こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
「ドローンを海上で飛ばしたい。東京湾で撮影したい。」
そう考えてこの記事にたどり着いた方へ、最初に結論をお伝えします。
東京湾でドローンを飛ばすのは、個人ではほぼ不可能です。
では、なぜ東京湾はほぼ不可能なのか、なにが制限されているのか。海上のドローン飛行について
- 海上でドローンを飛ばすと何が必要なのか
- 東京湾ではどこまで制限されるのか
- 実際に飛行するための現実的なハードル
この3点を中心に「ドローンと海との関係性」について、実務ベースで解説します。
ドローンはどの行政機関も「ラジコン感覚」では扱われず、「法律に適用されている」「危害を及ぼすもの」として認識されることがほとんどです。
ドローンを海上で飛行させるには「海の法律」も大きく関わってきますので「知らなかった」では済まされません。
このページに書いてあること
ドローンを海上で飛行するのは制限あるのか?
いきなり結論です。
ドローンを海上で飛行すると「海や港の法律の対象」になります。
一般的にドローンは航空法が知れ渡っていますが、地上にも、海や港にも法律が存在します。
つまり、ドローンを海上で飛行するには…
- 空のルール(航空法)
- 地上のルール(離発着地の管理者)
- 海のルール(港則法・海上保安部)
この3つのすべてをクリアしなければなりません。
それぞれ関係各所に申請および許可を取得しなければ、違反行為にあたる場合があります。
「航空法でOKな範囲」だったとしても、海や港の法律は生きていますのでNGなことも多いです。
海にも制限があると考えたほうがスムーズです。
海上にはどのような法律があるのか?
まずはドローンを海の上で飛行すると…
- 何の法律の対象になるのか?
- どのような人が対象者になるのか?
について、具体的に説明していきます。
大前提として「海は自由ではない」
海に関わっている方なら、海にも様々な法律があることはご存知だと思います。
大型船舶、作業船舶などあらゆる船舶が行き交っており、もし無法地帯だとしたら事故が起こりまくっているはずです。
クルマが車道を走るときに道路交通法があるように、海にも法律があるわけです。
「海は自由だ!」というわけではないことを、大前提として心に留めておいてください。
ドローンは港則法に該当する
「では、どの法律に該当するの?」と疑問に思いますよね。
ドローンは港則法に該当します。
港則法とは…
この法律は、港内における船舶交通の安全及び港内の整とんを図ることを目的とする。
この船舶交通の安全を守る「港則法」。
ドローンを飛行させるうえで、
- ドローンの離発着
- ドローンの飛行形態
- 自船舶、他船舶の関係 など
他船舶への影響があるドローン飛行の場合、「ドローン飛行は港則法にの作業行為」に該当するのが通例です。
港則法の第31~32条には…
港則法 第七章 雑則
第三十一条
特定港内又は特定港の境界附近で工事又は作業をしようとする者は、港長の許可を受けなければならない。
(2)港長は、前項の許可をするに当り、船舶交通の安全のために必要な措置を命ずることができる。第三十二条
特定港内において端艇競争その他の行事をしようとする者は、予め港長の許可を受けなければならない。
港内(=海の上)で作業(=飛行行為)をおこなう場合には、管轄する海上保安部の港長の許可を受けなければならないと書いてあります。
もし、海上保安部の許可を受けずにドローンを飛行させた場合は…
港則法 第八章 罰則
第四十九条
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。(中略)四 第二十四条第一項又は第三十一条第一項(第四十三条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
ちょっと難しい言葉が続いてしまいますが
- 6ヶ月以下の懲役
- 50万円以下の罰金
このどちらかに処されます。(懲役刑が含まれているので結構重たいですね)
なぜドローンは港則法に該当するのか?
ドローンが海の上を飛行しているとしましょう。
- ドローンが船舶に衝突しそうになり、船舶の安全な航行を阻害された
- ドローンが墜落して海に漂って、船舶が通過して船底が破損した
事実、ドローンによって海の安全が確保されないと容易に考えられます。
多数の船舶に影響を与える行為にあたると考えられており、
- ドローン+複数の船舶が連携した航行
- ドローン飛行に合わせた定期船への指示航行
- 航路に停泊した上でドローン飛行
など、これら他船舶に影響のあるドローン飛行は、海上保安部の見解では「港則法に則って行事として申請が必要」となります。
誰が対象となるのか?
