こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
「ドローンを飛行させるには、どこの許可が必要なの?」
「国土交通省航空局の飛行許可は持っているけど、どの場所でも飛ばせるの?」
こういった疑問を持っている方は多いのではないでしょうか?
最近は誤認識のままドローンを飛行させてしまい、周辺の方に迷惑をかけてしまったり、ドローン操縦者が顛末書(てんまつしょ)を書かされたりする話が増えてきました。
今回の記事では、ドローンを飛行する上で必要な許可について記載します。
「国土交通省航空局の飛行許可を持っていればどこでも飛ばせる」は大きな間違いです。大前提として「飛行場所の許可」が必要です。
結論は「国土交通省航空局の許可+場所の許可=ドローンの飛行許可」です。
このページに書いてあること
ドローンの飛行許可とは、法律上の許可および場所の許可の2つである
ドローンが飛行する上で必要になってくる「許可」をご存知でしょうか?
ドローンは空中に飛び立ち、第三者からすれば危険物体そのものです。何かの拍子に、墜落して第三者の頭上に落下したとしたら…
1kgくらいの重量なら(直接的な表現になっちゃいますが)首を脊髄損傷してしまいます。まったく関係のない第三者が、全身不随になる可能性も十分にあります。
そのくらい危険度の高いドローンだからこそ、航空法や諸法令が施行されています。
危険性の高いドローンを飛行させるのですから、必要な許可というのが出てくるのは当然の話しです。
ドローンを飛行させるには「航空法上の許可」「場所の許可」の2つが法律上必要です。
1つ目:国土交通省の航空法による許可
ドローンが飛行する上で一番関わるのが航空法です。
日本ではドローンによる事件を背景に、2015年12月より航空法が改正され、安全を確保するためにいくつかのルールが敷かれています。
無人航空機に係る航空法改正について
無人航空機の利用者の皆様は、以下に記載している無人航空機の飛行禁止空域や飛行の方法に関する同法のルール、関係法令及び地方公共団体が定める条例を遵守して無人航空機を飛行させて下さい。
ここでは詳細は割愛しますが、ざっくりと列挙すると
- 人口集中地区エリアでの飛行禁止
- 人・物件から30m以内での飛行禁止
- 夜間での飛行禁止
- イベント・催し物での飛行禁止
- 目視外飛行での飛行禁止
- 危険物の輸送での飛行禁止
- 物件投下の飛行禁止 など
たくさん人が住んでいるエリアで飛行禁止になっており、かつ飛行方法にも禁止が指定されています。
詳しいことは↓の参考記事をご覧ください。
さて、上記の飛行禁止には該当しない場合は、航空法上ではドローンは国土交通省の許可なく飛行可能です。例えば、ローカルエリアの誰もいない海岸や河川です。
逆に飛行禁止されているエリアおよび飛行方法にて、ドローンを飛行させるには国土交通省の許可が必要になります。
飛行実績や飛行技量、知識。その他に定められた方法で飛行させると約束の上で、審査が通って許可がおります。
飛行エリアや飛行方法で禁止事項に該当する場合は、この1つ目の「国土交通省の航空法による許可」が必要不可欠です。
2つ目:飛行場所の許可
ドローンは空中を飛び回ることができます。しかし、それでどこに行ってしまってもOKというわけではありません。
飛行する場所の許可も必要になります。例えば、公園で飛行させるには公園管理事務所の許可です。
もし仮に自分自身が所有している敷地内でしたら、自分自身の意思によって許可できるため問題になりません。
他人の敷地でドローンを飛行する場合には、当然ながら敷地所有者の許可が必要になります。もし自分の庭先に、知らない人間がドローンを飛ばしていたら、ブチ切れますよね。
この件は国土交通省のドローンのページにも記載されています。
航空法に従って飛行すれば、第三者が所有する土地の上空を飛行してもよいのでしょうか。
航空法の許可等は地上の人・物件等の安全を確保するため技術的な見地から行われるものであり、ルール通り飛行する場合や許可等を受けた場合であっても、第三者の土地の上空を飛行させることは所有権の侵害に当たる可能性があります。
上記のように、第三者の敷地で飛行するのは不法侵入等を容易に考えられますが、ここでは第三者の土地の上空ですら所有権の侵害に当たる可能性があると危惧しています。
同様に、例えば国土交通省が管轄している河川では、
その他関係法令の遵守等
河川(ダムやその貯水池を含みます。)において、無人航空機を飛行させようとする場合、許可申請が必要な場合や、河川管理者や周辺自治体が河川利用のルールを定めている場合があるので、事前に飛行可能な区域か確認をお願いします。
このように河川事務所や自治体の利用ルールがあるため、確認および許可を取る必要があります。
また道路上も同様に、道路交通法が施行されており、警察署の道路使用許可が必要になる場合があります。
両方の許可が取れてドローンが飛行できる許可になる
「航空法上の許可」および「飛行場所の許可」のふたつの許可が取れて、ようやくドローンが飛行可能になります。(どちらか片方ではNGです)
