こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
ドローンによる事件により2016年12月に航空法が改正され、無人航空機の飛行に法律的な制限が加わりました。
あれから早3年。その間にちょこちょことは改正されて、微調整を繰り返しています。
そして2019年、新たに改正案が検討されることに。
今までモラル的なところで「それ、やらないでしょ」と思っていたところが、事故増加に伴って「罰則にするよ」となりそうです。
タイトルに書いてあるように、飲酒後のドローン操縦や航空機との接触予防など、すべてのドローン操縦にかかわる罰則付きの航空法改正案です。
このページに書いてあること
酒酔いドローン操縦など禁止へ。罰則付きの航空法改正案が検討される
航空法に新しい改正案が検討されています。
この時期に何事だ?と思うかもしれませんが、ざっくりというと…
- ドローンの事故が多発している
- 事前点検や他航空機との衝突予防、飲酒後の操縦などを禁止
- モラルある操縦者にとっては当たり前の内容なので、今までとほとんど変わらない
という話です。
当たり前のことが明文化されて「罰則をつけるよ」という話ですね。
ドローンによる事故が多発中
ドローンは日増しに保有台数が増加していますね。日本全国で十数万台あると言われています。
ドローンの台数が増えれば、比例して増加するのは「事故」です。
国土交通省ではドローンによる事故を一覧にして公表しています。※報告があった事故のみ
ドローンの事故やトラブルについて、国交省は15年12月から件数を集計していいる。
それによると、けが人が出た事故は6件、建物や車などの物損事故は13件。旅客機やドクターヘリなど、一般の航空機に異常接近した事例も9件あった。
高速道路への落下のほか、墜落、炎上して周囲の草に延焼した例など、大事故につながりかねないケースもあった。
ただ、集計の基になる操縦者の報告は任意で、実際はさらに多く発生している可能性がある。
ざっくりと3年間で180件の報告がありました。
実際には報告をしていない場合が圧倒的に多いと思われるため、数倍~数十倍は事故がありそうです。
今回の航空法改正案の1つに取り上げられているのが、他航空機との接触の危険性です。
国土交通省の報告一覧を見てみると、信じられない事故トラブル報告がありました。
発生:2018/4/6
場所:千葉県白井市 (高度4000ft付近)
事案内容:平成30年4月6日10時10分頃、東京国際空港に着陸進入中のJAL304便が、千葉県白井市 高度約4000ft付近において無人航空機らしき物体が高度差約10m飛行しているのを視認した。無人航空機らしき物体は、黒色で直径約 2m 程度とのことであった。
高度4000ft付近で無人航空機らしき直径2mの黒い物体と、高度差10mで飛行してたとのこと。
もう少しわかりやすくかくと、羽田空港に着陸しようとしていたJAL機が無人航空機らしき物体を発見。その高度4000ft = 1219mです。JAL機との高度差は10m。
千葉県白井市というのは成田空港と羽田空港の中間くらいです(どっちかというと成田に近い)。
そのような飛行機の通り道で約1220mの高度で無人航空機らしきものを飛行、高度差は10m。もし飛行機のエンジンに突っ込んでいたから、乗客の命も危うくなり、緊急事態になるのは容易に想像できますね。
いや、この黒い物体(直径2m)がUFOだったというオチだったなら良いのですが…。
その他にも…
・趣味のため無人航空機を飛行させていたところ、突如機体が制御不能となり、墜落した。
・山間部での設備点検のため無人航空機を飛行させていたところ、操縦が不能となり、無人航空機を紛失した。
・趣味のため無人航空機を飛行させていたところ、突如機体が制御不能となり、民家の屋根に墜落した。
・無人航空機を飛行させていたところ、強風により操縦不能となり、無人航空機を紛失した。
このような「墜落」「操縦不能」「制御不能」「紛失」などの事故トラブルが列挙されています。
その事故のほとんどが、ドローン自体の故障ではなく、墜落起因は操縦者だと思っています。無理な飛行方法、安全点検、操縦前チェックなどは人間が判断でできますからね。
新たに航空法改正案を進める
このような事故やトラブルの増加によって、より安全面を強化するために、現国会で航空法の改正案が進められることになりました。
