こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
「ドローンが飛んでいるなぁ~っと思ったら、パラグライダーと接触したんですよ」
先日、パラグライダークラブの方かたら、そのような話を聞いて危険飛行を行うドローン操縦者に憤りを感じてしまいました。
「一歩間違えば死亡事故になった」と容易に想像できるからです。
そこで今回のブログ記事では…
- パラグライダーにとってドローンはなぜ危険物体なのか?
- パラグライダーとドローンの接触事故の詳細は?
- ドローン飛行中にパラグライダーを見つけたらどうすればいいのか?
この3点を中心に「パラグライダーの人命に関わるドローン飛行」について情報シェアします。
今回シビアな言い回しになりますが、理解を深めてほしいですね。事故が起きてからでは遅いですから。
このページに書いてあること
パラグライダーとドローンの接触事故あり!人命に関わる危険飛行はNG
最初に結論です。
パラグライダーが飛んでいた場合、そのエリアでドローン飛行させるのは止めましょう。
いとも簡単に接触事故、つまり人命にかかわる事故が起きます。
- マップ上でパラグライダーのテイクオフ場がある
- 上空にパラグライダーが見える
- 興味本位でパラグライダーをドローン撮影する
このようなケースでは、ドローン飛行を絶対的に自重してください。パラグライダーとドローンはあまりにも相性がよくありません。
先日、パラグライダーとドローンの接触事故があったと、そのパラグライダークラブの方から話を聞きました。
幸いにも大事故にはならなかったのですが、驚くべきことは、まったく無関係のドローン操縦者だったことです。
なぜパラグライダーが危険にさらされるのか、接触事故はどう起きたのか、などドローン操縦者向けに順を追って説明します。
パラグライダーにとってドローンはなぜ危険物体なのか?
まずは、パラグライダーの構造についてです。
パラグライダーは、大雑把に説明すると、2枚のナイロンの生地を袋状に縫い合わせたものに、風の吹いてくる正面に構えるかたちで、空気を中に取り込む事によって翼型が保たれ、飛ぶ事が出来ます。
ものすごい簡単に言うと、パラグライダーは
- 薄い生地
- ライン
で、できています。
「薄い生地」で空気を取り込みながら揚力を得て、「ライン」がハーネス(操縦席)をつなぎ、「ラインの一部」の操縦桿で上下左右をコントールします。
パラグライダーにとって「生地」と「ライン」がすべてであり、この2つのどちらかに致命的な事象が起きると飛行が保てません。
ここまで記載すれば、ドローンを操縦しているひとなら容易に想像ができるのではないでしょうか?
- ドローンのプロペラによって「生地」を切り裂く
- ドローンのプロペラ(モーター)によってラインが絡まる
つまり、ドローンがパラグライダーに接触しただけで、パラグライダーの揚力を奪ったり、コントロール不能になったりします。
特に想定できるのが複数のラインにプロペラが絡まり、パラグライダーの翼(生地)を折りたたんでしまうことです。(ドローンは接触したとしても、モーターは回り続けるため、どんどんとラインを絡めていきます)
ドローンには人間は乗っていなくて安全な地上にいるだけですが、パラグライダーには生身の人間が乗っています。
地上の数十m~数百mから落下すれば、当然ですが人命が絶たれます。
非常用のパラシュートを使用したとしても、深い森に落ちるわけで、救助は困難ですし、着陸時に骨折等もします。
パラグライダーとドローンと接触したら、危険だということは理解できたでしょうか。
ドローンの操縦者目線で「パラグライダーとの飛行が危険」なこと
私自身、実際にパラグライダーのドローン撮影をおこなった経験があります。もちろん関係者から依頼を受けてです。
ドローン操縦者の目線から「パラグライダーとの飛行は危険」であるのは以下の理由です。
- パラグライダーには人物が乗っている
- 衝突・接触したらパラグライダーは容易に墜落する
- パラグライダーの速度は30km/h~40km/h、ブレーキや減速は不可
- 180度の急旋回が可能
- パラグライダーは縦・横に20m前後の大きさになる
- 上昇気流やカレントによって急浮上する
- レシーバーはあるがパラグライダーとコンタクトしにくい
- パラグライダーからドローンは見えにくい(どこにいるか分かりにくい)
パラグライダーと事前のコミュニケーションは必要ですし、お互いの距離感、空域の状況把握などしなくてはなりません。
もし複数のパラグライダーが飛んでいたら、3次元の空間の中で、どこから時速30km~40kmで飛んでくるのかわからないですから。
安全にドローンを飛行させるには、相当な能力が必要であると断言できます。
パラグライダーとドローンの接触事故の詳細は?
