こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
「ドローンって道路で飛行してもいいの?」
そんな疑問が出てくるかもしれません。
ドローンは航空法がありますが、道路上空はどのような扱いになるのか?また離発着はできるのか?判断がつきにくいと思います。
今回のブログ記事では…
- 道路の禁止事項について
- ドローン離発着・通過は何にあたるのか
- 航空法の特定飛行では現実的に不可能
この3つを中心に「ドローンと道路の関わり合い」について情報シェアしていきます。
ドローンの道路上空の飛行は、条件によっては航空法違反になるため気をつけたいところですね。
このページに書いてあること
ドローンを道路で離発着、もしくは道路上空を飛行するのは?
説明が長いので、結論から書きます。
道路上での離発着
道路交通法の危険行為や交通障害を生じる行為として道路交通法違反(道路交通法76条)にあたる可能性がある。
故に、警察に無許可ならNG。
道路上を通過
航空法の特定飛行にあたらない場合は通過は可能。
ただし、特定飛行では許可条件をクリアするために「立入管理措置」として通行人やクルマに対して交通誘導や注意喚起が必要。交通障害を生じるため、現実的にNG。
以下、順を追って説明します。
ドローン飛行は一般的に危険行為である
「ドローンはおもちゃだ」と安易に考えてドローン飛行する人間が多いですが、一般的には危険物です。
ドローンは高速回転するプロペラで怪我を負わせたり、墜落した際には重量が数キロが落下したりします。
世間一般からすると印象はよくありません。
行政が管理している公園では都市公園法によってドローンを危険行為として扱うほどです。
ドローンを操縦する人は「いやいや…」とは思うかもしれませんが、ドローンに関わったことのない人にとっては危険物です。
道路上での危険行為は、警察は取り締まる
事故が起きて被害者が増えないようにして社会の秩序を保つのが法律です。
- 道路を歩いていたら、急にドローンが飛んできた
- クルマで走っていたらドローンが落ちてきた
道路は通行人や通行者が行き交う「公道」です。ドローンが飛んでいたら、歩行者や通行車両は危険ですからね。
第三者が危険と思っていることは「法律が適用されていく」というのが一般的な考え方です。
道路での禁止事項
道路は道路交通法によって禁止されている行為があります。
第七十六条 禁止行為
4.何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
- 道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。
- 道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しやがみ、又は立ちどまつていること。
- 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。
- 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。
- 前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。
- 道路において進行中の自動車、トロリーバス又は路面電車に飛び乗り、若しくはこれらから飛び降り、又はこれらに外からつかまること。
- 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為
総じて言えることは「交通の邪魔をしないでね」ということでしょうか。
ボール遊びやローラースケートの類の行為でもNGだったり、ガラス瓶や金属片を道路に投げ入れるのがNGだったり。
警察側が「交通の危険を生じさせるようなことはするな!」と判断した場合は、この禁止行為に該当してきます。
具体的に、禁止行為で書類送検になった例
2019年、とあるYoutuberがスクランブル交差点にベッドを置いて撮影。
迷惑行為として道路交通法違反として7人を書類送検する事案がありました。
警視庁は13日、会社役員の男ら20~30代の男女7人を道路交通法違反(交通妨害物件放置)の疑いで書類送検した。渋谷署への取材でわかった。男らは交差点でベッドに寝そべる様子を動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿しており、「おもしろい動画を撮りたかった」と話しているという。
書類送検になった理由は「通行妨害をおこなったから」です。
どのような事案であったとしても禁止行為に対しては取り締まるのです。
道路交通法とドローンの関連性
「では、ドローンはどうなの?」というのが、ここからです。
- 道路上での離発着
- 道路上空の通過
この2つに関して、2つに分けて解説します。
道路上でドローンを離発着する行為
ドローンの離発着は当たり前なのですが、地表からスタートさせます。
そのときに「道路で離発着させちゃえば、いいんじゃないの!?」と思っちゃいますよね。
しかし、前述の禁止事項を当てはめるとどうでしょうか?
