちょっと意地悪なのですが、テレビでイチローを観て「年収が○億円」という話を聞いたとします。それで思い立って「野球未経験だけど、プロ野球選手になろう!俺も○億円稼げる!」と決心するでしょうか?

もしそんな人がいるのなら、物凄い世間知らずな人と思っちゃいますよね。親戚にそんなことで野球選手を目指す人がいたら、間違いなく全力で止めます。

絶え間ない日々の努力を積み上げて、能力を高めて、ブランド力や実績を上げたからこそ、「イチロー」という価値に年収として対価が加わっているのです。

請川さんも同様、(たぶんですが)苦労を積み重ねて、今のポジションに立っていらしゃいます。そのポジションに、ド素人がポンッと立てると思っちゃうのは、あまりにも虫の良い話ですよね。

年収1億円という話も、CMやドラマなどの撮影依頼があるからです。素人の操縦士に、まずCM撮影の依頼なんて来ません。(ということは、どうやって素人が◯億も儲けるのか疑問ですよね)

もし私が発注する側のクライアントなら、素人操縦士にギャラは払いません。やはり経験があって、価値を感じる方にギャラを払いたいですから。

5年後に2倍になる成長産業?

ドローン業界は活気に湧いています。

2016年での調査結果もニュースでも取り上げられており、「ドローンは市場はこの5年で9000億円に」という市場予想が立てられています。

せっかくなので、ご紹介しますね。

矢野経済研究所は8月3日、ドローン(UAV/UAS)の世界市場の調査結果を発表した。2015年のドローン世界市場規模は1兆2410億円、うち民間用ドローンの世界市場規模は4053億円だった。

2015年から2020年にかけて年平均成長率(CAGR)は12.9%で推移し、2020年には2兆2814億円を予測する。世界市場全体では、現状で軍事用が過半を超えているが、2020年までには軍事用と民間用はほぼ半々になるものと予測する。

ZDNet Japan「民間向けドローンは市場はこの5年で9000億円にーー矢野経調査」より

要約すると・・・

  • 世界市場規模 : 2015年/1兆2410億円 → 2020年/2兆2814億円
  • 民間用ドローン : 2015年/4053億円 → 2020年/9000億円

といった具合で、「ドローンの市場が世界的に2倍になりますよ」という話です。

この数値だけ見てしまうと、市場拡大 → ビジネスチャンス→参入すれば儲かる!とビジョンを作ってしまいますよね。

実はこの数字だけでは、実態は見えてきません。もっと中身を見ると、より数値の意味合いが見えてきます。

ドローン世界市場規模予測ZDNet Japanより「民間向けドローンは市場はこの5年で9000億円にーー矢野経調査」より

このグラフを、よーく見てみましょう。緑色と赤色と、白色の三色です。

ドローンというのは軍事用からスタートしています。戦争中の無人航空機や無人ヘリコプターも”ドローン”の括りに入ってきます。

そのため、市場規模という観点から見ると、軍事用ドローンが大きな割合を占めるのは当然のことです。さらに開発費は膨大ですし、1機の値段も高額です。当然ながら市場に与える額はその分増額します。

赤色の「民間ドローンサービス」というのが、ドローンを利用したサービスですね。全体から考えると、数%です。確かに伸び率はありますが、決して多くはありません。

前述してある「何千億円の市場規模になる!」という話は、あくまで民間用ドローンの話です。特殊なドローンを開発したり、研究したり、実証実験したり…。サービス用途の話ではありません。

人間は都合の良い解釈をしがちです。

決して、ドローンでのサービスをビジネス化する時、そこになだれ込む何千億円の恩威を受けて、ガッポリと儲かるようなことはないのです。

ドローン操縦士が14万人以上足りない?

「14万人以上が足らない!」とだけ聞いてしまったら、「これはチャンスじゃないの!」と思っちゃいますよね。

でも、冷静で知見の深い経営者は、すぐに「そんなことはない」と判断しています。(ピンっと来る方は、本当に多いです)

これも前項目と同じように、中身を見なければ損をします

この14万人云々という話を出しているのは、某一般社団法人です。主にスクールビジネスを展開しているところですね。(「14万人が足らない」と先行的なイメージを植え付けたあたり、宣伝手法が上手です)

では、実際の中身を見てみましょう。

dpa_youtubeyoutube「DPA発足」より

それぞれのジャンル別に、ドローンパイロットの必要であろう需要推計が記載されています。

間違いがないように、テキストで引用すると・・・

  • 公共インフラ(検査・点検): 7万5000人
  • 農業 : 2万4000人
  • セキュリティ(人命救助・防災): 2万3000人
  • 空撮(映画・TV・観光・エンタメ): 5000人
  • 測量: 1万1000人
  • その他: 5000人

いかがでしょうか?

