2022年度航空法改正、ドローン操縦の「ライセンス化」「規制強化」とは?レベル4飛行に向けた未来は?

2022年度航空法改正、ドローン操縦の「ライセンス化」「規制強化」とは?レベル4飛行に向けた未来は?

こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。

航空法の一部改正する法律案が決定しました。

2022年度を目処に、今までのドローンに関わる航空法が大きく変更されます。目玉になるのが「ライセンス化」と「規制強化」です。

では、なぜ航空法の一部を改正するのか?

その目的となるレベル4飛行やカテゴリ3とは何なのか?

今回のブログ記事では…

  • 航空法の一部改正は何なのか?何が変わるのか?
  • なぜライセンス化と規制強化をおこなうのか?
  • 2022年度以降は、ドローンユーザー別にどう対応すればいいのか?

この3点を中心に「2022年に大きく変更されるドローン操縦と最大の注意点」について説明していきます。

この記事を読むと「今度ドローンをどう扱えばいいのか」が分かりますので、長めの記事ですが最後までご覧ください。

※法改正は決定事項ですが具体案は調整中で、検討委員会の中間報告内容を含んでおります

航空法改正によるドローン操縦の「ライセンス化」「規制強化」とは?

2022年度を目処に、航空法が一部改正されることが決定しました。

ざっくりと改正内容を要約すると「ライセンス化」「規制強化」の2つが軸になります。

具体的に大きな変更点を羅列すると…

  • 国交省が認定した民間機関で「身体検査」「技能・知識検査」をおこなう
  • 合格した場合は「一等無人航空機操縦士」「二等無人航空機操縦士」のライセンスを得る
  • 各ライセンスでは、定められたカテゴリ内で特別な飛行許可を得る
  • ドローンの機体・形式認証制度が導入され、安全性によって「第一種機体認証」等の区分になる
  • 「第三者の上空」が法的に組み入れられ「立入管理措置」の有無が明確化される
  • 飛行事故の報告、飛行日誌の記録が義務化される など

…とここまで書いてきましたが、めまいがしてきそうですね。これでも簡略したつもりです(笑

そもそも、なぜ、法改正をおこなうのかというと、目的は「ドローン宅配等の産業拡大」のためです。

その大義名分のために数年がかりで法改正を進めていますが、制度化されると全般的にドローンの飛行にあたって複雑されて混乱しますね。

この変更点について、できる限りクリアになるのように順を追って説明していきます。

航空法の一部改正は何なのか?何が変わるのか?

冒頭でも記載したとおり「ライセンス化」「規制強化」がメインとなります。

一覧表を図にしてみると…

dronecategory_v202205(クリックすれば拡大できます)

カテゴリを新設して、各カテゴリごとに操縦者ライセンスやドローン機体承認の必要・不要など変更となります。

  • ライセンス化・・・操縦者ライセンス+機体承認
  • 規制強化・・・第三者の立入管理措置の有無

と理解すると、ざっくり全体像が見えやすくなってきます。

では、この2つをそれぞれ分解して説明しますね。

ドローン操縦のライセンス化

各カテゴリごとに飛行可能な内容が異なり「カテゴリ3」「カテゴリ2」についてはドローン操縦者にライセンスが必要となります。

  • カテゴリ3・・・第三者の上空を飛行(=立入管理措置をしない)
  • カテゴリ2・・・第三者の上空を飛行しない(=立入管理措置をする)

特にカテゴリ2では、現行のドローン制度に似ており、包括申請のように一定の許可を得るのと同様に操縦者ライセンスがあれば許可が不要になります。

そしてライセンスというのは、ドローンを操縦するのに必要な技能(知識や能力)を有することを証明するために

  • 国が学科試験・実地試験をおこなう
  • 身体状態(視力・聴力・運動能力、16歳以上等)の検査をおこなう

この2つをクリアした場合に、操縦ライセンスを得られます。

今回の法改正の要綱にも記載があって…

五 無人航空機操縦者技能証明制度の創設

国土交通大臣は、申請により、無人航空機を飛行させるのに必要な技能に関し、一等無人航空機操縦士又は二等無人航空機操縦士の資格の区分に応じ、無人航空機操縦者技能証明(以下「技能証明」 という。)を行うものとし、申請者に無人航空機操縦者技能証明書(以下「技能証明書」という。) を交付するものとすること。(第百三十二条の四十から第百三十二条の四十二まで関係)

