こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
2019年の7月~9月にかけて、国土交通省よりドローンの飛行ルールがいくつか追加されました。
これ、いつも国土交通省のWEBサイトを見ていないと気づかないだろうなぁ~、と感じたため、このブログでも追加事項や変更点を紹介します。
そこまで大きな影響はないですが…
- ドローン飛行情報共有サービスの情報入力必須
- 無人航空機の飛行ルールの追加の一斉解説
- 主要空港の飛行禁止エリア拡大
を中心に、少しでも理解が進みればと思います。
法律的なドローンの運用方法も徐々に固まっていく…という気がしますね。2022年度にはドローン登録制のニュースもあるので、見逃さずにしっかりと付いていかないとです。
このページに書いてあること
ドローン飛行情報共有サービスの情報入力必須に
飛行情報共有システム https://www.fiss.mlit.go.jp
2019年4月23日からスタートした「ドローン飛行情報共有サービス」。
国土交通省が発表したシステムで、ざっくりというと…
無人航空機の運航者が飛行前に飛行計画情報を登録することで、サービスを利用する他の無人航空機の運航者や航空機の運航者と情報を共有できるほか、本サービス上に登録された、地方公共団体が個別の法令で定めた飛行禁止エリアをまとめて確認することが可能です。
「どこでドローンが飛ぶ予定なのかを、みんなで共有しよう」というものです。
ドローンを扱うユーザーが積極的に情報登録していかないと、活用できる情報源にはなりにくいものです。
スタート当初から、ずっと閑古鳥が鳴いている状態なんですよね…。
そこでしびれを切らしたのか(!?)、2019年7月26日以降のドローン飛行許可について、ドローン飛行情報共有サービスの入力が必須になりました。
本改正の施行により、今後、新たに航空法に基づく許可・承認を受け、飛行を行う場合は、その都度、飛行前に「飛行情報共有システム」を利用して飛行経路に係る他の無人航空機の飛行予定の情報等を確認するとともに、当該システムへ飛行予定の情報を入力することが必要となります。
つまり、国土交通省航空局から飛行許可を得た分に関しては、絶対に「飛行情報共有システム」を入力してね、という話です。(=それを条件に許可を出します)
どの許可からどうなるのか…をまとめてみると…
- 2019年7月26日以降に取得した個別 … 入力必須
- 2019年7月26日以降に取得した包括申請 … 毎回入力必須
- 2019年7月26日以降に申請不要の飛行 … 必須ではないが共有が望ましい
- 2019年7月26日以前に取得した個別&包括申請 … 必須ではないが共有が望ましい
7月26日以前に取得した包括申請(年間)は入力必須ではありませんが、7月26日以降の取得に関しては、すべてにおいて入力が必須です。
例えば包括申請を取得した場合、飛行毎に飛行情報共有システムの入力を行わなければなりません。
「えー、面倒くさい!ネットの調子が悪くてサーバーにつながらないことにしよう!」と思っている方にも、すでに対策済みです(笑。
ただし、飛行情報共有システムが停電等で利用できない場合は、国土交通省航空局安部安全企画課に無人航空機の飛行予定の情報を報告するとともに、自らの飛行予定の情報が当該システムに表示されないことを鑑み、特段の注意をもって飛行経路周辺における他の無人航空機及び航空機の有無等を確認し、安全確保に努める。
国土交通省の航空局に電話して報告してね!となっているため、「飛行情報共有システム」の入力は避けられません。
「飛行情報共有システム」の入力を条件に、国土交通省航空局が許可を下ろすため、強制的にドローン飛行情報共有サービスが有効活用されていく…のです。
今現在では、国土交通省に申請不要のドローン飛行は、ドローン飛行情報共有サービスへの入力は必須とはなっていません。
しかし、国土交通省が出しているドローン飛行のガイドラインでは…
飛行計画を事前に「飛行情報共有システム」へ登録することで、自らの飛行計画の管理に加え、他の無人航空機運航者や航空機の運航者への情報提供となり、相互間の安全確保につながりますので、積極的に飛行情報共有システムに飛行計画を入力しましょう。
「ドローンを飛行するときには、積極的に入力してね」とのこと。
ヘリコプターやセスナなどの他の航空機との接触を避けるためにも、入力していったほうがいいかもしれませんね。
