こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
2020年2月28日、閣議決定により航空法が改正されることになりました。
主に、ドローン(無人航空機)に関わる法改正になっており、中心核となるのがドローン登録制度の導入です。
今回のブログ記事では…
- ドローン登録制度の概要
- 登録情報や期間、罰則などの詳細
- ドローン登録制のメリット・デメリット
この3つを中心に「ドローン登録制度」について徹底解説していきます。
重量200g以上のドローン保有者も、重量200g未満の保有者も要チェックしてください。
「知らなかった」では許されません。
これ、法律なので普通に捕まっちゃいますからね。
ドローン登録制度の概要
かねてから話の合ったドローン登録制度。
2020年2月末に閣議決定したことによって正式にスタートすることになりました。
「んっ、ドローン登録制度って何よ?」
そう思われるかたが大勢いると思いますので、まずはドローン登録制度の概要を事細かに説明していきますね。
ちなみに、今回の法律案の正式名称は…
無人航空機等の飛行による危害の発生を防止するための航空法及び重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律の一部を改正する法律案
です。長いですねぇ。
ドローン登録制度に至った理由は?
今までドローンを購入すれば、禁止エリアや禁止飛行方法以外ならドローンは飛行できました。
ただ今回、法案成立によって、もう一段階、法規制が強化。その中心核になるのが「ドローン登録制度」です。
では、なぜ、ドローン登録制度に至ったのかが気になりますよね。
国土交通省が発表している理由はこれです。
近年、無人航空機の利活用が急速に進展する一方で、無人航空機の事故や必要な安全性の審査を経ずに無許可で無人航空機を飛行させる事案が頻発している等、飛行の安全が十分に確保できていない状況が生じていることが課題となっています。
また、空港周辺における無人航空機の飛行とみられる事案により滑走路が閉鎖され、滞留者の発生、定期便の欠航等により航空の利用者や経済活動に多大な影響が及ぶ事態が発生しています。
このような状況を踏まえ、事故等の原因究明や安全確保上必要な措置の確実な実施を図る上での基盤となる無人航空機の所有者情報等の把握等の仕組みの整備や空港における危険の防止対策の強化、空港の機能確保を強化することが必要となっています。
国土交通省「無人航空機等の飛行による危害の発生を防止するための航空法及び重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律の一部を改正する法律案」より
なんだか難しい話だと思ってしって、ここで耳をふさいでしまうのは残念なので、私なりに簡潔に説明しますね。
要約すると…
- 無人航空機の事故や違反飛行が増加傾向にある
- 事故や違反飛行時に「所持者が分からなくて」困っていたし、安全確保ができていなかった
- 関西空港でドローンらしき違反飛行によって何度も一時滑走路封鎖して多大な影響が出た
だから今回の法改正で…
- 所有者が判明できるように登録制度を設けた
- 空港付近での罰則規定を設けた
法改正をすることによって…
- ドローン飛行による人物や物件に対する危機を回避して安全を確保する
という話です。
つまり、もっと暴力的に言うと…
「ドローンで世間が迷惑しているから、ドローン所有者にもっと法的な責任を持ってもらいますね」です。
たしかに昨今、事故による怪我や違反飛行が目立ってきており、いつ死亡事故が起きるかと怖い状況でした。
ドローン登録制度は然るべくドローン対策と言えます。
登録方法や期間、罰則規定などの詳細について
ではドローン登録制度とはどのようなものなのかが気になりますよね。
ここでは間違いがないように法案情報をベースに詳細を記載していきます。
どのドローンが対象となるのか?
ドローン登録制度では、重量200g以上の無人航空機(ドローン)が対象になります。
今回の決議法案には…
(登録)
第百三十一条の三
国土交通大臣は、この節で定めるところにより、無人航空機登録原簿に無人航空機の 登録を行う。
無人航空機の登録が法律で定められました。
少しだけややこしいのですが、「無人航空機」というのは、航空法上では重量200g以上のドローンとして定義されています。(重量200g未満のドローンは「模型航空機」です)
そのため、ドローン登録制度の対象となるのは無人航空機である重量200g以上のドローンのみとなります。
購入期間は関係なく、すべての重量200g以上が対象となるため、
- 数年前に購入した重量200g以上の無人航空機
- 今年購入した重量200g以上の無人航空機
など、すべての重量200g以上の無人航空機が登録の対象になります。過去・現在・未来のすべてですね。
押入れの中にひっそりと置いてある無人航空機(ドローン)の存在を忘れてはいけません(笑)。
先程書いたように重量199g以下のドローンは、登録制度の対象ではありません。つまり、登録しなくてOKです。
DJI Mavic Mini や トイドローンなどをお持ちの方は安心してください。
何の情報を登録するのか?