「一等無人航空機操縦士」「二等無人航空機操縦士」の技能証明の資格(ライセンス)が新設されます。

では「どうすればライセンスを取れるの?」という疑問に、現在検討されている方法でのライセンスを取得する手順を説明します。

01.指定試験機関(国が指定する民間機関)に行く

まずは学科試験と身体状態の検査です。

国が指定する民間会社、公平性を保つために「全国で1社だけ」選定されて、指定試験機関が運営されます。

もちろんまだ指定試験機関は選ばれていませんが、全国で1社だけとなると、ある程度の規模を持っている民間企業ではないと混乱が起きてしまうかもですね。

ここでは学科試験の他に、身体状態の検査として

  • 視力&色覚
  • 聴力
  • 運動能力
  • アルコール中毒の有無など

安全にドローンを飛行できるかどうかも測られます。ここで引っかかると、ライセンスを取れません。

02.登録講習機関(国が指定する民間機関)に行く

次に実地試験です。

現存するドローンスクールといった民間企業のリソースを有効活用して、国が指定する民間機関に「登録講習」をおこなうこととなっています。

実地試験の試験会場にする、という話ですね。

ここをクリアするのは方法は2つで

  • 国が定めた一定水準を確保した講習内容を「スクール入校して合格する」
  • 試験日で「一発合格する」

このどちらかになります。

簡単な話ですが、クルマの免許取得と同様に、教習所で実地試験をクリアするのか、それとも試験会場で一発合格を目指すのか、です。

なお、現存する民間資格(ドローンスクール独自の資格)は、今回適用外になるので、ライセンス制度がスタートしたら再試験が必要なのは当たり前ですね。

03.ライセンスの取得

01~02をクリアすることで「一等無人航空機操縦士」「二等無人航空機操縦士」のライセンスを取得可能です。

  • 一等無人航空機操縦士:カテゴリ3で飛行可能(主にドローン宅配等の産業用)
  • 二等無人航空機操縦士:カテゴリ2で飛行可能(一般的なドローン飛行用)

登録期間は3年間で、ライセンスの更新時には再度01+02をクリアすることとなっています。

ドローン機体承認制度の導入

操縦者のライセンス化の他に、ドローン側にも「機体承認制度」が導入されます。

「このドローンはキチンとしたものなのか?」「もしもの際には安全管理が成されるのか?」

そういったドローンの強度だったり、構造・性能について、国が定める安全基準に適合するのかどうかをチェックし、適合した場合には「機体認証」や「形式認証」を受けられます。

  • 機体認証:自作ドローンや産業開発中のドローンなどが対象となりえる
  • 形式認証:製造メーカー(DJI等)が申請をおこなうなど市販ドローンが対象となりえる

このどちらかをクリアすれば問題ありませんので、一般的には後者である「形式認証」を得られたドローンを使用することとなります。

「機体認証」や「形式認証」の中でもランク分けされていて

  • 第三者の上空を飛行する :第一種機体認証 or 第一種形式認証
  • 第三者の上空を飛行しない:第二種機体認証 or 第二種機体認証

第三者の上空を飛行するか否かによって第一種と第二種に分けられます。

この第一種に該当するのはドローン宅配といった産業用ですので、基本的には第二種が多くなると思われます。

ドローン飛行の規制強化(立入管理措置)

今回の法改正によって「第三者に対する立入管理措置」が明確されました。

この立入管理措置の有無がカテゴリ3とカテゴリ2の区分分けになるためです。

カテゴリ3は立入管理措置をしない

その代わりに高度な機体承認+高度な操縦ライセンスをクリアしなければなりません。(第一種機体および一等無人航空機操縦士で飛行可能)

カテゴリ2は立入管理措置をする

その代わりにカテゴリ3と比べて標準的な機体承認や操縦ライセンスで飛行OKとなっています。

立入管理措置とは何なのか?

