空港付近でドローンを飛行する場合の法律的な飛行制限とは?

空港付近でドローンを飛行する場合の法律的な飛行制限とは?

こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。

ドローンは空を飛ぶため、他の航空機への影響が出ます。

その代表的なのが航空機。

空港付近では航空機が行き交い、低高度で飛行している場合もあります。航空機と衝突した場合には、もう一大ニュースです。

大事故を防ぐために、航空法では空港付近での飛行制限を課しており、同時にドローンメーカーのDJI社も独自に飛行制限を課しています。

今回のブログ記事では…

  • 航空法による飛行制限の内容
  • DJI社による飛行制限の内容
  • 空港付近で飛行させるリスクと注意点

をご紹介します。

正直なところを言うと、空港付近では飛行制御が複雑であり、航空機以外にもヘリコプター等も行き交うためドローンの飛行は危険です。

原則的に空港付近でのドローン飛行は止めましょう。

航空法による空港付近の飛行禁止

ドローンは「人口集中地区(DID)ではドローン飛行は禁止」だったり、「夜間飛行」「目視外飛行」などが法律的に禁止されています。

しかし「空港周辺の飛行禁止」というのも航空法によって定められています。

(飛行の禁止空域)第百三十二条

何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。

ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。

一 無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域

国土交通省航空局「航空法の一部を改正する法律」より

空港周辺では、無人航空機(ドローン)を飛行してはいけないと航空法で定められています。

では、空港周辺というのはどのエリアになるでしょうか?

国土交通省の言葉を引用すると…

空港等の周辺の空域は、空港やヘリポート等の周辺に設定されている進入表面、転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、(進入表面等がない)飛行場周辺の、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域です。

国土交通省「無人航空機の飛行の許可が必要となる空域について」より

空港周辺の空域には、航空機が出入りするルートが存在します。

その各所の呼び方を「進入表面」や「水平表面」などと呼んでおり、空港から一定のエリアをドローン飛行禁止しています。

もし無許可飛行をおこなった場合には、航空法違反として罰金刑50万円以下を処されます。

空港付近で飛行禁止のエリアの調べ方は?

国土地理院国土地理院「航空法施行規則第236条第1号に掲げる空域(空港等の周辺空域)の投影面下」より

「どこが航空法に係るエリアなのか?」を調べる方法は、国土地理院のマップが最適です。

空港や自衛隊基地に設定されている「進入表面」「転移表面」がグリーン色でマーキングされます。(ちなみに赤色は人口集中地区を示しているため、このマップは利便性が高いです)

ちょっと1つの空港を拡大して見てみましょう。

羽田空港

国土地理院「航空法施行規則第236条第1号に掲げる空域(空港等の周辺空域)の投影面下」より

東京都大田区にある「羽田国際空港」の詳細マップです。

まず、ここの濃い紫色の縦長にある「進入表面」「転移表面」では、航空法で無条件に飛行禁止です。

無人航空機の空港周辺での飛行禁止空域の拡大について

新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、大阪国際空港、
関西国際空港、福岡空港、那覇空港の進入表面若しくは転移表面の下の空
域又は空港の敷地の上空の空域

国土交通省航空局「無人航空機の空港周辺での飛行禁止空域の拡大について」より

まずは、この濃い紫色では一切の飛行ができません。

特定の空港で設定されているため、すべての空港にはありませんが、注意しなければなりません。

厚木飛行場

こちらは厚木飛行場のマップです。分かりやすい図ですね。

基本的には、このグリーン色にかかっているエリアは航空法の対象エリアです。

空港等の周辺の空域

空港等の周辺の空域は、空港やヘリポート等の周辺に設定されている進入表面、転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、(進入表面等がない)飛行場周辺の、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域です。