実際にドローンパイロットとして必要とされてるであろうジャンルは、公共インフラの調査や点検です。14万人のうち、半数以上が調査・インフラのジャンルに該当しますね。

その他に、農業やセキュリティなどが続いていきます。

そして多くの人が夢を見る「空撮」に関しては、5000人です。「14万人以上足らない!」と世間に広く知れ渡りましたが、空撮の人数が14万人足りるわけでは一切ありません。

14万人のうち、全国で5000人です。パーセントでいうと、3.5%です。

「なんだよー!」とお感じになった方もいらっしゃるかと思います。もともとこの14万人という数値は、前述のスクールビジネスを展開している一般社団法人が発表しました。

ということは、スクールに生徒を集めるための情報発信だということは容易に想像できます。「14万人」の中身を見極めないと、恐ろしいことになるのです。

※ちなみに、ここで登場する一般社団法人については、実に誠実だと感じています。しっかりと「空撮は5000人」と記しているので、決して嘘を付いているわけではありません。現実的な数値だと思います。

ドローンは画期的すぎる能力を持っている

ドローンは画期的なツールです。

安定的に飛行ができ、複雑な動きも可能とします。空飛ぶロボット・・・というのは言いすぎかもしれませんが、プログラミングをすれば、ドローンはいとも簡単に↓の動画のようなこともできます

全自動でロープを使って橋を作っていくドローン。

とても人間では操縦できない細かい動きも可能として、打つかること無く、ロープに絡まることもなく、複数のドローンが作り上げていきます。

たぶん多くの人が感じることは1つ。「ドローンの自動操縦はスゲー!」

日本には法律があるため、なかなか完全自動操縦をするのは難しいですが、今後法律の改正という運びになるのならば、ドローン開発者とプログラマーのみで成り立つかもしれません。

ドローン宅配は特に自動操縦が必須なので、この流れは進んでいくはずです。

実際にドローン操縦士は必要なのか?

ここまで来ると「操縦士って別にいらないんじゃないの?」と思いますよね。

いえいえ、それは否定させて頂きます。ドローンを操縦する人は、一定数は必ず必要です。最終的には人の判断でコントロールしなければ、安全は確保できないからです

ただし、ドローン操縦士としての専業者は極少数だと考えています。言い方を変えるとすれば、兼務者は多くいるかもしれませんが、専業としての操縦者は一握りになると考えられます。

先ほどの「14万人」云々の話から説明すると、そのうち大多数の人は兼務者になるはずです。

今、現場で起こっていること、これから起こることをお話しますね。

公共インフラ × ドローン操縦士

例えば、高速道路などの橋げたにあるコンクリートの点検。

これから徐々に人に変わって、ドローンが点検するようになります(ハンマーで叩くと言った点検方法です)。

この場合、大手ゼネコンが関わっていることもあり、すでにドローンを扱える人を育成しています。例えば、ゼネコンの内部に数人のドローンを扱える操縦者を育てれば、ササッと現場に行ってもらって点検完了です。

もちろん、ドローンを操縦するだけではなく、点検の実業務・報告などおこなうので、わざわざ外部から雇う必要はありません。多くの場合は、社内のみで完結します。

農業 × ドローン操縦士

ここはまだドローン利用が始まっていない(2017年春から)なので、なんとも言えません。

しかし、もともと無人ヘリコプターで農薬散布をしている人は日本全国にいます。無人ヘリコプターからドローンにツールを変えれば、事足りてしまいます。

日本の農業は特殊です。JAという大きな母体があるため、ドローンの農業進出は容易ではありません。行く手を阻む、大きな組織があるのも忘れてはならないです。

またドローン自体は、農薬の搭載量やバッテリーの関係で、大規模な農場・田畑には不向きでもあります。今後、ドローンの機体が向上したり、法律が改正されたり、JAで導入が促進されない限り、劇的な普及は考えづらいのが現状です。

