こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
ご存知の通り、ドローンは航空法の対象です。
法律によって飛行エリアや飛行方法に規制がかかっています。もし法律のルールを破った場合には、罰金刑に処されます。
「違法飛行はバレるの?」「通報って本当にあるの?」「通報するとどうなるの?」
そんな疑問が浮かんできますよね。
今回はセンシティブな話ですが、ドローンと通報について…
- ドローンの違法飛行の判断方法は?
- どこに通報するのか?
- 通報するとどうなるのか?
このあたりを中心に、ドローンの違法飛行した場合の「その後」を書いていきます。
ブログにするのはためらったのですが、昨今、ドローンに対する目線が厳しくなり、「すぐに通報だ」となりがちです。
どういう判断で通報するといいのか。通報とは何なのか。
そのあたりを整理していければと思っています。
Contents
ドローンの違法飛行は警察に通報する。でも確認してからの通報がベターである。
結論です。
身の危険を感じるドローン違法飛行に遭遇した場合には、基本的には警察に通報です。
警察に通報すれば、警察が捜査、検察が立件した場合は航空法違反として違法行為となる場合があります。
ただし、ドローンの違法飛行と思われる事案について、すべてが航空法違反になるわけではありません。当たり前なのですが、法律に則った正しい状況下でドローンを飛行させていた場合は、いくら通報したところで「違反」にはなりません。
そのため、身の危険を感じない場合には「これは大丈夫なのか?」という確認をしたほうがベターです。
ドローンと航空法の関連性は、一般人からすると不可解であって当然です。「航空法なんて知らない」「解釈も分からない」そのような人がほとんどです。
だからこそ、まずは操縦している人間に確認したり、その映像の出典先に確認したりするのと、いきなり大事(おおごと)に発展しません。
- 身の危険を感じるドローンの違法飛行 ・・・ すぐに警察に通報する
- 違法かどうか判断が危ういドローンの違法飛行 ・・・ 操縦者に確認をする
まずはこの判断で通報する否か、どこに通報や確認をするのがいいのかを決めるとスムーズです。
「ドローン」と「通報」が隣り合っている
そもそも、なぜドローンの通報についてブログ記事を書こうと思ったのか…というのを説明させてください。
ちょうど平成が終わり、令和になろうとしていた2019年5月、皇居付近でドローンの飛行がニュースを騒がせました。当時、テロかもしれないと緊張感が高まったのも記憶に新しいですね。
そのような「ドローン」と「犯罪」が密接した関係性があると印象づけられて、「ドローン=通報する」といった空気感が出てきたような気がします。
またそれ以前にも、ドローンユーザーによる「ドローンパトローラー」の存在もあり、違法飛行の是正を促す動きが水面下でおこなわれていました。(※ドローンパトローラーについては後日記事にします)
ドローンと通報について、私が今回書こうと持ったのが2つの理由があるからです。
理由1:ドローンユーザーの「これ、違法じゃないですか?」が多い…
こうしてドローンのブログ記事を書いていると、下記のようなメール投稿をいただくことが多いです。
ユーチューブでちょっと気になる動画を見つけたんですけど。暇な
ときに見てみてみてください。 ◯◯◯◯という人のドローン映像ですけど私の見る限りこれだめ
でしょうと思いますけど。専門家意見をお聞きしたくてメールしま した。
よろしくお願いいたします。(何度か動画にコメントしましたけどわかってくれません)
こういったお話はいくつもいただいておりますが、ぶっちゃけていうと私に言ったところで何も変わりません。私が違法と決めることはできません。
結局は私は一般人ですので。
もし本当に正したいのなら、自分自身が持っている正義感を行動に移せばいいですからね。
きっと、そのジャッジの仕方が分からないから私に連絡が来てしまうと考え、今回はドローンと通報の考え方をシェアできればと。
その上で、行動に移すのは自分自身だと認識してほしいです。
理由2:クライアントが通報を受けることが増えてきている…
つい先日、クライアントから電話がかかってきました。
ざっくりとした内容は下記です。(※一部特定できないよう内容を変えています)