- 何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。
- 道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがある
法律的には、道路上に物を置くのは禁止、さらに交通の危険を生じる行為を禁止しています。
ドローンで考えてみると離発着時でも、安全のために半径5m以上の空間が必要なので実質的に占領してしまいますね。となると、クルマや人の交通の妨害になるのは明白です。
さらに言えば、プロペラ等の回転、墜落の危険性を考慮すると「交通の危険を生じる」と言わざるを得ません。
- プロペラが高速回転することで人を傷つける可能性が非常に高い
- 離陸時にコントロール不能になって、通行中のクルマやトラックに激突する可能性が高い
第三者や車両などの通行という面で考えるとドローンは危険です。
勝手に道路上で離発着させることは、道路における交通の危険を生じさせるため、違法行為になると容易に考えられます。
※撮影行為や撮影作業は、一般的に道路使用許可申請(ロケーション撮影)に該当しますので、道路上で離発着する際には管轄警察署の道路使用許可が必要とされています。
道路の上空をドローンが通過する行為
道路の上空へドローンが飛行するパターンです。
まず考えられるのが、先に出た交通の妨害です。
道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為
一般的にクルマが通ったり、人が通ったりするのを妨害するのが「交通の妨害」を考えられます。
日本にはクルマの高さ制限というのが存在します。
(公安委員会が定める自動車の積載物の高さの制限)
第2条の3 令第22条第3号ハの規定による公安委員会が定める自動車は、別表第2に掲げる道路を通行する自動車とし、同号ハの規定による公安委員会が定める高さは、4.1メートルとする。
ということで全国でクルマの高さ上限は4.1mまでになっています。
クルマを妨害せずに、円滑に通行できる高度。つまり、4.1mからさらに高度を上げた位置なら、妨害はしないのでは?と。
道路上を通過する分には、道路における交通の危険を生じない高度なら大丈夫である、というのが現時点での国土交通省の見解です。
ただし、これは道路交通法のみであって、航空法は生きています。
道路の通過はOKであっても航空法で違反になるケースがあるため、これも合わせて解説します。
ポイントは、「特定飛行」にある
- 飛行前確認(第三者がいないこと)
- 立入管理措置(補助者をつけて通知・誘導すること)
の2つです。
航空法の特定飛行で必要な安全対策条件
航空法から考える道路上の「第三者」
航空法の第百三十二条の二では、飛行前確認として「飛行経路下に第三者がいないこと」をおこなわければなりません。
飛行に必要な準備が整っていることを確認した後の飛行
飛行前に機体の点検等を実施することで故障等による落下を防止するため、航空法 第 132 条の2第2号により、飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させることとしている。また、航空法施行規則第 236 条の4に定められた確認しなければならない事項とその具体的な例は次の通りである。(中略)
(2)当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況を確認すること
具体的な例:
・飛行経路に航空機や他の無人航空機が飛行していないことの確認
・飛行経路下に第三者がいないことの確認
「飛行経路下に第三者がいないことの確認」です。
道路の上空を飛行させる場合、飛行する前に(離陸する前に)、道路上の通行人をすべて確認できるのかといったら極限的に難しいと考えられます。
地上から道路全体を見渡せるのなら把握できるかもしれませんが、路地に通行人がいるかもしれませんし、住宅から通行人が出てくるかもしれません。
確認作業という点では困難です。
航空法の特定飛行の「立入管理措置」
ドローン飛行では、飛行禁止エリアおよび禁止飛行方法があります。
これらを「特定飛行」として許可承認制になっており、一定の条件下で飛行が許されます。
その条件の1つとして、ドローンの飛行時に立入管理措置をおこない補助員を設けて立ち入りしないよう注意喚起しなければなりません。
3-1 無人航空機を飛行させる際の基本的な体制