「さっきから立入管理措置っていうけど、それは何?」と思いますよね。

国土交通省から出ている法改正の要綱には

立入管理措置(無人航空機の飛行経路下において無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者以外の者の立入りを管理する措置であって国土交通省令で定めるものをいう)

と記載があります。

飛行経路下に第三者が立ち入ることのないように、補助者や関係者を配置して、第三者に対して立入管理をおこなう、ということです。

つまり、もっと分かりやすく言うと

  • 絶対に第三者の上空は飛ばせない
  • 飛行経路に補助者を配置する
  • 第三者が通行および存在する上空は飛行できない

というわけで、これらの立入管理措置をおこなわない場合は、法律的に違反となります。

なぜなら、第三者の上空の飛行や立入管理措置をおこなわない場合には「第一種機体認証」および「一等無人航空機操縦士」による飛行であって、事前に飛行計画等による国土交通省の個別許可を得なければならないためです。

言い換えてみれば、二等無人航空機操縦士や操縦ライセンスなしの操縦では、立入管理措置のない飛行は一切できません。

如何に「立入管理措置」を設けるかがドローン飛行において重要になってきます。

なぜライセンス化と規制強化をおこなうのか?

ここまで大きな変更や制度化をするのには、何かしらの理由があると思いますよね。

国土交通省航空局の報道発表資料に記載があって

ドローンなどの無人航空機に関し、2022年度を目途に、「有人地帯上空での補助者なし目視外飛行」、いわゆる「レベル4飛行」を実現することが政府目標となっており、都市部上空での荷物輸送など無人航空機の更なる利活用が期待されている。

国土交通省「航空法等の一部を改正する法律案を閣議決定」より

要約すると「都市部でのドローン宅配を実現する」ためです。

日本は急激な高齢化社会、人口減によって労働力が損なわれ、その一部を機械化することが社会の解決につながると考えられています。

  • トラックで山道を数時間進んだ先にある過疎地域
  • 週に数便とアクセスが良くない離島

これらの場所での物流の一部をドローン宅配等に代替していき、さらに

  • 人口の多い都市部

でもドローン宅配を実現して「人々の生活を豊かにする」「労働力を確保する」ために、今回、法改正をおこなったのが背景です。

レベル4飛行に向けた未来のために

国土交通省の資料にも「レベル4」飛行という言葉がありましたが、現在の航空法では

  • 人口集中地区での目視外飛行
  • 目視外飛行で補助者による飛行経路下の安全管理(第三者の上空を飛行しない)

この組み合わせの飛行は認められていません。

そもそも飛行レベルというのは…

  • レベル1・・・目視内飛行+人口集中地区 or 無人帯(山間部等)
  • レベル2・・・目視内飛行+人口集中地区 or 無人帯(山間部等)+自律飛行
  • レベル3・・・目視外飛行+無人帯(山間部等)
  • レベル4・・・目視外飛行+人口集中地区(補助者なし)

といった、飛行方法によってレベル差があって、簡単に言うと「レベルが上がるにつれて危険度が増す」ことです。

現在はレベル3までなので、ドローン宅配は山間部などの無人帯でOKとされています。

ただ、これを有人帯でおこなうとすると、宅配する経路下に何百人の補助者を配置しなければならなく、ドローン宅配では非合理的です。

レベル4を可能にするために、人口集中地区であっても、立入管理措置をしなくてもドローンを飛行できるように、一定条件をクリアしたドローンや操縦者に許可を出す(ライセンス化)をするわけですね。