国土交通省航空局「無人航空機の飛行の許可が必要となる空域について」より

各空港が設定している航空機の進入表面等に該当するのがグリーン色の場所です。

つまり、先ほどの羽田空港と厚木飛行場の例をまとめると

  • 濃い紫色
  • グリーン色

この2つは航空法で飛行禁止および飛行制限の設定されているため、プロでない限り、このエリア内では飛行しないのがベターです。(空港近くで飛行させることは一般的にはないと思いますが…)

飛行禁止内(グリーン色)で飛行する場合は制限高がある

ほとんど可能性はないと思いますが、グリーン円形の「水平表面」などでドローンを飛行させる場合についてです。

このグリーン色では法律的に高度制限があります。

空港等の周辺に該当する場合は、許可なく飛行させることができる高度に制限があります。このため、該当する空港等の管理者(三沢飛行場、木更津飛行場及び岩国飛行場周辺の空域については、管轄する空港事務所)に制限高さをお問い合わせください。制限高さを超えて飛行させる場合には、空港等の管理者の了解を得てから国土交通大臣に対する許可申請を行ってください(空港等の管理者から了解を得ただけでは、国土交通大臣の許可を受けたことになりませんので、ご注意ください)。

国土交通省「空港等設置管理者及び空域を管轄する機関の連絡先について」より

まず、確認すべきは、飛行高度の限界値(制限高)です。

ドローンを飛行させるポイントによって、空港付近で飛行できる高度制限があるため、これを高度制限を聞くのが重要です。

  • 高度制限を超えないドローン飛行 : 許可は不要
  • 高度制限を超えるドローン飛行 : 調整の上、許可が必要

高度によって許可の有無が出てきます。

「では、どうやって高度制限を聞くのか?」という話になりますが、後述しますが各空港管理者に問い合わせるしかありません。

たとえば、空港管理者が「そのポイントでしたら、高度45mが高度制限になります」と教えてくれた場合には、高度45mまでなら許可は不要です。

ただそれ以上の高度(60mなど)を飛行させる場合には空港管理者の調整および国土交通省の許可が必要です。

空港管理者との調整次第によっては、ほぼ飛行不可になる場合もあります。決定権は空港管理者にあるので当然ですね。

グリーン色の中で飛行しなければならない場合を、まとめると…

  • 空港管理者に高度制限を聞く(座標を伝える)
  • 高度制限を超える飛行を希望する場合には空港管理者と飛行内容を調整する
  • 調整内容をもとに国土交通省航空局(空港事務所)に許可申請をおこなう

いろいろと書きましたが、まずは飛行させる場所の「高度」を知るのが重要なポイントになるわけです。

最大飛行高度の調べ方は?

電話で空港管理者に高度制限を確認できます。

空港連絡先国土交通省「空港等設置管理者及び空域を管轄する機関の連絡先について」より

「進入表面等の設定状況(詳細図)及び空港等の周辺空域を管轄する機関の連絡先」に、各空港管理者の担当課と電話番号が記載されています。

ドローンを飛行させようとする場所の住所もしくは座標を用意した上で、高度制限は何mなのかを確認します。

東京にある羽田空港の場合には、WEBで高度制限を調べることが可能です。(羽田空港高度制限回答システム

羽田空港羽田空港高度制限回答システムより

このシステムを使用すれば、羽田空港付近の高度制限をピンポイントで確認できます。

例えば上記画像にあるお台場テレコムセンターの場合は、円錐表面の中に存在して高度制限は約116mということが分かります。

おおよそ高度110mまでなら許可不要ですが、高度116mを超える場合には前述の通り、東京航空局東京空港事務所の調整および国土交通省航空局の許可が必要になります。

当然ですが、空港に近ければ近いほど、この制限高度が低くなっていきます。

制限高度を超えるドローン飛行の場合には?

「空港管理者に制限高度を聞いたけど、それ以上の高度を飛行させたい」という場合には、その空港管理者との調整および国土交通省の許可が必要になります。

まずは空港管理者との調整です。

  • 日時はいつなのか?
  • どの場所で飛行させるのか?
  • 時間帯はあるのか?
  • 飛行概要は何なのか?