- 飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。
- 補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。
- 補助者は、飛行経路全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う。
特定飛行にあたる「人口集中地区エリア内」や「人または物件から30m以内」の飛行では
- 補助者を設ける
- 補助者は第三者が立ち入らないよう注意喚起する
という条件です。
つまり、「はい、ドローンが通るんで、道路を通行しないでくださね!」と通行人をコントロールおよび制御する必要があります。
このように監視員をつけて、第三者の立ち入りを制限すれば、航空法ではOKとなります。
しかし道路の交通を勝手にコントロールするのは、明らかに交通障害を生じさせています。道路交通法に違反することとなります。
現実的に「特定飛行」になる条件では「道路通過は不可」である
ここまで書いたように、特定飛行の条件下では
- 第三者がいない状態にする
- 補助者を設けて注意喚起をする
が飛行条件となっています。
それらを道路通過時におこなうと、補助者が「通らないでね」と通行人やクルマに注意喚起をおこなう必要になります。
あからさまに著しく交通の妨害をおこすため、この条件はクリアできません。
道路上空の通過は
- 特定飛行にならないエリア・飛行方法なら通過OK
- 特定飛行(DID・30m・夜間など)なら通過NG
と考えると、安全だと思います。
道路脇には障害物(電線・電柱ほか)があるため、多くの場合で航空法該当
航空法では、人または物件から30m以上の飛行をしなければなりません。
物件というのが何かというと…
- 電柱
- 電線
- ガードレール
このような人工物が該当します。
道路の周辺には、人工物が間違いなくあることを考えると、必然的に航空法の「人または物件から30m以上」に該当します。
国土交通省航空局から飛行許可を得たとしても、上記と同様に、
- 補助者を設ける
- 補助者は第三者が立ち入らないよう注意喚起する
という条件が加わり、道路上の交通をコントロールしなければなりませんので、道路交通法に引っかかります。
ドローンは道路を避けて飛行するのが鉄則
まとめです。
ドローンはあらゆる法律に関わってきます。
法律をクリアして「安全に」かつ「第三者に危害を加えない」ことを考えると、
- 道路で離発着をする
- 道路の上空を飛行する
この2つは、法律的にもモラル的にも避けたほうが無難です。
特定飛行に書かれている飛行条件の理解が進まない場合には…
- 私有地での離発着をする
- 道路の上空は飛行しない
を遵守するのがベターです。
国土交通省航空局でも、道路上空の飛行については言及をしています。
第三者の土地や道路上空などを考慮せず、土地管理者や近隣住民等と特別な調整を行わないで無人航空機を飛行させた場合、騒音等、トラブルの原因となる可能性があります。
各法律を遵守して、正しくドローンを飛行するには「道路を避ける」がスムーズです。
追記:道路上空の飛行動画が違反疑い、動画削除
2023年4月、国土交通省 香川河川国道事務所 がツイッターで、道路上空を飛行した動画をアップしましたが、多数の指摘により炎上、削除されました。
ヤフーニュースでも取り上げられ、
国交省、一般車両通行の道路上でドローン動画撮影 指摘受け削除
国土交通省香川河川国道事務所(高松市)が、ドローン(無人航空機)で道路を撮影した動画をツイッターに投稿したところ、「法令違反では」との指摘が相次ぎ、急きょ削除する事態となった。ドローン飛行の所管省庁は同じ国交省であり、ドローン操縦者らから「事前チェックはしなかったのか」などと疑問の声が上がっている。航空法などに抵触する恐れがあるとして、国交省大阪航空局が投稿の経緯を調べている。
問題の動画は香川県三豊市の国道11号が一部区間で4車線化されたことを伝えるもので、1・3キロの道路をドローンで上空から撮影。真下を一般車両が通行する様子も映っていた。
航空法違反などに抵触する恐れがあるため、削除したとのことです。
DIDエリアではありませんが、4車線道路であって、1km以上の目視外飛行、30m未満の飛行などの特定飛行にあたると言われています。
請け負った工事業者がドローン撮影して、香川河川国道事務所が知らずとアップしてしまって炎上した…と、よりリスク管理が鮮明になった事案です。
あとがき
ドローンは道路を避けて飛行するのが鉄則ですね。