セキュリティ × ドローン操縦士

人命救助や防災などでもドローンは利用されていきます。

よくニュースであるのが、「◯◯市の消防署にドローンが導入され、防災利用を進めていく」というものです。このような動きが全国に広がっています。

「では、誰が操縦するの?」と思うかもしれませんが、一般の消防士がドローンを操縦しているわけです。(実際に、このニュース(高知市消防局がドローンを県内の消防で初導入 災害時に活用)に消防士がドローンを操縦している写真が掲載されています)

人命救助や防災など必要とされているときは緊急のとき、もしくは特殊な状況のときのみです。しかも、上空から俯瞰図を撮影すれば完了することが多いため、特殊な技量は不要です。

わざわざ緊急時のときに、外部の操縦士を雇うのは考えにくいですね。

測量 × ドローン操縦士

測量というのは、土地の状態や位置などを把握するために作業するものです。

ドローンに関しては、上空から静止画撮影をすることによって今までの人力よりも、スピーディーに行えるのが特徴です。さらに近年では3Dへの転用も進んでいます。

ドローン測量は高いニーズがあるのも事実です。

国または地方公共団体が係る測量に関しては、原則ドローンを使用することが義務化されました。公共施設や道路などその領域は格段に幅広く、さらに民間への普及も加速すると言えます。

実際にドローン測量をおこなうドローン操縦士はいますが、これもまた兼務者がメインになっていくはずです。

大手ゼネコンや建設会社、また測量士などが、こぞってドローンを取り入れています。

測量の現場を想像すると、そこまで高い技量を持っていなくても測量ができてしまうのが現実です。

公共事業などの規模感の場合、ほとんどが更地で、障害物がほとんどない上空です。さらに言えば、ポイントを決めて撮影すれば測量は完了してしまいます。人口集中地区から外れていることも多いため、国土交通省の許可・承認等も不要な場合が多いようです。

つまり、操縦技量を必要としない場所で、決められた数ポイントで撮影をする。

動きとしては次のとおりです。離陸する、障害物のない空でポイントまで移動する、撮影する、戻ってくる。

グリングリンと旋回させる技量や、何か障害物を逃げながら飛行させる技量などは不要であることは言うまでもありません。これもまたゼネコンや建設会社の内部の人間ができてしまう範囲です。

現時点では、専業でおこなっている方にもニーズは存在しますが、長い目で見たらニーズは小さくなると想像できます。

結局のところ、内部の人間に測量をさせる(兼務させる)のが「低コストで手軽」に行き着いてしまいます。

専業よりも、兼務でドローン操縦をする人間が増加する

ドローン操縦士という役割は必要不可欠です。

しかし前述したように、ドローン操縦士として専業で活躍する場は少なく、実際には会社に属して通常業務を兼ねたドローン操縦をおこなうのが一般化されていきます。

例えば、工事現場監督者がドローンを飛行させて測量をする。その人も兼務としてドローン操縦士という訳です。

「ドローン操縦士が14万人が足らない」という話に当てはめるとするなら、ドローン操縦士という新しい雇用が14万人生まれるわけではありません

消防士がドローン操縦をすれば、その人も「1名」とカウントになります。実際には14万人のうち大多数が兼務としてのドローン操縦士です。

事実、ドローン操縦士の採用情報・募集情報は全国で3・4件です。新しい雇用が生まれるのは、14万人のうち数%かもしれません。

「空撮」とドローン操縦士の需要と現状について

空撮については、多角的に説明する必要があるので別項目にしました。(ガチで長い情報ですよー)

まず最初に結論から言うと、ドローンの空撮はすでにレッドオーシャン、つまり血で血を洗う競争の激しい領域です。

誰もが引く手の数多(ひくてのあまた)では一切ありません。これは断言できます。すでに行き詰まって廃業している人を知っています。

その理由を、現実的な目線でお話します。

そもそも需要が少ない。空撮の出番が少ない。

「えっ!」と思うかもしれませんが、ドローン空撮の需要は少ないです。

例えば、テレビや映画などを普段見ているかと思いますが、その中で、どのくらいの割合でドローンの映像が流れていると考えたことはありますか?