「えっ、遊びだったら大丈夫でしょ?」と考えてしまいますよね。
でも、ドローンが海上を飛行することのすべてに適用されるわけであって…
- 業務的なドローン飛行の操縦者
- 趣味等でドローン飛行する私人(一般人)
すべてのひとが対象となります。
例えば、クルマを車道で走らせていて「オレは趣味だから…」といって道路交通法が適用しないなんて、ありえないですよね。
注意しなければならないのは、関係する企業クライアントも同時に処罰を受けます。
港則法 第八章 罰則
第五十四条
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して第五十条第四号若しくは第五号又は第五十二条第二号若しくは第三号の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
違反した人間・法人だけではなく、その業務に関係していた企業クライアントも同様に、前述の懲役刑または罰金刑に処されます。
そのため、ドローン会社が案件を受託して「許可を取っていないけど、やっちゃえ~!」とドローンを飛行させて、海上保安部に検挙されて処罰を受けるとなると、ドローン会社およびクライアントも処罰を受けます。
どこが港則法の対象エリアなのか?
港則法は「特定港等」で適用されます。明確に場所が決まっているのですね。
調べる方法は、海上保安庁が提供している「海しる」を使用します。
赤色区域が港則法がで適用されるエリアになっています。
例えば、東京湾内の大部分は港則法に該当しますね。
海上保安部に行事申請を出すのはどうすればいいのか?
もし仮に、海上保安部に申請を出そうと思っている方がいるのなら「全然かんたんなものではないですよ」とお伝えします。
許可を得るには、様々な条件をクリアしつつ、十数枚の書類を提出しなければなりません。さらに電話・FAX・郵送等での受付はしていません。
直接、海上保安部に出向いて、許可を受けるための相談をおこない、幾度が出向いて調整が必要です。骨を折る作業のため、あまり現実的ではありません。
また墜落した際に「どうやってドローンを回収するのか?」の条件を加えるため、かなり難儀です。
ただし「行事申請を出したい」と思うチャレンジャーな方のために、手順だけ記しておきます。
- ドローンを飛行する1ヶ月前に申請の用意をする
- 書類を作成する(許可手続き等の手引き例)
- 対象の管轄する海上保安部に出向く(管区海上保安本部)
- ドローン飛行にあたり諸条件を調整する
- 該当の港湾局・港湾課に同様に申請もしくは通知をおこなう
- 海上に関わる周辺船舶に周知をする
- 行事許可を受ける
一般的にドローンを飛行できるまでのハードルは高いと思っていて間違いありません。
余談ですが、各種申請に手慣れているテレビ局スタッフの方が、この行事申請をおこなった際に「この手間と時間がかかるのなら、十数万円を払っても全然安い…」と嘆くほどでした。
港則法を違反するとどうなるのか?
前述のように、懲役刑または罰金刑に処されます。
過去に、ドローンを飛行させていて書類送検になったり、最近でも港+海でドローンを飛行させた業者が検挙になっている事案があります。
海上保安部では、警備船を走らせていて海を守っています。さらに警察のように逮捕権を所有しているため、その場で現行犯逮捕が可能です。
近年、ドローンによる事件が発生したり、テロ対策も急務となっています。
残念ながらドローンの印象も年々悪くなっており、警察や海上保安部による検挙も活発化しています。(安全を守るために違反者を摘発するのは当たり前ですね)
ドローンで海の上を飛行させるには、まずは港則法が大きく関わっていることを理解しなければなりません。
離発着地(=地上のルール)の許可も必要不可欠
航空法や港則法等でクリアになったとしても、離発着させる場所の許可は必要です。
- 海上に隣接した公園で離発着 → 公園の許可
- 堤防からの離発着 → 管理している行政(都道府県)の許可
- 海岸・浜辺からの離発着 → 管理している市区町村の許可
- 港内からの離発着 → 管理している公的機関の許可
離発着させる場所では、地上のルール(各法律)があります。
例えば、港の堤防では、港湾施設用地の使用許可(申請)が必要なことが多く、使用料を支払って許可を得るフローもあります。
その他にも港湾法や行政の条例でドローンを禁止しているエリアも存在します。
例えば下田市の海岸では禁止になっています。
港則法のエリア外だとしても「港則法の適用エリアではないから、ここは飛ばし放題だ!」そう思ってしまうのは危険です。
また、業務上でドローンを飛行させる場合には「港則法の適用エリア外」だったとしても、海上保安部に通知をしておいたほうが無難です。
東京湾(京浜港)でドローンを飛行する際の制限は?