ドローン登録制度では8つの登録が必要になります。
国土交通省にある「航空法の改正」には…
第百三十一条の六
登録を受けていない無人航空機の登録は、所有者の申請により無人航空機登録原簿に 次に掲げる事項を記載し、かつ、登録記号を定め、これを無人航空機登録原簿に記載することによつて行う。
- 無人航空機の種類
- 無人航空機の型式
- 無人航空機の製造者
- 無人航空機の製造番号
- 所有者の氏名又は名称及び住所
- 登録の年月日
- 使用者の氏名又は名称及び住所
- 前各号に掲げるもののほか、国土交通省令で定める事項
まぁあ基本的なところですね。
無人航空機(ドローン)の製造番号(シリアルナンバー)から所有者・使用者の住所などです。
登録にあたっては、場合によっては写真提出が必要だったり、国土交通省が「この無人航空機は安全ではない」と判断した場合は登録不可にもなります。
登録をしたら何をするのか?
ドローン登録制度の運用の中で「登録の表示義務」があります。
(登録記号の表示等の義務)
第百三十一条の七
前条第一項の登録を受けた無人航空機(以下「登録無人航空機」という。)の所有者 は、同条第三項の規定により登録記号の通知を受けたときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく当該無人航空機に当該登録記号の表示その他の当該無人航空機の登録記号を識別するための措置を講じなければならない。
つまり、登録をしたら…
- 国土交通省から識別番号のシールが送られてくる
- ドローンに貼る
この表示義務をしなければ、登録したとしても後述する罰則規定になります。
登録の期間はどのくらいなのか?
一概に登録したとしても、一定期間しか効力はありません。
クルマの運転免許のように期間が設けられていて、その都度更新が必要です。
(登録の更新)
第百三十一条の八
第百三十一条の六第一項の登録は、三年以上五年以内において国土交通省令で定める 期間ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。
登録の効力は3年以上5年以内となっていますね。
更新を受けなければ効力がなくなります。未登録の無人航空機(ドローン)になるわけです。
ちなみに、登録情報が変更となった場合(所有者の住所変更や使用者の変更など)は、速やかに登録変更をおこなわなければなりません。
(登録事項の変更の届出)
第百三十一条の十
登録無人航空機の所有者(所有者の変更があつたときは、変更後の所有者)は、第百 三十一条の六第一項第五号、第七号又は第八号に掲げる事項に変更があつたときは、その事由があつた日から十五日以内に、その変更に係る事項を国土交通大臣に届け出なければならない。
登録変更のあった日から「15日以内」です。
登録の費用はいくらかかるのか?
登録料というのは、現段階では未決定なんですよね。
無料かもしれませんし、数千円が必要かもしれません。まだ公式発表がないため、なんとも言えませんね。
一応、手数料を納付できるように、今回の法改正に加えていますね。
(指定立替納付者による納付)
第百三十五条の二
国土交通大臣は、前条の規定により手数料を納付しようとする者(次項において「納 付予定者」という。)から、当該手数料を立て替えて納付する事務を適正かつ確実に遂行するに足りる財産的基礎を有することその他の国土交通省令で定める要件に該当する者として国土交通大臣が指定するもの(以下この条において「指定立替納付者」という。)をして当該手数料を立て替えて納付させることを希望する旨の申出があつた場合には、その申出を受けることが手数料の収納上有利と認められるときに限り、その申出を受けることができる。
事前に手数料の納付について法改正が入っているため、有料になるのは間違いありません。
今回のドローン登録制度によって、
- オンライン登録システムの構築
- ドローン飛行申請手続(DIPS)や飛行情報共有サービス(FISS)の連携
- ヘルプデスクの人員増
システム構築や既存システムとの連携、対応人員の増加にともって、莫大な費用がかかると容易に想像できます。
きっと数千万円~数億円はくだらないですね…。
ドローンにまったく関わらない日本国民の税金をここに費やすのは、ちゃんちゃらおかしいので、登録費用を徴収して少しでも負担を減らすのは当然ですね。
私の勝手な予想ですが、1台あたり登録料3000円前後が妥当ではないでしょうか。
登録をしないとどうなるのか?