ドローンとの接触事故があったパラグライダークラブの関係者から、直接話を聞くことができました。
01.ドローンが飛んでいるのを発見
パラグライダーはテイクオフの場所に管理者がいるのですが、その方が「上空にドローンが飛んでいいて危ないな」と思ったとのこと。
もちろんドローンの操縦者は不明、クラブとは未関係者。
02.パラグライダーとドローンが接触
飛行していたパラグライダーにドローンが急接近して接触。
パラグライダーの帆の部分にプロペラが当たり、数十cmにわたって切れ込みを入れる。
「パラグライダーの操縦者は、何かと当たった、と感触があったと聞いた。切れたのは数十cm程度で済んだから、他の空気孔で揚力を得られた」
幸いなことに接触した場所がよかったので墜落することなく、安全に着陸ポイントに着陸。
03.ドローン操縦者を見つける
ドローンが飛んでいく方向を確認したところ、パラグライダーのテイクオフの場所より、さらに上部にいることが判明。
そこにつながる山道は一本道だったため、「道路で待ち伏せしているとドローン操縦者がクルマで降りてきたので確保できました」とのこと。
「完全に趣味でドローンを飛ばしている素人でした」と。
おおよそパラグライダーの修理代金を弁償すること、またパラグライダー協会にも報告したとのことです。
【考察】そのドローン操縦者の心理は何だったのか?
ここからは勝手な考察です。
ドローン操縦者にとっても「人がいない山奥でドローンを飛行させる」という心理は働きやすく、かつ、この接触事故があったエリアは景色が良いです。
考えられるのは2つです。
- 「景色を撮りたいから山奥まで来たけれど、パラグライダーが飛んでいる。でも、せっかく来たのだから、ドローンを飛行して撮影しちゃおう」
- 「Youtubeでパラグライダーのドローンの映像がキレイだった。ここではパラグライダーが飛んでいるのは知っている。勝手に被写体にして撮ろう」
ドローンの離発着ポイントと、パラグライダーの離陸ポイントでは約600mの直線距離があります。
もし景色だけを撮るのなら、ドローンをその距離まで飛行させることは考えにくいですよね。ドローンを上昇・下降するだけで、まあまあ撮れますから。
そう考えると「パラグライダーを撮りに来た」と考えるのが自然です。しかも無関係者でありながら、パラグライダーにとって危険であることの想像力を欠けた状態で。
「なにか動いているものを撮りたい」と思ってパラグライダーを被写体にするのは、厳しい言い方になりますが、あまりにもモラルがなく、人命軽視しています。
【考察】ドローン操縦者側にどのような非があるのか?
パラグライダークラブ側は「弁償」と「協会に報告」で対処したとのことでした。
ただ私のようなドローンに詳しい人間だったら、もう一歩踏み込んでいたかもしれません。
航空法的には、600m以上離れているため「目視外飛行」の禁止飛行に該当しますし、第三者に接触することは「30m以内の飛行」の禁止飛行にも該当します。
さらに言えば、無関係者による人命にかかわる接触事故のため、警察に通報すれば、刑事事件に発展する可能性もありそうです。
何にしても大きな代償を払うことになります。
ドローン飛行中にパラグライダーを見つけたらどうすればいいのか?
もし、ドローンを飛行している最中に、パラグライダーの飛行を見つけた場合にはどうすればいいでしょうか?
答えは1つ。
ドローンの飛行を止めましょう。
これだけです。
パラグライダーの飛行エリアは大まかに決まっている
グーグルマップ等でパラグライダーの離陸ポイントだったり、パラグライダーのクラブがあったり、簡単に調べられます。
「近くにパラグライダーの離陸ポイントがある」と分かれば、そのエリアでドローンを飛行するのは止めるのが重要です。
パラグライダーに知り合いがいて趣味でドローンで撮りたい
これも止めましょう。
前述した通り、パラグライダーのドローン撮影は、操縦レベルや空間認識力、危機管理ができないと難しいと思われます。
「右と左が分からなくなるんだよね」そのようなレベルだった場合、時速30~40kmのパラグライダーを避けられませんし、急な対応もできません。
ちなみにプロペラガードがあっても、パラグライダーのラインに絡まってしまうので事故防止にはなりませんし、衝突回避をつけていたとしてもパラグライダーのラインに反応しませんし、スピードのある接近物を避けません。
もしするのなら、お互いに自己責任のもと、ですね…。
パラグライダーの飛行エリアでドローンの飛行はNG
まとめです。
パラグライダーには人物が乗っており、ドローンと接触したらパラグライダーのラインを絡めてコントロール不能になる可能性大です。
人命にかかわる大事故につながるため、パラグライダーの飛行エリアではドローンは飛行しないようにするのがベターです。
また安易に「ドローンでパラグライダーを撮りたい」と思うのも危険です。お互いに、どこから飛んでくるか分からない状態で、接触事故にもつながります。
事故が起きてからでは遅いですからね。
あとがき
ドローン飛行について、ヘリコプターなどの飛行物の制限や、高圧電線などの危険物に対しては注意喚起があるのですが、パラグライダーやハンググライダーに対しては何もないのが不思議ですね。
パラグライダー等は法律上、航空機に該当しないのですが、どうもしっくり来ません。注意喚起はあってもいいのではと思うところです。