そのほとんどが、通常の撮られたカメラですよね。ニュース番組もバラエティ番組も。99.99%以上がカメラです。

ごくたまに、1つの番組の中で2・3秒だけ流れるシーンだけドローンというのもありますが、全体で考えると皆無に等しいです。

もちろん、映像として効果的に魅せるために、ドローンを利用した映像を撮ります。しかし、ドローンのみで撮影することは一切ありません。

映像として出番が少ないのです。

映像としては必ずしも必要ではない

さらに言えば極端な話になりますが、空撮はオマケの位置づけです。

建物や風景を説明する際に、どうしても空撮をしたほうが分かりやすいこともあります。理解という点ですね。地上からは絶対に狙えない角度から見せられるのはドローンの専売特許です。

しかし、極論を言えば、ドローンの映像がなくても、地上からの撮影だけで映像として成立します。昔からずっと地上からの映像を撮って、流していますからね。

ショートケーキで例えるとするなら、ドローンはメインを張るイチゴでは決してありません。ちょこっと乗っている緑の葉っぱ(飾り)です。その葉っぱが有っても無くても、ショートケーキは成立します。

この話をする上で、大きく関わってくるのが制作費の予算です。

映像の制作費は年々下がっており、大きな予算をかけられるのはCMや映画、大型ドラマなどです。

予算が限られてくる中、もしも「制作費を削る」と考えたのなら、真っ先に飾りとなる葉っぱ(ドローン)が対象になっちゃいます。(もちろん、ドローンメインで考えた映像なら別ですよ)

ドローンという位置づけは、決してはメインではありません。このこと、多くの夢見る人が忘れがちなのです。

現時点での空撮の需要

実際問題として「どれだけの依頼があるの?」と考えちゃいますよね。

ドローン操縦士を派遣するマーケットプレイス会社さんがあります。クライアントから案件を受けて、その案件を各ドローン操縦士に振っていくというサービスです。

とある全国対応でおこなっているマーケットプレイス会社さんは、インターネット検索での広告をバンバンと出航して月間100件の問い合わせがあるとの告知をしています

問い合わせ数で考えると、「おお!すごい!」と思うかもしれません。しかし肝心なのは、実際の受注数です。

「値段を聞きたい」「こんなことができるか知りたい」「他社と比較したい」という問い合わせは数多くあります。

その100件のすべてが受注できるわけでは無いことは、ビジネスをされている方なら簡単に想像できるはずです。

どのビジネスも同様ですが、一般的に問い合わせから新規受注に至る割合は、20%前後です。そう考えると、北海道から沖縄まで全国で20件の受注です。

多額の広告費をバンバンと出していたとしても、(あくまで推測ですが)その数値になるのではないでしょうか。

もう少し、余談をするとしたら、各ドローン操縦士に仕事を振り分けていくのですが、その登録数は100名以上。つまり、受注件数に対して登録者数が多いため、こう言ったマーケットプレイスに頼るドローン操縦士は廃業に追い込まれます。

映像制作会社はドローンを導入している

多くの映像を欲している映像制作会社。

実は、その映像制作会社でもドローンを購入しています。感覚的に、10社のうち5社くらいは現時点で所有済みではないでしょうか?

映像制作会社から依頼を受けておりますが、「えっ、ドローンを会社で持っているんですね」という会話をすることもしばしば。(それでも、なぜ私に依頼が来るのかは後述します)

前述したように、制作費の予算は決して多くはありません。自前で撮影できる状況が作れるのなら、当然ながら映像制作会社は導入しますよね。

実際に、テレビ番組でちょっとしたシーンを撮るときには、映像制作会社のスタッフが撮影することがあります。

上空から俯瞰図をまっすぐに飛行させて撮るような映像ですね。

例えば、日曜日の19時の人気番組「鉄腕ダッシュ」のダッシュ島では1回あたり数シーンでドローンにて撮影してます。

簡単なシーンなら外部に委託しているわけではなく、番組制作会社のAD(アシスタントディレクター)が撮影する場合が多いです。

空撮を外部依頼する需要(件数)が多くはない

ドローン操縦士は14万人以上足らない…という話から一転、イメージよりも需要(件数)が多くないと感じたでしょうか?

