こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
今回のブログ記事は、軍事ドローンについてですので、少し異色な話題かもしれません。
日本ではマルチコプターのドローンが有名ですが、軍事ドローンはその名の通り、パイロットが搭乗していない「無人航空機」です。
2020年が始まったばかりのこと、「アメリカとイランの戦争が始まるのか!?」と世界中に緊張感が走りました。
そのキッカケとなったのが、軍事ドローンでの殺害です。
このブログ記事では…
- 2020年、軍事ドローンが暗殺した事案
- リアリティのある2つの映画
- 軍事ドローンから生まれてくる様々な苦悩
上の3つを中心に、「空の暗殺者としてのドローンの姿」を書いていきます。
マルチコプターと軍事ドローンは大きな差がありますが、同じドローン(無人航空機)として知見を広げるのもいいですね。
このページに書いてあること
軍事ドローンによる直接攻撃
ここ数年、軍事ドローンによる攻撃活動がたびたびニュースになってきました。
2020年がはじまったばかり、アメリカが敵対国イランの指導者の1人であるソレイマニ司令官を殺害したと発表。
世界中が「戦争になるのか」と不安になったのは記憶に新しいと思います。
アメリカの国防総省は1月2日夜(現地時間)、イランそして中東において最も強力な軍人の1人を殺害したことを公表した。(中略)
ソレイマニ司令官は、イラン革命防衛隊のエリート部隊「コッズ部隊」の司令官であった。イラン革命防衛隊は中東で高度な対外工作を行い、シーア派民兵のイラクでの訓練などを行なっている。(中略)
「昨夜アクションをとったのは、戦争を止めるためだ。始めるためではない」トランプ大統領はフロリダの別荘「マー・ア・ラゴ」から1月3日に話した。
Huffington Post Japan「イランのソレイマニ司令官とは何者か? 米軍による殺害が一大事である理由」より
この殺害を実行したのが、軍事ドローンです。
具体的には「MQ-9 リーパー」と言われています。
完全に遠隔操作をおこなうため操縦席はなく、のっぺりとした機体です。
ただ凄まじいのがその性能。
- 滞空時間:14〜28時間
- 航続距離: 5,926 km
- 最高速度: 482 km/h
- 最高高度: 15,200m
なんとも合理的で高性能な航空機。
つまり、北海道から沖縄まで往復ができる航続距離であって、燃料補給なしに24時間も飛行し続けられて、通常の飛行機並みの速度が出て、1万km以上の上空でも航行できる。無音に近いため、気づかれない。
しかも、パイロットはアメリカの基地から操縦。戦闘地域に行くわけでもなく、任務が終わったら自宅に帰れるわけです。無人航空機が墜落しても、パイロットは死ぬことはありません。
最強です。この一言に尽きます。
今回のソレイマニ司令官を殺害した事案では、ペルシャ湾を挟んだカタールの軍事基地から航行し、アメリカのネバダ州の空軍基地から遠隔操作された無人航空機(MQ-9 リーパー)とのこと。
ソレイマニがシリアからバグダッド国際空港(イラク)に到着した時、イラクの当局者がいれば中止という作戦でした。殺害を検討し始めてから情報網、電子機器、偵察機などあらゆる方法で監視・追跡を行い、現地でイラク当局者がソレイマニの乗る車に同乗していなかったことからミサイル・ヘルファイヤR9X『ニンジャ』2発が発射されました。発射したのは、カタールの軍事基地から飛ばされた米特殊作戦軍の無人航空機・MQ−9リーパーで、アメリカのネバダ州の空軍基地から遠隔操作されたされたものです。
情報戦によって該当者を突き止めて、クルマの移動中を狙い撃ち。
まさに「空の暗殺者」です。
近未来の戦争は、軍事ドローンが大きな役割を担うと言っても過言ではありません。
軍事ドローンを題材にしたリアリティのある映画
そのような最強の軍事ドローンですが、日本ではお目にかかれません。
でも、映画という世界なら…
- どうやって操縦しているのか
- どこまでの精度で爆撃攻撃ができるのか
- パイロットたちはどのような心情なのか
を映像で感じ取れます。こうやって私が文章で書くよりも、圧倒的に現場感を得られますからね。
2つの映画を紹介します。(ちなみにAmazonプライム会員なら無料視聴できます。未会員でも30日無料体験可能です)
ドローン・オブ・ウォー / good kill
まさに今回のイランの指導者の1人を殺害したような、数多くの任務を遂行していきます。
上空3000mから高精度に特定人物を爆撃する、数時間の間、監視を続ける。その中で、パイロットとしての苦悩がジワジワと出てくる、なんとも心痛い映画です。
ただ、リアリティはあります。
軍事ドローンの役割、それにまつわる人間の苦悩。まるっと感じ取れるのでオススメです。
セリフの中で印象的だったのが「敵対国に軍事ドローンが飛び回っている。今や、”国鳥”だよ」という場面。ドキッとしますね…。
アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場
こちらも軍事ドローンを題材とした映画。
ドローンによる攻撃等は出てくるのですが、どちらかというと「どうジャッジを下すか」のサスペンス映画です。
観ていても苦悩を感じることは、そこまでありません。きっと日本人なら「あるある」と頷きながら気楽に見ていられます。
以前、ブログ記事に書いていたのですが…ドローンによってリアルタイムに映し出すことによる大きな弊害、そしてドローンパイロットの葛藤が垣間見れる映画です。
軍事ドローンから生まれてくる様々な苦悩
最強と言っていいほどの軍事ドローンですが、いくつかデメリットがあるようです。
気流による安定性、雲による視野性の低下、ペイロード(搭載重量)の問題など。しかし一番のデメリットが、パイロット(人間)に対する精神的ダメージです。
このような無人機の運用は、操縦者が人間を殺傷したという実感を持ちにくいという意見があるが、「いつミサイルを発射してもおかしくない状況から、次には子どものサッカーの試合に行く」という平和な日常と戦場を行き来する、従来の軍事作戦では有り得ない生活を送ることや、敵を殺傷する瞬間をカラーテレビカメラや赤外線カメラで鮮明に見ることが無人機の操縦員に大きな精神的ストレスを与えているという意見もある。
パイロット自体は決して死ぬことはない、絶対的な安全であるのですが、
- 戦場と日常生活を行き交い、戦時的な緊張感のない乖離の大きさ
- 人間を殺傷している実感のないゲーミング性
- 不意打ち的な戦闘方法による背徳感
- 仲間と一緒に戦っていない充実感のなさ
このあたりは上記の映画でも表現されています。
それ故に、
無人機のパイロットは実際にイラクに展開している兵士よりも高い割合でPTSDを発症している。
実際に戦場に出ている兵士よりもPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症するとのこと。
なんともいたたまれない気持ちになりますね。
(もし問題が大きくなっていくのなら、攻撃もコンピュータによる自動化されていくかもしれませんね…)
あとがき
今回、軍事ドローンによる攻撃が大きな話題になったため、マルチコプターのドローンとは関係ありませんが時事的に取り上げてみました。
映画「ドローン・オブ・ウォー」を観ると視覚的に理解できるのですが…、ドローンは「空の暗殺者」過ぎます…。