国土交通省のドローン飛行許可を取っても自由に飛行できない理由は?

国土交通省のドローン飛行許可を取っても自由に飛行できない理由は?

こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。

ドローンは航空法により、飛行エリアと飛行方法の2つで法規制が敷かれています。

そのため民家が多数ある人口集中地区と呼ばれるエリアや30m以内のドローン飛行は禁止とされています。もし違反飛行をおこなうと、航空法違反で50万円以下の罰金刑に処されます。

ただし、一定の条件をクリアすることによって、国土交通省航空局からドローン飛行許可を得て、禁止されている飛行エリア・飛行方法でも飛行が可能になります。

しかし国土交通省航空局からドローン飛行許可を得たとしても決して自由に飛行できるわけではありません。

今回のブログ記事では…

  • 航空法による基本的なドローン規制
  • 国土交通省航空局から飛行許可には条件がある
  • 飛行許可を取ったとしても飛行できない例

ドローンの国土交通省航空局の飛行許可に関して誤解する方が大変多く、場合によっては航空法に抵触する可能性もあります。

「ドローンの飛行許可を持っているから、どのような飛行でも大丈夫」

このような誤認をしないためにも、ドローンの飛行許可を取得しようとしている方やドローン業者に依頼しようとしている方は知っておくべきです。

国土交通省のドローン飛行許可を取っても自由に飛行できない理由

なぜ法律的に禁止しているのに、国土交通省航空局はドローン飛行許可を与えるのでしょうか?

それは一定の条件下に限って許可を出しているからです。

一定の条件下というのは、

  • 第三者の上空では飛行させない
  • 安全を確保するために必要な人数の補助者を配置する
  • 風速5m/s以上の状態では飛行させない

などの安全性を確保した数多くの条件です。

飛行する上で「これは守ります」と約束した上で、国土交通省航空局が審査をして許可が降りるわけです。

そのため、国土交通省のドローン飛行許可を取ったとしても、自由奔放にドローンを飛行できるわけではありません。

何度も言いますが、条件をクリアした場合に「飛行が許可されている」のです。

ドローン飛行許可という言葉が先行してしまって、なんでもできると思ってしまっては、航空法違反に抵触する可能性が高いため、誤認してはかなりマズイですね。

「ドローンの飛行許可を持っているから、どのような飛行でも大丈夫」では、一切ありません。

もしそう発言する方がいたら、依頼しようとする会社は避けたほうがいいかもです。

航空法による基本的なドローン飛行禁止とは

ドローンの飛行に関して2つの禁止事項があります。

飛行エリア飛行方法です。長く説明すると大変なので、ここでは基本的なドローン禁止について記載しますね。

(1)ドローンの飛行禁止エリア

ドローン飛行禁止エリア

まずはドローン飛行を禁止しているエリアです。

大きく4つに分かれていて、

  • 人口集中地区 … 飛行禁止
  • 空港等の周辺 … 飛行禁止
  • 150m以上の高さ … 飛行禁止
  • それ以外  … 飛行可能

飛行禁止しているエリア(空域含む)が定められています。禁止しているエリア以外なら、逆を言えばOKというわけです。

大きく影響のあるのは人口集中地区です。

都市部や市区町村の中心部では、人口集中地区にほとんどが該当していますね。

(2)ドローンの飛行方法の禁止

飛行禁止方法

飛行エリアの他に、飛行方法で6つの禁止が定められています。

  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 人または物件30m未満の飛行
  • イベント上空飛行
  • 危険物輸送
  • 物件投下

たとえ飛行OKなエリアだとしても、上記の飛行方法でドローン飛行させた場合には違反行為となってしまいます。

ここで該当しやすいのは30m未満の飛行ですね。

通りかかりの第三者、電線、電柱、ガードレール、民家などから、離発着を含めた飛行内で30m以上を離さなければなりません。

直径60m以上の広い空間でなら安全性があるため、飛行OKというわけです。

その他にも夜間・目視外飛行、イベントなど重要な飛行方法の禁止があります。(詳しい内容は↓のまとめを見てください)

ドローン規制と法律まとめ
「ドローンは航空法の対象だと知っているけど…ぜんぜん分からない!」 そう嘆くユーザーやクライアントが大変多いです。 確かにドローンに関わる航空法は複雑ですし、航空法だけ

禁止エリア・禁止飛行方法でも国土交通省航空局の許可が下りれば飛行可能

ドローンの飛行を大きく制限してしまうと、これからのドローンの産業が危ぶまれてしまいます。

そこで航空法を管轄している国土交通省航空局の許可を取れば、禁止エリアでも禁止飛行方法でもドローン飛行は可能になります。

おおまかに、許可を得るためには、申請書を提出して、審査を経て、審査が通れば許可が降りるフローになっているのですが、この許可された中身が大切なのです。

国土交通省航空局から飛行許可には条件がある

そもそもドローンの飛行を禁止しているエリアや飛行方法があるのは、なぜでしょうか?

