こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
「ドローン操縦士の仕事をしたい…。きっと将来性があるはず…」
そう思う人は多いはずです。
メディアでもドローンが使われる機会は増え、なんとなく「これから伸びる業界」という印象があります。
しかし現実は、そんな単純な話ではありません。
そこで今回のブログ記事では…
- ドローン業界の過去と現在
- なぜ「兼務」が増えているのか
- AIによって何が変わるのか
- 10年後に生き残るのはどんな人か
この4つを中心に「10年後に消えないが「仕事の中身」は別物になる」について情報シェアします。
ドローンカメラマンとして商用撮影をおこなっている私だからこそ、実務ベースで整理します。
「10年後に消える職業」であるのか、なくなることはないが何が淘汰されていくのか。
(ある意味、私自身を否定していく記事ですね)
このページに書いてあること
ドローン操縦士は10年後に「消える職業」「なくなる仕事」になるのか?
最初に結論です。
ドローン操縦士は消えないが“仕事は変わる”と思います。
ドローン操縦士という仕事自体は、10年後もなくなりません。
ただし「操縦者するだけの人」は確実に減ります。これはすでに始まっています。
- ドローンの性能が上がり、空撮がしやすくなった
- ドローン操縦士の単体よりかは「兼務」が増加している
- AIの進歩により、人物が携わることが少なくなっていく
唯一、ドローン操縦士が必要となるのは
- 航空法や各法令のコンプライアンス管理
- ドローン自動飛行のオペレート管理
になってくると予想されます。
その理由について、順を追って説明していきます。
過去から現在、ドローン操縦士の職業はどうだったのか?
未来を考える前に抑えておきたいのが過去。
最近になってドローン操縦士という職業が知れ渡るようになりましたが、昔は「なにそれ!?美味しいの?」と決して理解が進まない職業でした。
ドローン操縦士という職業は何なのか?過去から現在まで、知っている限りで各状況を書いてみます。
2015年:黎明期(ほぼホビー+事件)
2015年4月に事件が起こりました。
首相官邸の屋根にドローンが落下しているのを発見。そのドローンには福島の土を積んでいました。当時、各ニュースが大々的に取り上げましたね。
- 「落下しているのを発見したのが1ヶ月後。首相官邸のセキュリティーはどうなっているんだ!」
- 「福島の土って原発再稼働の反対運動か!」
そんな日本ならではの珍事(!?)のなか、初めて出てきたワード。それが「ドローン」です。
「ドローンってなんだ?」と理解が進まない人が多かったのではないでしょうか。大多数の日本人が、初めて聞く単語でしたから。
当時の印象として、ドローンは「ホビー」の要素が高かった気がします。もちろん一部には、ラジコン空撮などで事業をおこなっている操縦士もいらっしゃいます。
ちょうどその頃、ドローンの性能は格段に上がった時期でもあります。
ドローンメーカーであるDJIが発売したPhantom3シリーズ。そしてINSPIRE 1。ワンセットになって今まで比べると安価、しかもプロ仕様としても通用可能。
そんな民生機の登場によって、これから産業が大きく動き出すドローン元年と言っても過言ではない年です。
しかし職業という面で考えるとドローン操縦士という職業は認知されてなく、産業規模としても決して大きくはありません。
言い換えればラジコン空撮をしていた方が「操縦士」なのかもしれません。
2015年の話をまとめると…
- ドローンが世の中に出始めた(世の中が認識し始めた)
- プロ利用できる民生機が誕生した
- ドローンを利用した産業が始まった
ちょうど私が独立したのも、この年です。首相官邸の墜落事件があってから、「ドローンは悪だ」「法律を整備しろ」と世間のイメージは最悪でした。