国土交通省航空局には「個別審査数を減らしたい」意図もある

もう一つの裏背景として、国土交通省航空局は、現在の個別審査の件数を減らしたい思惑があります。

現行の個別審査の手続きの合理化・簡略化を図ることにより、無人航空機の利活用全般の拡大を図る。

KPI:飛行毎の個別審査件数について制度導入(2022年度)から5年間で半減(参考:2019年度3万8000件)

国土交通省航空局「航空法等の一部を改正する法律案 概要」より

今現在、ドローンの申請は個別審査をおこなっており、令和2年度では1年間で6万件を対応しているとのことです。

今回のライセンス化によってカテゴリ2(二等無人航空機操縦士・第二種機体認証)であれば、国土交通省の許可承認はなくても飛行可能となることから、審査数を減らせる見込みがあるようです。

KPIでは5年間で半減させるとのことですが、いかにライセンス取得者を増加させるかにかかっていますね。

2022年度以降は、ドローンユーザー別にどう対応すればいいのか?

「ライセンス化になるけど、今度、どうすればいいの?」そう不安になると思います。

まだ制度化で未決定の箇所もありますが、現状の情報の中で「こうすればいいのでは!?」という個人的な指針を記します。

ドローン操縦が本業であるひと

生業としてドローン操縦をメインでおこなっているひとは、二等無人航空機操縦士以上は取得したほうが無難です。

現行のように個別審査でも申請は可能ですが、許可されない飛行方法(150m以上やイベント)があること、また国家的な資格のため「箔がつく」のもメリットです。

またドローン宅配やそれに付随する産業等にかかわる操縦者なら、一等無人航空機操縦士は業務的に必要不可欠です。

本業以外でサブ的に操縦しているひと

本業が別にあって「たまに業務で使用する」程度のひとは、今回の制度化は複雑になるので知識を入れなければなりません。

特に「立入管理措置」を徹底させる必要があるため、生半可な情報や知識だけでは、通用しなくなってきます。知識を入れるのも面倒ですし。

ここまで書いてきたブログの内容や国土交通省から出されている航空法改正の要綱を理解できるのなら大丈夫かと思いますが、「何言っているのかわからない」状態なら、むやみにドローン飛行させるのは危険ですね。

※「おいおい、ポジジョントークじゃあねーかー」と思うかもしれませんが、法律が絡んでいるので、マジで深い理解が必要になってきます。今回のは複雑です…、知らないで飛ばすと違法=犯罪になる可能性が高いです…

趣味でドローンを飛ばすひと

DID以外や30m以上、目視内飛行など現行ルールから禁止されていない飛行方法でドローンを飛行したほうが気が楽になると思います。

これなら、今まで以上に知識は不要ですし、違反することもないですから。

ドローンスクールに煽られて「ライセンスを取らなきゃならない!」と勘違いされないように十分に気を引き締めてくださいね。趣味なら取得しても不要です。

2022年の航空法改正は、よりドローンの利活用が進む

まとめです。

2022年に法改正によって「ライセンス化」「規制強化」が決定しました。

理由はドローン宅配等の産業を拡大させ、日本にある社会的問題の解決につなげるためです。

特に「立入管理措置」が明確になったことで、より一層ドローン飛行の安全を強化されると思われます。

  • ドローン飛行による第三者への安全面を担保する
  • ドローン宅配等の産業で社会問題の解決につなげる
  • 現行制度を生かしつつ、混乱を招かないギリギリのラインで着地している

そういう点で、うまい具合の折衷案だと感じました。

多少なりとも複雑化はしますが、これに付いていける人、付いていけない人、は分かれるような気がします。

今回の法改正で、より安全に、よりドローンの利活用が進むと期待されます。

あとがき

今までのドローンの飛行制度の歪みが、多少なりとも是正されるような気がします。ずっと問題を抱えていたと感じていたので。

あと、ライセンス化によって民間企業のツルハシビジネスとして悪用されて、「ライセンスは駄目だね」と悪評が付きまとわないよう、過去と同じ轍を踏んでほしくないですね。

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