答えは安全のためです。

墜落して通行人の頭に直撃した…、クルマに衝突させて交通事故を誘発した…、などドローンによって事故が起こる確率が高いエリア・飛行方法だからです。

そのような危険なエリア・危険な飛行方法を、得てしてドローン飛行許可を下ろすため、安全にドローンを飛行させるのを約束しなければなりません。つまり、ドローン飛行にあたって条件が加わるのです。

それが何度も言っている一定条件下でのドローン飛行許可です。

国土交通省航空局からドローン飛行許可を得る場合に、国土交通省が作成した「無人航空機飛行マニュアル」がベースになり、マニュアル記載内容をすべて承諾し、遵守しなければなりません。

このマニュアルの冒頭は、このように記載があります。

本マニュアルに記載される手順等は、無人航空機の安全な飛行を確保するために少なくとも必要と考えられるものであり、運航者は、本マニュアルの遵守に加え、使用する機体の機能及び性能を十分に理解し、飛行の方法及び場所に応じて生じるおそれがある飛行のリスクを事前に検証した上で、追加的な安全上の措置を講じるなど、無人航空機の飛行の安全に万全を期さなければならない。

国土交通省 航空局「国土交通省航空局標準マニュアル①(平成31年4月1日版)」より

飛行マニュアルを遵守しつつ、ドローンの飛行の安全に万全を期す必要があることです。

さて、条件について詳しく書いていきます。

条件:十分な経験を有する指導者のもとで飛行時間10時間の飛行訓練

そもそも操縦技量を有しなければなりません。これが最初の条件です。

プロポの操作に慣れるため、以下の内容の操作が容易にできるようになるまで10時間以上の操縦練習を実施する。なお、操縦練習の際には、十分な経験を有する者の監督の下に行うものとする。

国土交通省 航空局「国土交通省航空局標準マニュアル①(平成31年4月1日版)」より

GPSなしでの飛行、対面飛行、八の字飛行などを安定して操作できる操縦技量を、

  • 十分な経験を有する指導者が指導する
  • 飛行時間10時間の飛行訓練をおこなう

の2つの条件でクリアします。

それでないと、安全な操縦ができないわけです。意のままに操縦できないと、簡単に事故を起こしますから。

技量を有していることが条件になっていますし、それを約束しなければなりません。

飛行技量
一般的には、ドローンは規制外のエリアや条件なら、国土交通省の許可承認を得なくても飛行が可能です。 しかし、ドローン規制がある飛行条件の場合、当然ながら許可を得ないと違反行為に