政府は事故対策を急ぐ必要があるとして、飛行前点検の義務化などを内容とする罰則付きの航空法改正案を開会中の通常国会に提出する方針を固めた。
ニュース記事に挙げられている事項は下記です。
- 操縦者に対して飛行前点検や気象状況の確認
- 飛行機との衝突予防
- 急降下など他人に迷惑を及ぼす行為
- 飲酒後の操縦を禁止
- 事故発生時に、国が操縦者の聞き取りや立ち入り調査
上記を守らない場合には罰則されるというわけです。
ここから先は想像の域ですが、いくつか話を広げてみますね。
「飛行前点検・気象状況の確認」というのは義務化させるのは、かなり難しいそうな気がしました。なぜなら、点検方法も気象状況の確認の手段を一般的に多くの方は知らないからです。
ドローンメーカーのマニュアル内にある数ページに、点検内容が記載されていますが、飛行前にマニュアルを取り出してすべての人がチェックするようなイメージはつきにくいですね。(そもそもマニュアルを持ち歩いているひとは少ないですし)
クルマには車検のほかに「法定点検」というのが義務化されています。「え?なにそれ」と思う人が大多数だと思います。そのくらい義務としたとしても形骸化してしまうような…。
例えば飛行する前に、モニターにチェック項目が並べてあって「プロペラは正しく付いていますか?」などを1つずつチェックすると離陸できる…のような仕組みをメーカー側がつくったほうが現実的かもしれません。
飲酒後の操縦禁止は、昨今の「航空機パイロットの飲酒、飛行機欠航」に準ずるものがありますね(笑。お酒を飲むと、気が大きくなってしまうので、無理な操縦になりがちなのは否めません。
たとえば「もっと遠くに飛ばしてみよう」「高度のリミットを取ってしまおう」など。また危険を感じるなど咄嗟の判断力が鈍ります。飲酒をしたら、クルマを運転しない、ドローンを操縦しない、飛行機も操縦しない、です。
少し意外に感じたのが「事故発生時に、国が操縦者の聞き取りや立ち入り調査」です。
今までは刑法として警察だけが動いていたと思われます。大きな事故(例:大垣のイベント墜落事故)は、国土交通省大阪航空局も動いていましたが。
でも、今後は事故発生時に、国土交通省が聞き取りや立ち入り調査をおこなえる権限を付与するというわけです。より詳細な実態調査をおこない、今後の法整備や安全運行の方法を模索すべく、事故原因を掴んで今後の材料にしたいと考えられます。
航空法が改正されて、さらに時代に合わせて法律の精度を上げていくのではないでしょうか。
航空法改正案で、操縦者にとって何が変わるのか?
今回検討されている航空法改正案では、きっとモラルのある操縦者にとっては、今までと変わりながないと推測できます。
なぜなら、飛行前の点検も、No飲酒も、航空機(ヘリコプター含む)の衝突予防などは、普段からおこなっていると思うからです。
当たり前のことが、当たり前になって法律に明記されるようなになっただけでしょうか。(現時点での改正案の情報のみですが)
少なくとも、すでに国土交通省のWEBサイトにある飛行ガイドラインには、すべて記載済みの内容ですからね。
参考:無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン
もしモラルがなくて適当にホイホイとドローンを飛行させている操縦者の方にとっては、「あー、BBQのときに酒を飲んでドローンを飛ばすのが楽しみだったのにー」と残念になるかもしれません。
基本的には、安全面を考えているほとんどの人にとっては、例えば今回で免許制になるという話では無いので、影響は少ないかと思います。
ただし、今後、事故やトラブルが増加すれば、法律が厳しくなるのは必然です。すでに今回の改正案でも、徐々に厳しくしている1歩ですから。
あとがき
ドローンは100%安全ではなく、無法地帯化が懸念されているため、法整備をしていくのはやむを得ないですね。
たぶんドローンメーカー側でも制御できる部分は、法整備の前に制御していくのもありかもしれません。
例えば風速がある場合には自動的に低空まで高度を下げたり、高度150m未満までしか飛行できないようにセッティングしたり(空港事務所の許可取得時に一定解除可)。
そういえば、2年前くらいにニュース記事になっていた、
- 機体番号とGPSを組み合わせて、許可のないドローンは規制内で飛行不可になる
- 許可を得た場合には、システム側で解除されて飛行可になる
はどうなんたんですかね。これが一番現実的だと思っていました。