などを伝えた上で、どの条件なら高度制限を超えた飛行が可能になるのかの調整をおこないます。

通常飛行している航空機が最優先になり、空港管理者は安全を優先するため、希望に添えない場合は出てきますのでブーブー言わないことです。あくまで「可能なら…」という立場で調整いたほうが無難です。

例えば、私が過去に調整を行った話をすると…

とある空港付近で、高度制限よりも+30m高く飛行しなければならなく、空港管理者と調整をおこないました。

日中に関しては航空機が飛行しているため、全面的にドローン飛行NGであること。ただし、航空機が飛行しない時間帯である早朝ならOKと最終的に調整がついたことがあります。(その後、国土交通省に航空法による飛行申請をおこないました)

制限高度を超えないドローン飛行では十分に気をつけること

たとえ空港管理者が定める高度制限を超えない場合でも十分にドローン飛行は注意しましよう。

飛行機やヘリコプターなどとの接触があると大惨事になりかねません。もし飛行機やヘリコプターが接近してきた場合には、ただちにドローン飛行を中断(着陸)です。

これは航空法でも禁止事項として定められています。

第百三十二条の二

三 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するため、無人航空機をその周囲の状況に応じ地上に降下させることその他の国土交通省令で定める方法により飛行させること。

航空法一部を改正する新旧対象条文より

「航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること」というルールがあり、もし違反をすると違反行為になります。

ほとんどないとは思いますが、極端に空港に近い場合には

  • 事前周知
  • 飛行前連絡、飛行後連絡

空港管理者と連携を取るのがベターです。小さめの空港管理者の場合は、空港からの離発着する飛行機の情報等を共有いただける場合もあります。

なんにしても、空港付近は危険です。

接触事故が起きる可能性が高いこと、接触した場合の人的被害が生じること、場合によっては空港が一時的に機能停止になることがあるため、本来なら飛行はさけるべきエリアです。

米軍基地は対象ではないが、別の法令違反になる可能性大

日本の空港、自衛隊基地およびヘリポートが対象となっています。

しかし米軍基地は対象となっていません。

ここに掲載がない航空機が離着陸している場所(米軍設置飛行場やヘリコプターの臨時離着陸場など)は、空港等の周辺に該当しません ので、国土交通大臣に対する許可申請は不要です(人又は家屋の密集している地域上空や、地上等から150m以上の高さで飛行させる場合を除く)。ただし、当該場所で離着陸する航空機の運航(人命救助などのため重要な運航を行っている場合があります)に影響がないよう、必要に応じて当該場所の管理者や航空機の運航者とあらかじめ調整するなど配慮をお願います。

国土交通省「空港等設置管理者及び空域を管轄する機関の連絡先について」より

つまり、米軍基地周辺には高度制限は存在しないのが航空法になります。

しかし法律上はOKだとしても、米軍基地周辺は航空機やヘリコプターが容赦なく飛び回っています。当然ですが、ドローンを飛行させていれば、接触事故を起こすのは容易に想像できます。

最近では、米軍のヘリコプターとドローンとのニアミスがあったようで、防衛庁からも「飛行するな、法令違反になるぞ」と警告しています。

米軍施設の上空やその周辺においてヘリやドローンを飛行させることは、重大事故につながるおそれのある大変危険な行為ですので、行わないで下さい。

こうした行為により、航空機の 安全な航行を妨害したとき等には、 法令違反に当たる場合があります。

米軍施設の上空やその周辺においてヘリやドローン を飛行させることは、米軍の航空機との衝突事故等に つながるおそれがある大変危険な行為です。

実際に、米軍ヘリが衝突を避けるために回避を余儀 なくされる等、米軍航空機の航行の安全に影響が生じ るような事案が発生しています。こうした行為により、 航空機の安全な航行を妨害したとき等には、法令違反に当たる場合があります。