条件:ドローンを飛行させる際の基本的な体制

禁止しているエリアや飛行方法でドローン飛行させる場合、飛行するにあたって安全に飛行させる体制をつくることが条件に加わっています。

飛行条件国土交通省 航空局「国土交通省航空局標準マニュアル①(平成31年4月1日版)」より

国土交通省航空局からドローン飛行許可を得るためには、上記の文言の一つひとつを守らなければなりません。

まずは重要な項目をピックアップします。

場所の確保・周辺状況を十分に確認し、第三者の上空では飛行させない。

第三者というは、通行人や住人など、関係者以外のすべての人間にあたります。第三者の上空では飛行させないというのが鉄則です。

風速5m/s以上の状態では飛行させない。

強風になるような風速5mでは飛行はNGです。地上よりも上空はもっと風が強くなっており、墜落する危険性が高いからです。

飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。

ドローンを飛行させる場合には、安全性が確保される必要人数の補助員を配置しなければなりません。つまり操縦者1人・補助員0人ではドローン飛行はできません

補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。

補助員を配置した後、1人はドローン飛行範囲に第三者が入らないよう注意喚起します。つまり「ドローンがここを通るため、入らないでくださいね」と警備する人ですね。

補助者は、飛行経路全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う。

同時に、別の補助員は、見渡せる位置に立って周辺状況を監視しつつ、操縦者にアドバイスをできる環境でドローンを飛行させなければなりません。

飛行場所付近の人又は物件への影響をあらかじめ現地で確認・評価し、補助員の増員、事前周知、物件管理者等との調整を行う。

ドローンを飛行する場所は現地で確認しつつ、補助員の増員等をおこなう必要もあります。

つまり、ここで列挙した項目がドローン飛行の許可が降りる条件になるわけです。

第三者の上空には飛行させないこと、そして風速、複数名の補助員など安全対策を敷いた上で、ようやくドローンの飛行許可が下ります。

条件:無人航空機を飛行させる者が遵守しなければならない事項&各飛行エリア・飛行方法での条件

先に述べた基本的な安全対策のほかにも、

  • 無人航空機を飛行させる者が遵守しなければならない事項
  • 各飛行エリア・飛行方法での安全対策

などがあります。

各飛行方法によって、基本的な安全対策に加えて、さらなる安全対策を施すことがドローン飛行条件となっています。

詳しい内容は↓の飛行マニュアルを見てください。

航空局標準マニュアル
ドローンの飛行申請を出す際に飛行マニュアルを添付しなければなりません。 この飛行マニュアルは、ドローンを飛行させる際に安全管理や技量、飛行方法を記した「ドローン飛行する際の約

飛行許可があってもドローン飛行できない例

上記のように、あらゆる条件が加わって上で、ドローンの飛行許可が下ります。

冒頭に書いた「国土交通省のドローン飛行許可を取っても自由に飛行できない」という理由がわかったでしょうか?

安全対策を敷いた上での飛行方法となると下記のようなドローンの飛行はできなくなります

例1:街中の上空を飛び回る

街中の上空をドローンが飛び回る

人口集中地区でドローン飛行、つまり街中の上空を自由奔放に飛行することはできません

理由は飛行マニュアルにある「ドローンを飛行させる際の基本的な体制」の条件があるからです。

もし仮に写真のようにドローン飛行させるとしましょう。

以下の条件をクリアできるでしょうか?

  • 場所の確保・周辺状況を十分に確認し、第三者の上空では飛行させない。
  • 飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。
  • 補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。

一つひとつの文言を飛行ルートや飛行範囲と照らし合わせてみると、かなり難しいのが分かると思います。

この場合、想定されるのが…

  • 道路上に歩いている通行人のすべてに「補助員が注意喚起」ができるでしょうか?
  • 飛行ルート内にある建物の中に入っている第三者が出てくるか分からない状況で、果たして「第三者の上空を飛行させない」が実現できるでしょうか?
  • 飛行エリアの中で補助員を配置するためには、他人の敷地の中に補助員を配置しなければなりません。補助員を配置できるでしょうか?不法侵入ではないでしょうか?
  • さらに補助員は、この飛行ルート内で相互に安全確認をおこなわなければなりません。地上で建物の影に隠れてしまう状況下で、どのようにして「相互に安全確認」をおこなうのでしょうか?

という国土交通省からのツッコミです。

街中の上空を自由に飛行することは、飛行条件を守れていなく、航空法違反に抵触します。さらに道路交通法や民法の所有権など各法令にも抵触する可能性があります。

なので、ありえないドローン飛行方法になるわけです。

例2:人・物件から30m以内での離発着でドローン飛行

30mからの離発着

航空法では、禁止している飛行方法の中で「人または物件から30m以上離すこと」がルールとなっています。

多くの人が勘違いしているのが「上空に飛行しているときに適用する」と思っていますが、それは大きな誤りです。

飛行する瞬間から「ドローン飛行」になるため、離陸する場所・着陸する場所も「人または物件から30m以上離すこと」が適用されます。

例えば上のような田舎でドローンを飛行させるとしましょう。

白色でバッテン印をつけた場所で離発着を行おうとする場合、左側に見えるガードレール、奥に見えるミラーや電灯が30m以内に存在します。

突き詰めた話になりますが、この場合、国土交通省航空局のドローン飛行許可を取得しなければなりません。さらに飛行時には、このような田舎の人口集中地区ではないエリアでも…

  • 場所の確保・周辺状況を十分に確認し、第三者の上空では飛行させない。
  • 飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。
  • 補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。

このようなドローンを飛行させる際の基本的な体制を敷かなければなりません。飛行マニュアルに記載してあるとおりに…。

第三者の上空は飛行できませんし、補助員0人での飛行もできません。

ひとやモノから30m
ドローン(100g以上)には航空法が適用されています。 飛行するには複数のルールがあり、その1つのルールに「人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上

例3:道路・歩道上でのドローン飛行

道路・歩道のドローン飛行

道路や歩道でのドローン飛行も通常は飛行できません

たとえば、人工集中地区や人または物件から30m以内の飛行などで、道路上空が飛行エリアとなっている場合です。

例外なく国土交通省から飛行許可を得て「ドローンを飛行させる際の基本的な体制」を守らなければなりません。

下記のふたつをクリアにするためにはどうすればよいでしょうか?