重量200g以上の無人航空機(ドローン)を飛行しようとする場合は、どのような条件であっても必ず登録しなければなりません。
(登録の一般的効力)
第百三十一条の四
無人航空機は、無人航空機登録原簿に登録を受けたものでなければ、これを航空の用 に供してはならない。
登録をしていない場合には、航空の用、つまり飛行してはいけないと法律で定められます。
逆を言えば、「もう所有しているドローンは屋外で一切飛行させない」「屋内だけでドローンを飛行させる」という場合には、登録はしなくても法律違反にはなりません。
登録をしないで「クローゼットに眠りっぱなし」でも法律違反にならないので安心してください。ドローンが飛行する時に「登録済みのドローン」でなければならないだけですので。
未登録の無人航空機(ドローン)を飛行したときの罰則は?
未登録の無人航空機(ドローン)を、気づかずに登録しないまま飛行させてしまった場合の罰則も設けられています。
(無人航空機の飛行等に関する罪)
第百五十七条の四
第百三十一条の四の規定に違反して、無人航空機を航空の用に供したときは、その違 反行為をした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
罪として、懲役1年以下または罰金50万円以下に処する、とのこと。
懲役刑がつくのは、以前の航空法と比べると、ずっしり重くなりました。それだけ問題視されていると解釈できますね。
いつからドローン登録制度がスタートするのか?
この法案は2020年2月末に閣議決定されたばかりです。
当然ですが、登録用のシステム構築や登録するための告知等はできていません。2021年度とは言われていますが、もうしばらく時間が経過した際に国土交通省から発表があるものと思わます。
ただし、施行にあっての期限が設けられています。
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
ざっくりと2年以内ですね。
2022年までには運用開始しているのは間違いありません。
ドローン登録制度のメリット・デメリット
ここまでドローン登録制度の概要を説明してきました。
ドローン登録制度がスタートするにあたって、どのような影響があって、メリット・デメリットは何なのかを考えていきましょう。
登録制度のメリット
メリットは2つあると考えられます。
1つ目は、事件・事故の際に所有者の割り出しができること。
これによって現行犯ではない違反飛行を検挙できる可能性が出てきます。
例えばドローンがコントロール不能になってロストした場合。今までは、たとえば行方不明のドローンが家の窓にあたって破損。ただドローンの所有者が不明なため、家の住民は泣き寝入りするしかありません。
所有者が判明することで、事件・事故のほかにも損害賠償等の請求がしやすくなると考えられます。
またメリットの2つ目として、一定の抑止力が出ることです。
今まではドローンに対して軽視されがちで、ご高齢者が法的な知識がないまま、無謀にドローンを飛行させてしまうことがありました。
ドローンはラジコンおもちゃではなく、人を傷つける危険なシロモノです。
何も知識がないまま、何も安全対策がないまま、勢いだけでドローンを飛ばしてしまって衝突やロストを引き起こす。
法律を知らずに飛ばしてしまう一定層の人数はいるのは仕方ありませんが、多少なりとも「ドローンは知識がないとだめだ」という抑止力になるかもしれません。(そもそも法律を知らないから登録制度も知らない可能性が高いですが)
登録制度のデメリット
デメリットも2つ考えられますね。
1つ目は、登録の手間や変更忘れなど登録にまつわる手続きの管理です。
登録申請といった作業に慣れていない場合には手間かもしれません。一回登録したとしても、それをずっと継続できると思ってしまうのは早計です。
引っ越しをすれば住所変更の申請をおこなう、電話番号が変わるのなら申請を行う。所有者や使用者が変わるのなら、その都度申請をおこなう。
今まで何も登録制度がなかったところから考えると、管理を手間と思う人はきっといますね。
2つ目は、登録制度の周知させる労力です。
新たにドローン登録制度が設けられたとしても、日本国民が知っていなければ運用できません。
「ドローン登録制度?なにそれ、美味しいの?」とならないように徹底的な周知が必要不可欠です。ひっそりと運用スタートされていて、いきなり未登録だから罰金刑、というのは今の世の中、国民反感を買いやすいですからね…。
ただでさえ、ドローン飛行情報共有システムの義務化が知れ渡っていない昨今、今回のドローン登録制度の認知は、非常に高いハードルだと考えられます。
登録制度の対象外である重量199gのドローンを所有する
「なんだか、いろいろ面倒くさい」