2018年:レッドオーシャン化
ところ変わって、2018年の話です。
「ドローン」というワードは、子供でも高齢者でも知っているくらい認知度が高まったのは、ご存知の通り。
ドローンの空撮という点では、テレビ番組でも活用されてドローンの映像を目にする機会が圧倒的に増えました。TV番組・CMなど、もしかしたら1日に1回は見ているかもしれません。
ドローン産業を考えると
- ドローン物流
- ドローン測量
- ドローン検査
- ドローン農業(農薬散布)
など撮影以外の用途として産業の幅が広がっています。
ドローンスクールは2016年から各団体がスタートし始め、「ドローン操縦士」という言葉を広げました。ドローンスクールが乱立して「ドローン操縦士になって手に職を!」のような謳い文句で宣伝していますね。
ドローン操縦士・ドローンパイロットという職業は瞬く間に認知。
それを見た方は「産業として広がっているので、まだブルーオーシャンなのでは?」と感じる方が多くいらっしゃいますが、それは大きな勘違い。ドローンスクールの罠にハマっています。実際にはレッドオーシャンです。
- ドローン操縦士の専業になって3・4ヶ月で廃業。実際に稼働した案件は2件だった
- 写真撮影のプロカメラマンの方もドローンを購入して、兼業していたのですが半年で1件だった
- ほとんど依頼がなかったドローン操縦士は、撮影業を捨ててスクール業に転向した(「教えるのほうが全然儲かる、撮影は損する」と言い放ったのは、ここだけの秘密です…)
ドローンの撮影という分野では、産業として小さいことに気が付かない方が多いですね。
ドローンの映像は、撮影技法の中の1つです。
ドローンだけで映像は成り立つわけではなく、むしろドローンの映像はごくわずか。例えば1時間のテレビ番組のうち、ドローンの映像が使用されるのは10秒も満たないです。この話は、幕の内弁当の梅干しを例えにして話をしていました。
空撮はそもそもの出番が少ない。でもドローンスクールが煽る。そしてプレイヤーが増える。レッドオーシャンになる。故に廃業者が後を絶たない…。
ドローン操縦士としての職業としては、もしかしたら2018年は過渡期かもしれません。
ここまでの話をまとめると…
- ドローンの産業が大きく動いている(宅配・検査・農業など)
- ただし空撮分野はレッドオーシャンで廃業者が出ている
- ドローン操縦士の職業は過渡期である
3年前の状況と今現在の状況を考えると、たった3年で随分と環境が変わってきました。ドローン操縦士としてのプロがいるなか、そこへアマチュアも参入しやすくなったと言えます。
2022→2026年:制度と現場のズレが埋まり始めた
2022年12月、航空法改正によって、いわゆるドローン国家資格(無人航空機操縦者技能証明)がスタートしました。
- 無人航空機操縦者技能証明(=人物)
- 機体認証・機体認証(=機体)
この2つがセットになることで、国交省の飛行申請が省けたり、特殊な飛行(レベル4)が可能になったりします。
当初は「人物」と「機体」がセットになったときに効果が出るため、「機体」が皆無な状況でした。
人物が免許を取ったとしても飛ばせるドローンがなかったので「無用の長物」と言われることもありましたが、現在は少し状況が変わっています。
- レベル3.5、レベル4飛行の実用化
- 企業案件で資格が条件になるケース
- 安全管理の評価指標として使われる
つまり、「なくてもできるが、あると通りやすい」資格に変わってきています。
ただ、万人に必要なのか?と問われたら「あなたのビジネスにどう接続できるか」次第です。
人にとっては必要な国家資格にもなりますが、人によっては無用な国家資格にもなるからです。
なぜ「操縦だけの仕事」は減るのか?