よく勘違いが起きてしまうのは、「国土交通省の飛行許可を得ている」という理由で、「どこでも飛行できる」と関係法令を犯した判断をしてしまうことです。
例えば、東京都内でドローンを飛行できる国土交通省の許可を持っているとしましょう。
その場合、明治神宮や後楽園、上野動物園などの敷地で、勝手にドローンを飛ばしても良いということでしょうか? 常識のある方なら言わなくても分かりますよね…。
もう一つ。例えば、都立公園である代々木公園で飛行するために、国土交通省のドローン飛行許可が降りたとしましょう。
その場合、代々木公園でドローンを飛ばしてもOKと許されたと思うでしょうか?これも常識のある方なら分かりますよね。
都立公園ではドローンの飛行の一切を禁止しています。
Q.公園内でドローンやラジコンを飛ばしたい。
公園利用者の安全に配慮する必要があることから、公園におけるドローンの飛行は禁止しております。ラジコンについても、同様に飛行を禁止しております。
都立公園では警察との連携により、ドローンによるテロ(という名目で?)防止も含めて、ドローンを飛行した場合には通報すると明言していました。
国土交通省のドローン許可というのは、あくまで「人・物件の安全を確保するもの」だけであって、その土地の許可ではありません。
何度も言いますが、「航空法上の許可」および「飛行場所の許可」のふたつの許可が取れて、ようやくドローンが飛行可能になります。
ケースごとの必要な許可
「このような場合は、どこに許可が必要なの?」と心配になってしまうかもしれません。
そこで各ケースごとに、これから必要な許可を記載します。
ケース1.航空法にかかわらないエリア・飛行方法で必要な許可は?
航空法で定められている飛行禁止エリア・飛行方法に該当しない場合、国土交通省のドローン飛行許可は不要になります。
ただ、改めて事前チェックををおこないましょう。人口集中地区ではない、人や物件から30m以上離れているなど。これを犯してしまうと罰金刑に処されます。(過去に何人も書類送検されています)
あとは飛行場所の許可です。飛行させる離発着地およびその上空の敷地で「ドローンを飛行させてOKですか?」と承諾をもらえればOKです。
- 航空法に関わらない飛行エリア・飛行方法 → 許可不要
- 飛行場所の許可 → 許可必要
これでドローンが飛行可能になるのですが、やはり安全面では最新の注意をはらいましょう。
国土交通省からドローンの飛行に関するガイドラインが出ており、注意事項は必読です。
注意事項
無人航空機を安全に飛行させるためには、航空法を遵守することはもちろんですが、周囲の状況などに応じて、さらに安全への配慮が求められます。
幹線道路や高速道路、鉄道等の付近では飛行させないことや高圧電線・変電所・電波塔の近くでは電波干渉の影響があるため飛行させないことなど。
普通に考えれば分かるのですが、もし線路の上にドローンを落として電車を止めてしまったら、その損害は計り知れないですよね。賠償金という話になったら、とても悲惨な話になります。
国土交通省の飛行許可が必要ない場合でも、自分自身の技量を把握して安全飛行ができる場合に限って、ドローンを飛行させるようにしましょう。
ケース2.飛行場所の許可は取れているけどドローン規制エリア内
すでに飛行場所の許可を得ている場合、もしくは自分の敷地内の場合で、人口集中地区や30m以内の飛行となる場合には、国土交通省の飛行許可が必要になります。
ちなみに自分の敷地内だとして「おれの家だからいいだろ!」と思ったとしても、そこが人口集中地区に該当していれば国土交通省の飛行許可が必要です。
国土交通省から飛行許可を得るためには、一定条件の技量および飛行実績、飛行知識をクリアしなければなりません。
具体的に、GPSやビジョンポジショニングなどの補完がない状態、なおかつ十分な経験を有する者監督の下で10時間以上の下記の飛行をおこないます
- 一定時間のホバリン グにより指定された範囲内(半径1mの範囲内)にとどまる
- 左右方向に20m離れた着陸地点に移動し、着陸することができる
- 対面飛行により、左右方向の移動前後、水平面内での飛行を円滑に実施できる
- 操縦者から10m離れた地点で、水平飛行と上昇・下降を組み合わせて飛行を5回連続して安定して行うことができる
- 8の字飛行を5 回連続 して安定して行うことができる
上記の飛行技量のほかにも、飛行する上での決めごと(ルール)等を明確にした文面を提出します。所定の書式を使用しますが、おおまかに10~20枚くらいの分量です。
申請期間は約3週間前後、審査の上で許可が降ります。この許可を得られれば、補助員をつけるなどとした一定条件下で飛行が許されます。
- 航空法に関わらない飛行エリア・飛行方法 → 許可必要
- 飛行場所の許可 → すでに許可あり
飛行する上では、国土交通省と約束をした飛行マニュアルに則って安全に飛行させましょう。
ケース3.国土交通省の許可、飛行場所の許可も取れている
最後のケースは両方ともに許可が取れている場合です。
この場合は問題ありません!