  • 場所の確保・周辺状況を十分に確認し、第三者の上空では飛行させない。
  • 補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。

まず、道路上に補助員を配置。

道路を歩いている歩行者やクルマ等を立ち入らないように、すべて注意喚起をおこなわなければなりません。さらに第三者の上空も飛行させられません。

つまり道路上の通行を止めるというわけです。

この行為をおこなうためには道路使用許可や占用許可を取得しなければ道路交通法違反になり、道路使用許可を取得していない場合は「ドローンを飛行させる際の基本的な体制」の前提が崩れるわけです。

警察署から道路使用許可を取得して、その上で補助員を配置してドローンを飛行しなければ、「第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う」ができませんね。

土地の所有権・市区町村の条例・禁止事項など

ドローンに関わる法律は、航空法のみではありません。

航空法は「空のルール」だけであって、地上には「地上のルール」が存在します。

例えば、土地の所有権。

航空法でその場所の飛行許可を取得したとしても、第三者が所有する土地の上空を飛行することは権利侵害等に該当します。

国土交通省航空局のQ&Aには…

航空法に従って飛行すれば、第三者が所有する土地の上空を飛行してもよいの でしょうか。

航空法の許可等は地上の人・物件等の安全を確保するため技術的な見地から行われる ものであり、ルール通り飛行する場合や許可等を受けた場合であっても、第三者の土地 の上空を飛行させることは所有権の侵害に当たる可能性があります。

国土交通省「無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&A」より

航空法は安全を確保するための法律であるため、飛行に関わるすべてを許可しているわけではない、というわけです。

各市区町村にも条例が存在して、公園や海岸などをドローン禁止。条例違反の罰則規定もあります。

さらに、近年では「ドローン禁止(NO DRONE)」の看板が増えてきました。

上野公園

上野公園に掲示しているドローン使用禁止の案内です。

前述したとおり、国土交通省航空局から飛行許可を得ていたとしても、地上の上野公園でNGだった場合には、当然ですがドローン飛行はできません

考えれば分かる話なのですが、一部の悪質なユーザーは「オレは国土交通省から許可を取っている!」と言い張って、どこでも飛行できると勘違いしているんですよね。

もし、その理論が通るのなら、皇居の中でドローンを飛ばしてみて「オレは許可を取っている!」と警察に言ってみてればいいのに…と思ったりしています(笑。

ドローン飛行許可は万能ではない

「国土交通省航空局からのドローン飛行許可」というのは、あらゆる条件下のみでドローンの飛行を許されています。

許可さえ取れれば何でも飛行OK!というわけでは一切ありません。

数十ページに渡る飛行マニュアルや飛行申請書に記載のある内容を、ドローン操縦者は遵守しなければなりません。

「おいおい、なんだよー」と思われがちです。ドローンは法律に思いっきり関わっているため、法令に沿うのは仕方ありません。

法律がすべて…とは言い難いですが、法律のある日本だからこそ、法律を守るのもありますが、根本的の話でいうと第三者の安全を確保するのが目的です。

関係のない人たちを守るための飛行マニュアルであり、国土交通省との約束事なのです。

  • 「第三者は関係ない。自分さえ良ければいい」
  • 「ドローンの航空法は緩いから気にしなくてよい」
  • 「ドローンは墜落しない、衝突もしない」

そう安易に考えているドローン操縦者やドローン業者がいるのでしたら、事故が起きたときや、地域住民から通報を受けたときに、えらいことに巻き込まれます。

事故が起きてからでは遅いですし、依頼した飛行で航空法違反でニュースになるのは企業的にも痛手なはずです。

ドローンは墜落もしますし、クラッシュ(衝突)もします。決して100%安全ではありません。まったく関係のない第三者に危害を加える危険性があります。

だからこそ、少なくとも前述した「飛行できない3つの例」を「できる」と答えるドローン業者は気をつけたほうが良いです。

「ドローン飛行許可書がある」は、なんでも飛行できる許可ではありませんから。

あとがき

国土交通省の「ドローン飛行許可」っていう言葉が曖昧な気がしてなりません。

本来なら許可された中身が重要なのに。航空法が形骸化される懸念を感じます。安全が軽視されると、事故を誘発します。

ユーザー、会社、警察などのすべての人が認識しなければならないのではないでしょうか?

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