2015年12月に航空法が改正されて、法律の壁が存在するのは確かですが、明らかに空撮環境が変わりました。ざっくりと考えられるのは3つです。
- ドローン機体の種類が増えている
- 空撮の性能が上がっている
- 学ぶ環境がある
一つひとつ簡単に説明してみると…
(1)ドローン機体の種類が増えている
空撮ではDJIから多種多彩なドローンが登場しています。
Phantomシリーズ、INSPIRE、Matris。MAVICやSPARKといった、手のひらサイズの小型機も登場しました。
用途に応じて使い分けができますし、手のひらサイズの小型機は10万円前後で購入できます。
ドローンの産業が大きくなれば、必然的にドローンに関わるパーツも増加。自作機といったカスタマイズなドローンも決して珍しくありません。
ドローン機体の種類が多ければ、対応できる撮影幅は広がります。小型機ならサクッと空撮ができます。
敷居が本当に下がりましたね。
(2)ドローン空撮の性能が上がっている
ドローンの性能も上がりました。
カメラ、ジンバル、衝突回避、飛行精度など。技術の進歩によって安定的な飛行を手に入れ、小型機でも撮影できるレベルに到達しています。
- 自動追尾
- 障害物回避
- ワンタップ飛行
「飛ばすだけ」は差別化になりません。
敷居が本当に下がりましたね。
(3)ドローンを学ぶ環境がある
ドローンスクールといった学ぶ場も劇的に増えました。
日本全国にスクールが蔓延り、各地で生徒を集めています。3・4日間で一定の知識と技量を習得する。いわば塾みたいなイメージですね。
スクールには何十万円と費用はかかりますが、短期間に学べるというのはメリットです。自分自身でゼロから積み上げていくのは時間と根気が必要ですから。
お金さえ積めば、ドローンの一定の知識と技量を習得できる。
敷居が下がりましたね。
(4)AIと自動化が進んだ
ドローンはAIと相性がいい分野です。
イメージしやすい話からするとドローン宅配は自動化なくして成立しません。
配達先の座標を打ち込めば、GPSで飛行していき、障害物があればセンサーで避け、目標値に数cmの誤差で着陸。宅配完了です。
また点検分野でも、予めプログラムされた飛行ルートや飛行高度などマッピングを用意すれば、忠実に飛行および撮影可能です。
- 自動航行
- ルート飛行
- 点検の自動化
AIによって自動化が進み、ドローンも自動化が進みます。
ただし重要なのはここで「現場判断はまだ人間が必要」だということです。
「ただ撮る」と「仕事として成立する撮影」は別物
ドローンの性能が上がって空撮がしやすくなりました。
AmazonやDJIストアで「MAVIC AIR」という最新機を購入した翌日には、(航空法の制限のない場所・方法で)もう空撮ができますが…ここでいう空撮というのは「誰でもできる」になります。
- 空からの写真が撮れる
- 空からの動画が撮れる
- 4Kで画質が良い
といった、あくまでドローンの性能の話になります。性能の良いドローンを持っていれば「ただ撮る」ことは容易です。
対比にあるのが商業用の撮影です。
- 撮影前に各法律関連をクリアにする
- 撮影現場でディレクションをおこなう
- ラフに合わせて画角や飛行方法を調整する
- 色合いや光量等の調整をする
- クライアントがイメージしている画をヒアリングする
- 法律に抵触する場合には「NO」と言う
- 画として使いやすく、影響力のあるものに仕上げる
など必要とされるスキルは多々あります。クライアントから費用をいただき、成果物として提供する。
費用をいただく限りは「クライアントが求める成果物」に到達しなければビジネスになりません。
この「しっかり撮る」は、技術やコミュニケーション能力はもちろんのこと、経験がなければ手に入れられません。さらに言えば、可視化できない「センス」も必要条件です。
つまり、
- 法律クリア
- 現場判断
- ディレクション
- クライアント理解
ここに価値があります。
これは他のビジネスに置き換えても同じですね。
主婦が「チャーハンが作れるから、お店を出そう」と思うのと、プロが「お客が満足するチャーハンをお金をもらって提供する」のと同様です。
ただ、やっぱり「敷居が下がった」のは事実です。
ドローン操縦士の兼務が増加する
敷居が下がったことで登場するのが兼務です。
1年前に書いたブログ記事で「兼務が増える」と紹介しました。
ざっくりと内容を記載すると…
- テレビ番組のADがドローンで撮影する
- 工事記録なら工事現場のスタッフがドローンで撮影をする
- 測量なら測量をおこなっていた測量士がドローンで測量する
- 救命活動なら消防士がドローンを飛行させる