そう思ったかたは、今から重量200g未満のドローンを所有したほうが、何も考えなくてもいいので安心ですね、もう。
ドローン登録制度は既定路線に乗っかっています。絶対に施行されます。
未来が分かっている分、たとえば DJI Mavic Mini のような重量199gのドローンを手にしたほうが、ぜんぜん気が楽ですね。
https://www.drone-enterprise.com/blog/7285
ドローン登録制度の先にある未来とは…
ドローン登録制度に踏み切ったのは、ある程度は評価すべきだと思っています。
人によっては…
- ドローンは規制ばっかりでつまらない
- 面倒なことを増やすな
- どこかのドローン団体の利権だろう
というマイナスな意見は一定数は出てくるだろうと考えられます。
しかし、航空法が改正されてから4年くらいでしょうか、その間に起こった事故や事件を考えると、現段階での運用ベースでは「ひとや物件の安全を確保できない」と判断されたのでしょう。
これから増加していく事件や事故を未然に防ぐためにも、ドローン登録制度が施行されます。
個人的な印象ですが、このドローン登録制度の導入は世界から見ると「やや遅めの対応」です。
先進国のアメリカでは、数年前から登録制度は実施されており、さらに飛行追跡の規制案も発表しています。
米連邦航空局(FAA)は26日、米国の領空を飛行するFAA登録の全てのドローンを対象に、飛行位置と識別情報の発信を義務付ける規制案を発表した。次世代の輸送手段としても注目を集めるドローンは、FAAに150万機近くが登録。一方でテロに使われる危険性も指摘され、対策を求める声が出ていた。
飛行する前に、飛行位置と識別番号を発信して、すべてのドローンの飛行追跡ができるようになるわけです。
つまるところ、日本は後手後手な対策だったりします。
一定数のひとは「ドローン登録制度はやめてくれ」とは言うかもしれませんが、世界からするとごく自然な方向性であって、むしろ「関空で被害があっているのに、なぜ早く施行しないだ」という有識者の声のほうが強い気がします。
登録制度の運用によって得られる成果は本当にあるのか?
もう一歩、踏み込んで考えてみましょう。
この登録制度が運用されるにあたって、国土交通省では目標値(KPI)を掲げています。
【目標・効果】
無人航空機の飛行の安全を確保する。
(KPI)登録無人航空機の事故等の発生率※ :登録制度導入(2021年度)から2023年度までに半減
※登録無人航空機1万台当たりの事故等の発生件数
事故発生率をKPIとして、2021年度から2023年度の2年間で半減させるということです。
例えて言うのなら…
- 2021年:登録台数1万台のうち事故発生500件 → 事故率5%
- 2023年:登録台数5万台のうち事故発生1250件 → 事故率2.5%
このようにドローン登録制度によって、登録台数のうちに発生する事故数が半減するのが目標値とのこと。
確かにドローン登録制度によって「ドローン登録するけど、飛行させるの面倒くさい」という抑止力が生まれたり、ドローン操縦者がより一層事故をしないように気をつけたりするかもしれません。
ただ、このドローン登録制度によって
無人航空機の飛行の安全を確保する。
というのが、どうしてもパンチ不足な気がしてなりません。
だって今までと違うのは登録するだけだから、ドローン操縦者の「知識」「技量」は何も変わっていません。
事故という観点で見た際に、登録しているか否かはそこまで関係なく、むしろ「知識」「技量」の有無によって事故に直結しやすいと、現場にいる私は感じます。
もし仮に、航空法で求められている
航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全
を目的とするのなら、ドローン登録制度だけではなく、
- ドローン登録時にオンライン上で航空法の確認(チェック)をさせる
- レクレーションパイロットと商用パイロットの2段階制にする
- 商用パイロットは一定の認定テストを受ける
- 航空法で飛行禁止エリア・飛行禁止方法で飛行許可を得るには商用パイロットのみにする
- ドローン飛行時に、スマートフォンアプリでマップチェック・登録をする
このくらいに大なたを降った大胆な方法を取らないと、安全の確保は改善できないのではないでしょうか。
ドローン運用上のわかりやすさと安全性を両立する。KPIとして出している成果のために、さらなる有効的な仕組みを設ける。
すでにドローン登録制度だけの運用として法案が通っているため、路線を変えるのはほぼ無理だと思います。
ただ、法案は大枠を決めているだけであって、多少のあそび(誤差の許容範囲)の中で、国土交通省航空局内で細かい運用方法をガツガツと決めていってほしいです。
あとがき
ドローン登録制度が正式に決定しました。
無事に運用されること、周知されていることを切に願っています。