こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
随分と昔から常々思っていた、ひとりごとに近い話です。
「ドローンってすごい映像ですよね!?」とクライアントから言われることが多々あります。確かに今までにない視点から映し出す画はどこか新鮮で、心躍ります。これは間違いありません。
しかし、ドローンの映像をつくっている私からすると、どんなにドローンの撮影映像がすごくても「梅干し」なのです。
ハテナ?と思うかもしれません。
お弁当の中にある「梅干し」とドローンの位置づけ、実例を踏まえてお話します。
このページに書いてあること
ドローン撮影の映像は、たしかにチカラがある
ドローンで撮影していると「いい画ですね!もっと見たいです」と言われることが多々あります。
ほんの少しだけ高さが変わっただけで、地上で撮る画と比べると新鮮に見えるからですね。空間を移動して撮れるドローン、今までになかった角度から狙えるのは、もはや専売特許。
「もっと見たい」と思わせる”チカラ”は間違いなくあります。
「ドローンの撮影って、これからたくさん増えるんじゃないですか!?」と高揚しながら聞かれるのですが、当の本人(私)はいつも「いえいえ、結局のところ梅干しなので」と返答するんですよね。
テレビやPV、CMなどの「映像制作の現場」では、ドローンの撮影は決してメインには成りえないからです。
幕の内弁当に「梅干し」は必要なのか?
ドローンの撮影映像は新鮮味があります。
効果的に使用すれば、視聴する側が「分かりやすく」「ダイナミックに」捉えられます。
しかし、一連の映像のなかで「絶対に必要なのか?」と突き詰めて考えたら、ぶっちゃけて言うと「絶対」ではありません。
普段、テレビ番組やCMなどを思い出してみてください。
ほとんどが地上から撮っている映像です。役者さんをずっと地上のカメラで撮影していき、まるっと編集すれば映像は出来上がりです。
はるか昔から地上カメラだけで撮影をしていき、地上カメラだけで映像(テレビ番組やCM)ができあがっています。
さきほど「ドローンは梅干し」とお伝えしました。
例えば幕の内弁当の中に、もし梅干しがなくても成立しますよね。ご飯があって、メインのおかず(唐揚げや焼き鮭)があって…。
お弁当として充分に満足に食べられます。
映像制作でも同様です。限られた予算の中で「メインのおかずの食材を豪華にする。ただし梅干しはいらない」とすれば、もっと魅力的なお弁当ができあがります。
結局のところ、幕の内弁当に梅干し(ドローン)がなくても成立するんですよね。
さらに言えば、梅干しが何十個もあってメインのおかずが無い弁当は魅力的ではないのです。
「梅干し」の役割は何なのか?
とは言っても、梅干しには役割があります。決して主役にはなりませんが「あったら、あったでいい」存在。
それは全体を引き締める「口直し」です。
例えば、幕の内弁当の中でメイン食材が唐揚げだとします。唐揚げといっしょにご飯を頬張る。箸がすすみますよね。
しかし口の中は、少し脂っぽい感じ。そこで梅干しをひとかじり。口もさっぱりして、新しい気持ちで次の煮物に箸をすすめる。
口直しができるから、いろんなおかずも美味しく食べられる。さらに言えば、全体的な見た目も、梅干しがあるのと無いのと比べると、あったほうが引き締まりますよね。
何が言いたいかというと…
- 決してドローンはメインを飾らない
- ドローンの撮影映像がなくても映像制作は成立する
- ただ撮影映像が加わることで、全体がまとまりやすくなる
絶対に必要ではないけれど、梅干しがあったら全体を引き締める役割を担ってくれるということです。
あとは、どれだけ梅干しにお金をかけるのか?という話になりますが(笑。
実例:ミュージックビデオの中にどれだけドローンがあるのか?
では、梅干し感をミュージックビデオ(MV)の実例で紹介します。
eufonius / ココロニツボミ
このMVではドローン撮影箇所を担当しました。
子供の悩んだ気持ちがだんだんと晴れていく様子を写したMVで、地上のカメラそしてドローンのカメラの2つで構成されています。
ドローンシーンの総秒数
MV全体の長さは4分33秒。秒数で計算すると273秒です。
では、273秒のうち、ドローンのシーンは何秒だと思いますか?
いきなり答えですが20秒です。10分の1にも満たないですね。※補足するとしたら、このMVではドローンの映像を多く使っていただいています。(ありがとうございます!)
前述の通り、メインは地上カメラであって、決してドローンが主役でも脇役でもありません。
梅干しとして活用できたドローンシーン
全体から見ると秒数は少ないです。
しかし梅干しとして随所随所で「引き締め役」として取り入れられています。
- ストーリーとして必要な上空から舞い降りるシーン
- 子供が走り出して駆け抜けていくシーン
- 浜辺で踊る女性の躍動感を伝えるシーン
数秒でも違った画が入ることで、ストーリーを引き立たせ、さらに最後のシーンの躍動感やダイナミックさをドローンだから伝えられます。
映像の中でアクセントを入れる。
ストーリーの中でドローンでしか再現できない映像をつくる。
決してメインではありませんが、梅干しのように「あったら引き立つ」というのがドローンの撮影映像ではないでしょうか。
あとがき
「ドローンの映像がメインになる!」と誤解している方も多かったので「いやいや、梅干しなんですよ。絶対に必要ではないけど、ときに必要になる梅干しなんです!」という例え話でしたー。