ここから先は「東京湾」を1つの例にして、具体的にどのようなドローンの飛行制限があるのかを書いていきます。
「東京湾の海上でドローンを飛行して撮影を行いたい」そのように考えて企画を練っている制作会社さんが多いと思います。
ただし東京湾(東京港)は、東京湾は船舶の乗り入れが多く、普通の海ではありません。海上保安部や港湾局の許可が必要です。
- 東京湾の「海」の制限
- 東京湾の「空」の制限
ドローンに関しては申請ルールが明確的に敷かれており、これを守らない場合は違反行為に当たります。
東京湾(京浜港)の「海の制限」
海にかかる制限です。
ドローンを飛行させるには…
- 東京都港湾局
- 東京海上保安部
この2つの両方に、行事申請および許可を取得しなければなりません。
これは東京都港湾局から「東京港の港湾区域における無人航空機利用運用方針」として明確にルール化されています。
東京都港湾局「東京港の水域(港湾区域)における無人航空機利用の取扱いについて」より
順におって解説します。
(海の制限)申請01.東京都港湾局
東京都港湾局は、港湾エリアにおける水域を管理しています。(東京港の東京湾を水面監理しているんですね)
「港湾区域における無人航空機利用運用」というのが平成30年3月から開始されており、東京港でドローンを飛行する際には、法令に基づく所定の手続きを行う必要があります。
東京都港湾局「東京港の港湾区域における無人航空機利用運用方針」より
申請に必要なのは…
- (ア)「行事届」又は「工事・作業届」
- (イ)国土交通大臣宛て「無人航空機の飛行に関する許可・承認申請書(様式1)」(写)
- (ウ)国土交通大臣発行「無人航空機の飛行に係る許可・承認書」(写)
- (エ)飛行区域図面、安全確保のための対策及び緊急時の連絡体制等が分かる資料
この4つです。
4つの最後(エ)は、「海上保安部に申請する「行事許可申請」又は「工事・作業許可申請」における安全対策」になります。
つまり、申請をして許可を受けるためには、海上管轄の許可(=海上保安部)を取得しなければなりません。
港湾局だけに申請しても「海上保安部さんの許可も取ってくださいね」と言われるだけです。
そのため、前述のように「港湾局」+「海上保安部」のセットで申請および許可を取得しなければなりません。
※港湾局に電話で問い合わせしても「来てください」と言われるため、まずは港区港南にある「東京都港湾局 東京港管理事務所」に行きましょう
(海の制限)申請02.東京海上保安部
海上はすべて海上保安部が管轄しています。
まずは京浜港東京区がどこにあたるのかで、東京海上保安部の管轄かどうかが分かります。
東京海上保安部「京浜港東京区における行事許可申請の手引き」より
東京都に隣接するエリアですね。
レインボーブリッジもお台場も、ゲートブリッジも該当します。
そして、このエリアの海上で撮影(スチール含む)を行う場合には、東京海上保安部に申請する必要が出てきます。
京浜港東京区(通称:東京港)内におけるテレビ・映画等の撮影行為は、港則法に定められた行事に該当する場合があり、その際は京浜港長(東京海上保安部長)の許可が必要となります。
撮影行為にあたるものは、行事許可申請が必要な場合があり、たとえスチールの撮影だとしても撮影内容によって申請しなければなりません。
基本的には何かの撮影のときに、
一定の水域を占有し又は通常とは異なる船舶交通の流れが生じることによって、他の船舶交通の安全を阻害するおそれがあるので、港長の許可を受けることとしたものです
他船舶が安全のために、船舶交通の流れを変えてしまうのがNGということです。船を停泊させて、撮影するというのもNGになるわけですね。
行事の許可を申請する場合は、行政手続法に基づき原則、行事開始日の1ヶ月前までに申請書を2部作成し、航行安全課窓口に申請(FAX・郵送不可)してください。
申請期間は1ヶ月以上かかるため、かなり前もって動かないと撮影ができないのが難点です。「2週間で…」というのは論外です。必ず1ヶ月以上でないと許可が降りません。
さらに申請に関しては、郵送・FAXはNGです。お台場にある海上保安部に出向いて、申請書の提出になります。
もしドローンを含めて申請なしに海上で撮影行為をおこなった場合には、罰金に処される可能性があります。
ここまで読んできた方なら、もう分かりますね。東京海上保安部にもしっかりと書いてあります。
【港則法第 32 条】
特定港内において端艇競争その他の行事をしようとする者は、予め港長の許可を受けなければならない。〔罰則〕 本条の規定に違反して許可を得ないで行事を行った者は、30 万円以下の罰金又は科料に処せられ(法第 41 条第 2 号)、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して本条の違反をしたときは、行為者のほか、その法人又は人も 30 万円以下の罰金に処せられる。(法第 43 条)
この撮影行為に該当するのかどうかは確認が必要ですが、ドローンが海上に出た瞬間に「船舶の影響」があるため行事申請が必要になります。
- どのような撮影をするのか
- どこからどこまで飛行するのか
- 安全対策や緊急連絡先はどこなのか
など、多方面にわたる書類を作成し、行事計画の調整をおこないます。
東京湾(京浜港東京区エリア)の「空の制限」
東京湾の京浜エリア、つまり東京に一番近い海でドローンは飛行できるでしょうか?