特別な技量が必要ではない場合、一定の知識と技量さえあれば兼務が可能です。いえ、可能という話ではなく、すでに主流になりつつあります。
ドローンに携わる人口は増加するはずです。ドローン操縦士という肩書も増えるはずです。
しかし「ドローンで空撮だけをするドローン操縦士」という専業者は、今後増えると考えるのは難しいです。
航空法やルールが複雑化、理解力が求められる
兼業ドローン操縦士が増加すると記載しましたが、実際には脱落していく人数が多いと考えられます。
理由は、あまりにも航空法やルール、法規制が変化して複雑化しているからです。
ドローン登録制度、ドローン飛行登録、ドローンの一部免許化など法規制やルール変更が幾度もおこなわれているため、「以前はOKだったけど、今はNGで航空法違反」といったことがあります。
複雑な制度の理解力が必要不可欠であって、兼業となると、その知識を入れるのもままならない状況になってきます。
実際のところ「ドローンの法律が分からなくなってきた」と、兼業カメラマンは嘆き、ヤフーオークションでドローンを売却するひともいます。
ドローンはおもちゃではありません。
おもいっきり法律にかかわっているため、生半可に扱ってしまうと重たい違反を喰らう可能性もあります。
常に理解力が求められてきます。
10年後に残るドローン操縦士
ここまでドローン操縦士の職業の過去、現在、そして未来を書いてきました。
「ではドローン操縦士の10年後はどうなるのか?」という最後の項目です。
すでに空撮分野は成熟しきっておりレッドオーシャン状態。さらにAIの技術進歩によって職が失われるという下火産業(下火職業)です。
そのような下火な職業のため、必然的に淘汰は進んでいきます。
ドローン操縦士という職業を大きく見た上で、ある程度のドローン操縦士が淘汰されかねません。逆に、人の手だからこそできる空撮ができるドローン操縦士は重宝されるはずです。
ドローンというツールを使っているのだから、高画質に撮れるのは当たり前です。これは誰でも一緒です。そしてプロだから技術を持っているのは当然です。
飛行技術、撮影技術、なによりもクライアントに「提案をして、影響力のある成果物を提供する」のが「人だからこそできるクリエイティブな撮影」と言えます。
10年後、専業のドローン操縦士は間違いなく減少しています。しかしゼロにはならないはずです。
日本にも職人と言われる方は、どんな時代になっても重宝されています。中国で大量生産される商品だとしても、職人には仕事の依頼が来ます。ジャンルは異なりますが伝統工芸品は特にそうですね。
その人だからできる創作技術がある。抽象的な感覚の”センス”は、機械には真似ができない。
「だから、あなたに依頼をしたい」
そう名指しで依頼が来るドローン操縦士こそが、10年後も生き残っているはずです。
つまり
- 法律・安全管理を理解している
- 撮影以外もできる(企画・編集・提案)
- 「この人に頼みたい」と言われる人
は10年後に残るドローン操縦士です。
逆に言えば
- 操縦だけ
- 空撮だけ
- 技術だけで勝負している人
は消えてしまう可能性が高い世界です。
では、実務としてどう立ち回っているのか(現場の話)
ここまで読むと、
「じゃあ、ドローン操縦士は厳しいのか?」
「どうやって仕事にしているのか?」
と感じるかもしれません。結論から言うと、私はドローン操縦士としては仕事をしていません。
あくまで、
- 映像制作の一部としてドローンを使う
- クライアントの目的に対して、最適な手段として使う
という立ち位置です。
つまり、「ドローンで何をするか」ではなく、「何を実現するか」から考えています。
例えば
- 物件の魅力をどう伝えるか
- 印象に残る導線をPR動画でどう作るか
- イベントの臨場感をどう切り取るのか
この中で、ドローンが必要なら使う、という考え方です。
そのためドローンが最適解なら依頼に応えますし、別の手段が最適解ならそちらを提案します。
※実際には「ドローンで撮りたい」と言われても、内容によっては地上撮影のほうが効果的なケースも多いです。
また、現場では
- 法律の確認
- 飛行可否の判断
- クライアントへの説明
といった部分のほうが、実は重要だったりします。ここは機械やAIでは代替しにくい部分です。
安全上NGなので断ったこともありますし、クライアントの意図とズレているので別提案することもあります。
結果として「操縦できる人」ではなく「任せても大丈夫な人」に業務が集まる、というのが現在の構造です。
ドローン操縦士はなくなりません。
でも操縦するだけの仕事は減っていき、兼務+提案型に変わっていきます。
そして最終的に「だから、あなたに依頼をしたい」と思われる人が10年後にも残っているドローン操縦士です。