まぁあ、なんにせよ、空はドローンだけのものではなく、空を飛んでいる事自体が大変なことなので、こういった「ドローン飛行情報共有システム」の運用は必然ですね。(ただ、普及を考えると、2年くらい早かったほうが良かったかも…。いまから浸透させるのは大変かも…)
無人航空機の飛行ルールの4つの追加
2019年9月18日付けで、航空法の一部が改正されます。
令和元年9月18日付けで「航空法及び運輸安全委員会設置法の一部を改正する法律(令和元年法律第38号)」・「航空法施行規則の一部を改正する省令(令和元年国土交通省令第29号)」が一部施行・全面施行され、以下の無人航空機の飛行の方法が追加されます。違反した場合には罰則が科せられますので、ご注意ください。
飛行方法についていくつか追加があり、新たに罰則も盛り込まれています。
これらは2019年2月から検討入りしており、以前のブログ記事でも書いていましたね。
いままでが6つだったので、今回4つが加わって、合計10個となったわけです。
詳細については、「国土交通省からのお知らせ無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルールについて」のリーフレットをご確認ください。
今回追加されたのは上の図で、1~4番です。それではひとつずつ紹介していきますね。
アルコール等の影響により正常な飛行ができないおそれがある間の飛行禁止
どんな場所でもどんな時間帯でも、飲酒時にドローンを飛行させるのが禁止になります。
アルコールによる身体への影響は、個人の体質やその日の体調により異なるため、体内に保有するアルコールが微量であっても無人航空機の正常な飛行に影響を与えるおそれがある。このため、体内に保有するアルコール濃度の程度にかかわらず体内にアルコールを保有する状態では無人航空機の飛行を行わないこと。
きっと想定されるのは…
- BBQで酒を飲んで、自慢気にドローンを操縦した
- 花見をしていて酒を飲んで、勢いでドローンを操縦した
- 重度の二日酔いで体内にお酒が残っている状態でドローンを操縦した
これらが、すべて禁止されています。(安全ではないという点で当たり前ですね)
さらに、飲酒ドローン操縦を公共の場でおこなった場合には、1年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が処されるとのこと。
かなりピンポイントで罰則を設けたあたりを考えると、今まで多数の事故があったのかもしれません…。
公共の場所において無人航 空機を飛行させた場合には1年以下懲役又は 30 万円以下の罰金が科されるところ、 ここで「公共の場所」とは、公衆すなわち不特定多数の者が自由に利用し又は出入り することができる場所をいい、道路、公園、広場、駅等がこれに含まれ得る。
公共の場というは、具体的に、道路、公園、広場、駅などの公衆(不特定多数が自由に利用できる場所)とのこと。そうなると、河川敷や海岸も該当してきますね。
飛行に必要な準備が整っていることを確認した後の飛行
ドローンを飛行する前に必ずチェックしてね、というのがドローンの飛行方法として追加されました。
飛行前に機体の点検等を実施することで故障等による落下を防止するため、航空法 第 132 条の2第2号により、飛行に必要な準備が整っていることを確認した後にお いて飛行させることとしている。
わかりやすく書くと…
- 機体や周辺環境などをチェックしないでいきなり飛行 … 禁止
- 機体や周辺環境などをチェックして安全を確認した上で飛行 … OK
と飛行前にチェックするのがMUSTになったということです。
具体的に「飛行に必要な準備が整っていること」というのは何をチェックするのか…なのですが、結構あるんですよね。
(1)当該無人航空機の状況について外部点検及び作動点検を行うこと
具体的な例
- 各機器(バッテリー、プロペラ、カメラ等)が確実に取り付けられ
ていることの確認- 機体(プロペラ、フレーム等)に損傷や故障がないことの確認
- 通信系統、推進系統、電源系統及び自動制御系統が正常に作動する
ことの確認
まずは作動チェックです。
バッテリーなどが正しく取り付けられているか、プロペラに損傷はないか、起動してエラーが出ていないか…などです。
このあたりは通常の飛行前チェックと同じなので、格別に問題はないと思います。
(2)当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況を確認すること
具体的な例
- 飛行経路に航空機や他の無人航空機が飛行していないことの確認