しかし、これが現実です。

冒頭にも記載しましたが、決して引く手の数多(ひくてのあまた)ではありません。

ドローンスクールに通っても卒業しても仕事は来ない

今現在、ドローンスクールが活況に沸いています。全国にタケノコの如く、スクールが誕生しています。

もし仮に「独立して起業する!そのためにスクールに通う!」とお考えの方がいらっしゃったら、ちょっとだけ立ち止まるのをオススメします。

そういったスクールに通って、民間認定の資格を取得したとしても、その資格だけで空撮の仕事は来ません。その理由は、今までお話してきた中で充分に感じ取れるはずです。

独立したとしても、数少ない件数を大多数の人数で奪い合っている状況です。新米で未経験のドローン操縦士が「スクールに卒業して、資格を持っています!」と言ったとしても・・・!?どの業界も同じですが、技量=受注数ではありません。

私自身は、スクールに通っていません。民間資格も持っていません。(持っているのは、国土交通省の日本全国の飛行許可承認書です)

独立して起業して、生業(なりわい)としてドローン操縦士をしたいのなら、絶対的に必要なモノがあります。

必要なのはビジネスセンス

民間資格が無くても、まったく問題になりません。

しかし無くては困るものは、ビジネスセンスです。ふんわりとした言葉なので、もっと日本語に近づけると「商才」でしょうか。

「どうすればいいですか?」という指示待ちのサラリーマン人間では厳しいです。どんなビジネスでも厳しいです。思考することを放棄してしまっていると前進できません(厳しい言い方でスミマセン!)

ビジネスの嗅覚力や行動力、思考力、イノベーション力など、もういろんな言葉が含まれてしまいますが、ビジネスセンスを持とうとしない方は、ドローンでなくても、飲食業でも、販売業でも、失敗する確率が非常に高いです。

競争が激しいレッドオーシャンを渡りきるには、ビジネスセンスが土台になければ溺れてしまいます

ドローン操縦士として必要な能力

そのビジネスセンスを土台にした上で、ようやく必要になってくるのがドローン操縦士としての能力です(ここでは空撮をメインに)。

能力を細分化すると4つに分けられます。

1. 調整力

ドローンでの撮影は、撮影が行われるまでが複雑です。

例えば、スチールのカメラ撮影の場合は、場所や日時、撮りたい被写体を言って依頼すれば、スムーズに撮影日を迎えられます。

ドローン撮影に関しては、依頼があって「では、撮影します」とは一切いきません。

撮影地の立地、撮影地の許可、各種法律の許可、必要なアングル確認などなど確認事項が多々あり、工程は複雑です。(当然、撮影不可になる依頼もあります)

さらに依頼をいただくクライアントのほとんどは、ドローン撮影自体が初めてです。

その方に、どれだけ分かりやすく説明し、どれだけスムーズに調整を進めていくのか。その段取りを、ドローン操縦士がおこないます。(他のドローン操縦士はどうだか分かりませんが、私はクライアントに安心して頂くよう最大限の努力を惜しみません)

この調整力がない限り、クライアントからの「依頼」まで行き着きません。

2. 操縦力

これは言うまでもありません。

まず第一に、上空から俯瞰を撮るような操縦力だけでは、番組AD(アシスタントディレクター)でも出来ちゃいます。

実際の現場では、より複雑な操縦が求められます。依頼する映像制作会社は、プロとして外注するのだから、難易度が高い撮影を依頼するのは当然です。

プロとしての、価値のある映像を提供する。それが対価として頂くギャラです。

もうひとつ。

前項目の(1)に関わってきますが、操縦力が乏しいと撮影できる領域が狭まります

例えば「木と木の間をすり抜けて撮って欲しい」との依頼があったとしても、「それは難しいからできません」と言ってしまえば、仕事を受ける幅は極端に狭くなります。

さらに、自分自身の技量よりも難易度の高い撮影を受けた場合、低クオリティの成果物にクライアントは不満になりますし、操縦にムチャをして衝突・事故が起きやすくなります

業務としての差は、歴然です。

3. 想像力

3次元という膨大な空間を飛び回り、空撮をおこないます。

操縦している側は、地上にいるわけなので「どこから、どう撮ればいいのか」というのは確認できません。

空間を読み取って、

  • この位置にいるとこのように撮れる
  • この障害物があるから、別方向からの撮影が収まりがいい
  • あと数メートル高度を上げると、映像にチカラが出てくる などなど