防衛省・警察庁・国土交通省・外務省「米軍施設周辺でのヘリ・ドローンの飛行について」より

当たり前ですが、安易な飛行は避けたほうが無難です。

DJI社による空港付近の飛行制限

DJIのドローンを飛行させる場合には、メーカー側の自主的な飛行制限が加わります。

厚木飛行場 DJIゾーン

DJI フライトマップより

空港周辺ではDJIのドローンを起動させると機体GPSにより、飛行制限が自動的に発動します。

発動するエリアについては、DJIのウェブサイト(フライトマップ)で確認が取れます。DJI GEO Zones として5つのゾーン分けがされていますね。

  • 飛行制限空域
  • 高度制限空域
  • 許認可空域
  • 警告空域
  • 強化警告空域

この空域では、メーカー側による自主的な飛行制限が加わっていますので、自動的に飛行制限が発動されます。

「離陸すらできない」「強制的に離陸させられる」というシステム制御も働きます。

DJIの空港飛行制限
DJIドローンを飛行させるとき、飛行制限がかかるエリアがあります。 それは空港付近です。 日本には、航空法によって「空港等周辺の上空エリアはドローン飛行禁止」となってい

空港に近いということは、それだけ危険であり、法律的な制限もあるということです。

空港付近で飛行させるリスク

空港付近では、航空法のマップ+DJIのマップの2つを確認した上で、飛行させようとするポイントでどのような制限があるか確認しなければなりません。

法律的な制限をクリアして、なおかつDJIの制限もクリアすれば、各法令の則った飛行方法で飛行は可能にはなります。

しかし何度も書いていますが、空港付近ではリスクを伴います。

もし仮に電波障害などで操縦不能になり、ドローンが空港へ飛んでしまった場合はどのようになるでしょうか?

過去に海外で事件になったのは記憶に新しいですね。

独空港にドローン、百便超欠航 目撃情報で離着陸中止

ドイツ最大のフランクフルト空港で9日朝(日本時間同日午後)、小型無人機ドローンの目撃情報があり、安全確保のため全便の離着陸が約1時間にわたって中止された。同空港によると、100便以上が欠航し、約30便が別の空港に着陸した。警察がドローンの飛行経路などを調べている。

共同通信「独空港にドローン、百便超欠航 目撃情報で離着陸中止」より

2019年5月に、ドイツの空港にドローンが目撃されたため、離発着1時間中止。100便以上が欠航、約30便が別の空港に着陸。

たった1台のドローンで、空港の機能が停止しています。

英空港で一時離陸中止 ドローン目撃、予防措置

欧州最大級のハブ(拠点)空港である英ヒースロー空港で8日、小型無人機ドローンが目撃されたため「予防措置」として、全便の離陸が約1時間にわたって中止された。英メディアが伝えた。警察当局などが詳細を調べている。

BBC放送によると、ヒースロー空港周辺でドローンが目撃されたとの情報が8日夕、警察当局に寄せられた。

英国では昨年12月、ヒースローに次ぐ規模でロンドン近郊にあるガトウィック空港で複数のドローンが目撃され、滑走路が約36時間閉鎖された。

共同通信「英空港で一時離陸中止 ドローン目撃、予防措置」より

イギリスの空港でもドローンが目撃されたため、全便1時間の離発着中止。ひどい場合だと滑走路を36時間閉鎖。

空港利用者のことを考えると、なんともいたたまれません。

もしドローン操縦者が見つかった場合には、莫大な損害賠償金を請求されるのは目に見えていますね。

その他にも…飛行機とクラッシュした際の大事故、直下にある民家への影響など考えられます。

「法律を知らなかった」で済む話ではありません。

空港付近はドローン飛行を避けるべきエリアとして捉えるべきだと思います。

あとがき

空港周辺には航空法が敷かれていることを忘れてはいけません。

私は常にマップを確認することを心がけています。空港付近とわかった場合には、原則的にドローン飛行は止めましょう。

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