- 飛行経路下に第三者がいないことの確認
周辺環境のチェックということで、他の無人飛行機やヘリコプターなどが飛んでいるかのチェックです。
さらに「飛行経路下に第三者がいないことの確認」についても記載があるため、たびたび問題になっている「第三者の上空」というのが、全面的に禁止になったと言えます。
- 今まで:人口集中地区や人から30m以上離れていたら法律的にOK
- これから:飛行前チェックで第三者がいないことを確認する。つまり第三者がいたらNG
まぁあ、少しだけ遠回しな表現ですが、普通に考えて第三者の上空はダメですね。
ドローンを飛行する上で、すべての場所で第三者の上空はNGなわけです。
(3)当該飛行に必要な気象情報を確認すること
具体的な例
- 風速が運用限界の範囲内であることの確認
- 気温が運用限界の範囲内であることの確認
- 降雨量が運用限界の範囲内であることの確認
- 十分な視程が確保されていることの確認
風速や気温、降水量(雨天)、濃霧などの気象条件を確認して、飛行に必要な準備が整っていることを確認します。
運用限界というのは微妙な言葉だと思いますが、例えばDJIのドローンの場合は、スペック表に記載のある文言になりますね。
風速については10m/sだったり、動作環境温度も-10℃~40℃だったり。雨が降っていたらダメですね。
(4)燃料の搭載量又はバッテリーの残量を確認すること
具体的な例
- 十分な燃料又はバッテリーを有していることの確認
すでに使い切っているバッテリーを再度使用していないかなどの確認ですね。これは当たり前でしょう。
上記の4つの「飛行に必要な準備が整っていることを確認する」ことで、飛行開始ができるわけです。
確認不十分だった場合には「それ、航空法 第132条の2第2号に則って法律違反ですよ」となります。
航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するための方法による飛行
航空機や他ドローンとの衝突を予防するために、あらゆる対策をおこなってください、という内容です。
航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するため、航空法第 132 条の2第3号 により、無人航空機をその周囲の状況に応じ地上に降下させる等の方法により飛行させることとしている。
もしヘリコプターやセスナ、他のドローンが近づいてきた場合に、そのドローン操縦者は以下の方法で、衝突をさけなければなりません。
- 地上に降下させる
- 安全な間隔を確保して飛行させる
- 衝突の可能性がある方向とは、逆に移動させる など
さらに、本当に追突しそうになった場合には
- 空中で停止することも含まれる
緊急停止も辞さずに、衝突を回避しなければなりません。
ドローンの操縦者からヘリコプターやセスナなどは目視できたり、飛行音で確認できます。しかし、相手側の操縦者はドローンが飛んでいることを直前まで近づかないと確認できません。
ドローン操縦者側が必ず「すぐに降下する」を徹底しましょう。
他人に迷惑を及ぼすような方法での飛行禁止
「他人の迷惑を及ぼす」というのは言葉としては幅が広いですね。
一応、言葉として記載があるのは…
不必要に騒音を発したり急降下させたりする行為は、周囲に不快感を与えるだけでなく、危険を伴うこともあることから、航空法第 132 条の2第4号により、他人に迷
惑を及ぼすような方法での飛行を禁止している。
不必要な騒音、そして急降下などでしょうか。また、人に向かって無人航空機を急接近させるのも対象となっています。
ここで、航空法第 132 条の2第4号の規定は、危険な飛行により航空機の航行の安 全や地上の人や物件の安全が損なわれること防止することが趣旨である。
「地上の人や物件の安全が損なわれること防止する」とのことなので、場合によっては、いつかは拡大解釈を得られるような表現かもしれませんね。
主要空港の飛行禁止エリア拡大
そして今回、主要な空港の進入表面・転移表面は飛行禁止となり、空港付近の禁止エリアが拡大しました。
同日付けで「航空法施行規則(令和元年国土交通省令第29号)」・「無人航空機の飛行禁止区域等を定める告示(令和元年国土交通省告示第461号)」が全面施行され、一部の空港について航空法第132条第1号の禁止空域が拡大されます。告示で定める空港(新千歳空港・成田国際空港・東京国際空港・中部国際空港・関西国際空港・大阪国際空港・福岡空港・那覇空港)では、新たに進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域が飛行禁止空域となります。当該空域での飛行に係る許可には、空港設置管理者との事前調整が必要となりますので、ご注意下さい。