一言で言うと、これは想像力です。

撮影現場に立って、グルっと見渡すと見えてくる最適な画角。ドローンを飛行させなくても、いち早く最善を見つけ出す。

飛行して撮影している最中でも「こっちから旋回していくと、こんな画ができあがる」と言った想像がない限り、レパートリーも増えません。

単調な映像なのか、気持ちいい映像なのか、これは制作に関わっている方なら「ドローンでの想像力」の大切さが理解して頂けるはずです。

4. 天候運

これを能力として組み入れてしまうのは恐縮なのですが、”運”は欠かせません。

ドローンの撮影時に、大きく影響されるのが天候です。雨天というのは仕方ないのですが、強風というのもドローンにとっては天敵です。

どんなに雲一つない晴天だとしても、強風だった場合にはドローンは飛行できませんし、撮影できません。当然ですが、業務に結びつきません。

天候で大きく左右されるます。好天を引き付ける”運”を持ち合わせているかは、ドローン操縦士にとって鬼門(何をするにも避けなければならない)です。

4つの能力は、経験値がものを言う

上記の1~3に関しては、経験を積めば積むほど能力が上がっていきます。成長度スピードの差はありますが、経験は武器になります。

つまり、経験が積み重ねられるほど、より他操縦士との能力の開きが出てきます

逆を言えば、すでに先に経験を積んでいるドローン操縦士ほど、できあがるクオリティに大きな差が生まれています。

現場のディレクションをはじめとして、クライアントの要望を形にして商業用として成立させるクオリティ。クライアントから求められるプロとしてのスキルは、ここでは言えないほど多いです。

もし仮に発注するクライアントなら、当然、高クオリティを望むはずです。経験値が高いほうが、より具体的なアドバイスや新しい視点をくれるからです。

新しい産業は、スタートの数が圧倒的なリードを生みます。(俗に言う経験曲線効果ですね)

ここまでの話を聞いた上で「それでも!」という決意は?

長々と語ってきましたが、2通りの印象を持たれたのかと思います。

  • ドローン操縦士って、イメージと違って大変。辞めよう。
  • 困難な状況の茨道だとわかったけど、それでもドローン操縦士になりたい

前者のゲンナリしちゃった方は、ここでスパッとブラウザを閉じちゃいましょう。

中途半端な気持ちでドローン操縦士になろうとしたら、地獄を見る確率が非常に高いです。(早くに止める優しさだと思ってください…)

逆に心が強く、決意のある後者の方は、引き続き読み続けてみてください。私、早川がおこなっていること、そして近道3つをお伝えします。

ドローン操縦士 早川がおこなっていること

ここからは心機一転です。

「これだけ状況が悪いのに、おまえはどうしているの?」と感じますよね。

スミマセン、偉そうにズラズラと語ってきましたが、結論から言えば運が良かったというだけです。いろんなタイミングや嬉しい巡り合わせがあったからです。

もちろん辛い時期もありました。ただ、わざわざ私を見つけてくださるお客様にも出会えました。(感謝です!)

・・・と、これで終わってしまっては説得力ゼロなので、考えられる要因をお話します。

バックボーンを最大限に活かす(クリエイターとしての気持ち)

人生を歩めば歩むほど、人には経験という厚みが付くと考えています。

私の場合は、ずっとクリエイターをしてきました。若いときにはアシスタントディレクターとして、先輩ディレクターの仕事っぷりを見て、盗んで、自分のものにして。

一人前としてデザインもライティングも、カメラ撮影も一通り身に付けて、広告やWEBなど数百案件と制作し続けていました。頭の中はクリエイター脳ですね。

ディレクターとしてクライアントの渉外もおこない、パートナーさん(デザイナーやカメラマン)と切磋琢磨してベストを尽くしていく。その日々を十数年過ごしてきたのです。

クライアントが抱えやすい悩みも理解できますし、パートナーとの連携の苦労さも理解できます。

気持ちを汲み取れる、クオリティに妥協できない、これは私にとってのバックボーンそのものです。

バックボーンを最大限に活かす(クリエイターとしての行動)

もうひとつ。

今まで培ってきたクリエイターとしての能力を出し切る場を作れたことです。

WEB構築ができ、さらにWEBマーケティングができるのは最大の強みと言えます。自分自身がクライアントだと思って、最大限のサービスを提供する。持ち合わせるWEB能力を発揮する。