まずはドローンと関わりの深い「空」の2つ制限から説明します。
(空の制限)航空法の「人口集中地区」
大都市である東京に隣接する「東京湾」。ここにも人口集中地区は存在しています。
湾岸のどこをかしくも探しても、人口集中地区に該当。国土地理院のマップ上では真っ赤です。
海上からの離発着なら未該当ですが、陸地での離発着はその人口集中地区に該当するので、飛行させた場合には違反行為にあたります。
※東京湾に広がる”埠頭”に関しては、東京都港湾局が関している場合がほとんどです。ここのクリアも必要な場合が出ます
(空の制限)羽田空港の「進入表面など」
もう一つの「空」の制限は、羽田空港の進入表面などです。
東京の玄関と言われている羽田空港(国際空港)は、当然ながら東京湾にも大きくかぶさっています。(飛行機が海側から進入するため、特に東京湾は広いですね)
緑色の場所が進入表面などになるため、ドローンの飛行高度について制限がかかります。
空港に近ければ近いほど、飛行可能高度はどんどんと低くなります。飛行機やヘリコプターとの安全性を考えれば当然ですね。
空港事務所との高度調整をしなければらななく、通常で考えたとしてもイレギュラーな場所とも言えます。
ドローン業者でない限り、ハードルは越えられないと思います。
ドローン飛行には、空も海も制限がある
海上でドローンを飛行させようと考えた場合、空にも海にも大きな制限がかかります。
東京湾という船舶の乗り入れが多く、かつ東京という大都市の海なので当然といえば当然ですね。もし無法地帯だったら、事故に繋がります。
ドローンに関わる法律の整備や前例になる事例がないため、微妙な立ち位置であることは否めません。
東京湾でドローン飛行させる実務の難易度
ここまでルールを見てきましたが、実際の現場ではさらに難易度が上がります。
例えば東京湾でドローンを飛ばす場合、単純に「許可を取ればOK」という話ではありません。
申請だけでも複数ルートあります。
- 海上保安部(港則法)
- 港湾局(占用・使用)
- 国土交通省(航空法)
それぞれ管轄が違うため、同時に進める必要があります。
調整に時間がかかるため、1ヶ月以上かけて準備するケースもあります。
さらに飛行計画の精度が求められます。
- どこから離陸するのか
- どのルートで飛行するのか
- 補助員をどこに配置するのか
これらを図面レベルで設計しないと通りません。
現場目線で言えば 「現場で飛ばせない」が普通に起きます。
- 船舶の往来が想定より多い
- 風が強くて安全確保ができない
- 地上飛行ではない予想外の機体トラブルが発生する
許可があっても飛ばせない、は珍しくありません。
つまり、実務として成立させるのが難しいのが現状です。
海上・東京湾でのドローン飛行は「申請を通すこと」ではなく「現場を成立させること」が本質です。
ドローンを海上・東京湾で飛ばす現実的な方法
ここまで読んでいただくと分かる通り、海上、特に東京湾でのドローン飛行は「思っているより遥かに複雑」です。
では、どうすれば実現できるのか。
結論としては、以下のいずれかになります。
① 条件を満たした上で、自力で申請・調整を行う
理論上は可能です。
ただし実際には、
- 海上保安部への行事申請
- 港湾局への使用許可
- 国土交通省への飛行許可申請
- 飛行計画の策定(配置図・安全対策)
- 現地での船舶・人の動線管理
これらをすべて自分で行う必要があります。
正直に言うと、実務経験がない状態でこれを通すのはかなり難しいです。
② 実務経験のある業者に依頼する
もう一つの方法が、ドローンの現場経験がある業者に依頼することです。
特に海上案件では、
- どこに申請が必要か判断できるか
- どのレベルまで安全対策を組むべきか
- 現地で「飛ばせるか・飛ばせないか」を事前に判断できるか
このあたりが結果を大きく左右します。
書類が揃っていても、現場で飛ばせないケースは普通に起こります。
だからこそ「飛ばせる前提で話を進めない」という判断が重要になります。
あとがき
海上や東京湾でのドローン撮影は、通常の空撮とはまったく別物の設計が必要になります。


当社では、
- 海上・港湾エリアでの飛行可否の事前判断
- 必要な申請の整理、業務申請
- 現地環境に合わせた飛行計画の設計
を含めて対応しています。
もし「企業案件として依頼したいが、この場所で飛ばせるのか分からない」といった段階でも問題ありません。
現実的に実施可能かどうかも含めてお答えします。