こちらは影響を受けるひとはかなり限定的だと思うので、さらっと記載します。
今までは空港にかなり近いエリアだとしても、制限高を越えなければ、空港との調節や航空局の許可は必要ありませんでした。
例えば、空港の2km先のエリア(水平表面)だとして、制限高が25mならば、ドローンが高度25m未満までだったら問題なく、もし高度25mを超えるようならば、空港との調整や許可申請を要します。
しかし、今回の航空法の一部改正によって、主要な空港の
- 進入表面
- 転移表面
に関しては、限界高度云々の話があったとしても、飛行禁止空域になりました。
- 今まで:進入表面・転移表面で制限高を超えなければOK
- これから:進入表面・転移表面は飛行禁止
進入表面・転移表面の確認が重要になってきます。
そこで、どこが進入表面・転移表面なのかですが…、国土地理院のマップを使うと分かりやすいです。
羽田空港の進入表面は…
滑走路から航空機が出入りするエリアですね。
もうひとつ、羽田空港の転移表面は…
進入表面の、横に位置するのが転移表面です。
つまり、長細いグリーンのエリアが「飛行禁止」と考えるとスムーズです。
こんなところで飛行するのはあり得ないと思いますが、もし飛行する場合には、空港との調節および許可申請が必要になってきます。
このあたりの具体的な説明に関しては、国土交通省航空局が出しているガイドラインの図が一番わかりやすいです。
新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、大阪国際空港、関西国際空港、福岡空港、那覇空港
その他空港やヘリポート等
今回、飛行禁止になったのは主要空港の「進入表面」と「転移表面」なので、その他の空港やヘリポートに関しては、今まで通りの扱いになります。
この2つの図を見比べても、×印がついていて分かりやすいですね。
2019年夏、ドローン飛行のルール追加について
改めて、ドローン飛行情報共有サービスと追加ルールのまとめです。
ドローン飛行情報共有サービスについては
- これから許可申請のあるものは必須事項になるため入力しなければならない
そして、飛行方法の禁止事項として6つありましたが、今回新たに下記4つが加わりました。
- アルコール等の影響により正常な飛行ができないおそれがある間の飛行禁止
- 飛行に必要な準備が整っていることを確認した後の飛行
- 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するための方法による飛行
- 他人に迷惑を及ぼすような方法での飛行禁止
総じて感じるのが「ドローンの操縦はしっかりしましょう」ということでしょうか。
今まではユルユルだったので、少しだけ当たり前のことが明確化されたのかもしれません。
航空法の一部改正によって加わった4つに関しては、拡大解釈も得られる内容となっているため、多少の含みのあると思います。
どこまで影響してくるのかは、今度の運用次第でしょうか。
さらに、つい先日、日経新聞に「2022年度に向けてドローン登録制導入」という記事が掲載されました。
2022年度をめざし、所有者や使用者、機種などの登録制度を創設する。機体の安全基準や使用者の技能を証明する制度もつくる。(中略)
登録制を導入すれば事故や紛失などが起きた際、警察が事故の原因や関与した人を特定しやすくなる。行政が認めていない不特定多数のドローンが空を飛ぶ事態も避けられる。(中略)
登録制度は米国のほかカナダ、英国、フランス、オーストラリア、中国などが既に導入している。そのほとんどの国では、登録していないドローンを飛行させると罰則が科される。
登録制度になって、購入したドローンはすべて登録されて国が管理。事故・ロスト・犯罪などで対応できるようにする…とのことです。まぁあ自然な流れですね。
まだまだドローン自体は始まったばかりなので、適切な法改正や制度づくりは必要不可欠です。
あとがき
徐々にドローンの運用方法も固まりつつあります。
事業者もユーザーも、しっかりと付いていかないといけません。「知らなかった」では済まされないですからね。
特に「ドローン飛行情報共有システム」はどこまで入力が進み、どこまで活用されていくか…今後の展開が気になります。