結果的に、WEBでのマーケティングは想像以上の成果を出せました。(逆に成果を出せなかったら、今まで十数年やっていた仕事は何だったんだ…と心が沈みますね)

マーケティングから、デザイン、そしてライティング。また構築後も日々アクセス解析をもとに、微調整を繰り返し続けています。より確度を上げるために。

バックボーンを最大限に活かす(クリエイターとしての秘めた想い)

十数年、いろんなものを制作してきましたが、「もっとコレがあれば、人に伝わるのに!」とモヤモヤしていたことがありました。

このコレというのが、人が目にしたときのワクワク感です。

広告や映像、WEBなどすべてに関わることですが、どんなに作り手が思い入れがあったとしても、見る人(受け手)のこころを揺るがさないと失敗と言えます。

こころを揺るがす、ワクワクする。その1つのツールとしてドローンが近道でした。

「ドローンは金儲けできそう」「ドローンはニーズがある」・・・正直言うと巷に溢れているそんな話はどうでもいいのです。

単純に、より多くの人をワクワクさせたい。世の中をワクワク感で満たせたい。それだけです。

ずっとクリエイティブに携わっていたからこそ、そんな野望を持てるのかもしれません・・・が、見方を変えればただの馬鹿かもしれません(笑。

ドローン操縦士として活躍するには?

ここからは勝手な想像です。間違ったとしても、怒鳴らないでくださいね。

これからドローン操縦士として活躍するための近道を考えたいと思います。方法は3つです。

方法1. バックボーンを活かす

これは私の同様の手法です。何十年と生きてきたら、絶対に人には負けない経験をお持ちです。

そのバックボーンを振り絞って突き進む。ジャンルを絞った一点突破なら、まだチャンスがあるかもしれません。

方法2. 今の仕事を活かす

例えば今現在持っている仕事を活かすことです。

何かをビジネスをおこなっていて、それと組み合わせたドローンビジネスです。前述した、兼務としてのドローン操縦士ですね。

スチールのカメラマンをおこなっている方なら、「空からも撮れますよ」とビジネスの幅も広がると簡単に想像できます。

しかし、ビジネス構築はやはり大切です。とある知り合いのスチールのカメラマンがドローン所持して約半年、受注件数は2件だそうです。

方法3. 需要のありそうな企業に務める

点検や検査、測量などの現場をおこなっていそうな企業に転職することです。

人よりもドローンを上手に扱えるのなら、もしかしたら現場を任せてくれるかもしれません。また大手企業なら、職がなくなると言った不安もなくなります。

そもそもビジネスで甘い話はない

やっと最後の項目です。

ここまでお付き合い頂きまして、ありがとうございました。

そもそもどうしてこのようなブログを書いているかというと、あなたがドローンで足を踏み外してほしくないからです。※私が同業者を増やしたくないということでは無いですよ

あまりにも夢を見せる話が溢れていて、でも現実的な話が全く見えてこない

これだけインターネットが普及している世の中で、ドローン関連の話で判断材料がないのは時代遅れすぎです。

いろいろな情報を目にした上で、強い決意を持つ。

どんなビジネスも甘い話は一切ありません。甘い話のほとんどは詐欺なのは、今までの豊富な人生経験でご存知のはずです。

以前勤めていた会社の先輩が、こんなことを言っていました。

「起業するには、3つのうち最低でも2つは必要。それは金、コネ、能力。1つでは足りない」

私の場合は、持ち合わせていたのは(ほんの小さな些細な)能力だけです。この先輩の言葉に1つ付け足すのなら、「必要なのは金、コネ、能力。もしくは圧倒的な意志力」だと感じています。

ドローン操縦士を目指す、目指さないは、あなたの自由です。ただの金儲けしたいでは、成り立たないのは確かです。

戦略や戦術なしに起業するには、需要が少ないこと、ビジネスセンスがないと儲からないことを知っていないと人生すっ転んでしまいます。

決して、ただ普通にドローンで操縦する人は儲かりません。

そんななかで、意思を持って突き進んでいく人が、クライアントから価値を感じて頂き、クライアントから支持されると思うのです。

あとがき

どんな職業にも、プロにはプロである理由が存在すると思います。

あんまり出てこないドローンビジネスの裏話ですが、ガッツリと書きました。(多くの方の勘違いを解いてもらえれば!)

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