- 航空法に関わらない飛行エリア・飛行方法 → すでに許可あり
- 飛行場所の許可 → すでに許可あり
周囲の安全を確認しながら、飛行させましょう。
国土交通省の飛行許可だけではNG
「国土交通省のドローン飛行許可を持っているから、どこでも飛行させてOK」と豪語してビジネスをしている勘違いな輩が多くなってきたような気がします。
この前に会いした方はかなり残念でした。もし仮に、その言い分を通すのなら「皇居の中で飛ばしてみて実証すればいいのになぁ…」なんて思ったりします。
ドローン飛行禁止の立て看板が増加中
最近ではそのような迷惑行為をする方が多いのか、「ドローン禁止」と立て看板を目にする機会が増えました。
都内にある神社の参道の横に、ガッツリと立ててある警告です。警察署のお墨付きですね。
こちらは豊洲市場にあるプロムナード(緑化公園)の入り口にある立て看板。
広々とした新宿御苑の入り口にも、あからさまなドローン禁止がありました。
海水浴場の入り口にあるドローン使用禁止。こちら下田市の条例として罰せられるとのこと。
その他にも私が実業務をおこなっている上で、迷惑行為を耳にすることも増えてきました。
とあるお城でも警備員さんから「最近、ドローンを勝手に飛ばす人が多くて…困っているんです。ドローンが飛んでいたら、警備員が駆けつけて直ちに止めるのですが…」と。
とある海上保安部の担当官からも「対応に困る方がいますね…」と愚痴をこぼすことも…。
きっと最初は上記のような看板はなかったはずです。
しかし迷惑な行為(ドローン飛行)をしている人が増加したため、やむを得ず看板を出したり、条例で禁止したりしているのではないでしょうか。
河川敷も禁止の立て看板が増えていますよね、知っている人は知っていると思います。
ドローンスクールに通っても教えてもらえない話かも
さて、ここではかなり突っ込んで、分かりやすいように書いてみます。
youtubeに公開されいる動画は共有できるため、キャプチャ引用して…
youtube「完成物件紹介:静岡市葵区瀬名6丁目(8棟)B号棟」より引用
不動産紹介の動画なのですが、前半はドローン撮影を中心に映像展開しているようです。
途中に、公園内から離陸してドローンが飛行している映像に切り替わります。ちょうど上のキャプチャあたりですね。
憶測になってしまいますが、公園でのドローン飛行はほぼNGなはずです。どんなに公園管理事務所に問い合わせをしても特別な場合ではない限り、禁止と回答されます。
しかし本動画では思いっきり公園内で離発着+飛行をおこなっています。
さらに上記キャプチャは公園内での飛行シーンになるのですが、キャプチャ下部に注目です。
JUIDA認定の操縦技術証明書取得者、安全運行管理証明書取得者により、撮影地での飛行承認申請ずみ。上位証明書取得者により、安全面に充分配慮しながら撮影を行っております。
このJUIDA認定云々というのはドローンスクール民間資格の名称になります。たぶん、ドローンスクールに行って学ばれた方なのだろうと思います。
「撮影地での飛行承認申請済み」と記載があるため、国土交通省のドローン飛行申請と推測できます。
では、ドローンスクールの堅苦しい民間資格を取得した方が、なぜ人が集まる公営の公園で飛行さているのか不思議に思ってしまいます。その他にも怪しい飛行方法があったりして。
このドローンスクールの民間資格とは何なんでしょうか。
たぶんキャプションの文章の書き方から、国土交通省のドローン飛行許可を取っているが、場所の許可は取っていない、と思いますね…(普通なら「飛行撮影地の許可済み」と書くので)。
まさしく、飛行場所の許可を取っていないであろうNGなパターンです。
何度も言いますが、国土交通省のドローン飛行許可は万能ではない
ドローンの飛行許可というのは「国土交通省航空局の許可+飛行場所の許可=ドローンの飛行許可」です。
空のルールと地上のルールを切り分けて考えてないといけません。
国土交通省の飛行許可を持っていたとしても、それは空のルールが許されただけであって、地上のルールは無視できません。
繰り返すようになりますが、国土交通省も書いていましたよね。
航空法の許可等は地上の人・物件等の安全を確保するため技術的な見地から行われるものであり(略)
ただ単に、飛行する上での安全を確認したものです。
決してその地上での飛行許可を取ったものではありません。その飛行場所でのルールや法律が存在して、それに則ってドローンを初めて飛行できるのです。
特に事業者はコンプライアンス遵守しなければなりません。
飛行場所の許可を得なければ、その場で撮れたとしても「世の中に出せない」場合も出てきます。
空のルールを守り許可を得る、地上のルールを守り許可を得る。
それが「ドローンの飛行許可」だと思います。
あとがき
これ以上、ドローン禁止が増えていくのは残念ですからね。