別部署が発注した先の制作会社がドローン飛行させていたとき、通行人が警察に110番した。
通報を受けた警察が来て調査が始まった。結果的には法律に違反していなかったが、警察が来たことによって社内が騒動になった。
いちおう映像は使えるけども…。
ドローンを飛行させていたら、その場で通報されて警察沙汰になった話です。(ちなみに私ではないですよ)
根本的には、ドローン操縦者側の配慮が足らなかったのが最大の要因なのですが、このドローンに対して過敏な時期は、一般人による通報の話は耳にします。
これは航空法や各法令に則って、正しい方法でドローンを飛行させていたとしても、大事(おおごと)になってしまう場合があります。
通報する方には、決して悪意があって通報するわけではありません。「ドローンは危険だから」とか「ドローンは事件でニュースになっているから」とかの理由だけです。
きっと、その通報するか否かのジャッジができないからだと思います。
一般人も航空法をすべて理解し無くてはならない…というわけではありません。少しでもブログ記事によって判断ができればと、その判断材料をシェアできればと想っています。
他人の違法飛行に興味がありません…
私自身の考え方を少しだけ…。
「これ違法飛行している!ムキー!」「このYoutubeの動画は駄目だろう」
そのような他人のドローン飛行について、ぶっちゃけて言うと興味がありません。
それは時間の無駄だからです。自分自身の貴重な時間を、妬みという感情だけで他人のために時間を使うのが惜しいです。
どんなに「これは違法だ!これは違法だ!」と騒いで、気が済むまで調べて、投稿者に連絡をして…というだけで1日が潰れてしまいますから。
もし仮に、本当にドローンの違法飛行をしている操縦者だとしたら、きっと、どこかのタイミングで事故や事件を起こして(※こういう方は起こしやすい)、時期に捕まると思うからです。
身から出る錆であって、いずれは因果応報(悪い行いをすれば悪い報いがある)になります。
きっとどこかで自滅するので、ここ数年は気にしていないんですよね。
ドローンの違法飛行の判断方法は?
さて、ドローンの飛行にあたって「違法」というのは何なんでしょうか?
ドローンはいくつもの法律に密接に関わっており、
- 航空法
- 民法
- 道路法
- 条例 など
どの法律の、どの項目が違反になっているのか…というのは複雑過ぎて、一般的には理解できないのが普通です。
とあるドローンユーザーとお話したときに「この場合は違法だろ思いますか?」と質問を投げかけたところ「いや、大丈夫だと思います」と答えが返ってきました。
私自身が認識している航空法を鑑みた場合、98%くらいで航空法違反だと思っている事案でした。
何が言いたいかというと、ドローンユーザー間でも航空法の解釈の仕方が異なり、それぞれに違法性の相違があることです。
つまり、違法飛行かどうかは一般人には理解し難く、この歴史の浅いドローンの航空法では不明瞭さが大きく残っていると言えます。(解釈の仕方が歪みを生むんですよね)
でも揺るぎないことが1つ。
ざっくりと航空法では「人間の身を守る。安全を確保する」というのが前提となっているはずです。
「これは違法飛行なのでは?」と思ったときは、きっと「自分自身の身に危険を感じたとき」と考えると、分かりやすくなります。
何度も書きますが、航空法の他に各法令のすべてを一般人が理解できません。
「このドローンは自分自身にとって危険だ!」そう感じたときが、違法飛行の疑いとして通報する。
それが一番簡単なジャッジの仕方ではないでしょうか?
もし身の危険を感じなくても違和感を感じたのなら…
身の危険を感じたら通報で良いと思いますが、例えば身の危険がなくて「違和感を感じた」のなら、まずは…
- そのドローンの操縦者に確認をする
- 映像の元に確認をする
そのほうが、おおごとになりにくいです。その上で不明瞭な回答だった場合には、通報という手段を考えても良いと思います。
ちなみに、よくある回答例を挙げるとすると…
- 航空法の許可を得ています
- ドローンの法律が改正される前の飛行です(だからセーフです)
と、正当性を訴える場合がほとんどかもしれません。それ以上のこと、例えば許可書を無関係のひとに見せなければならない権利はないため、話は終わってしまうこともありそうです。
ただ、航空法の国土交通省の許可を取っていたとしても、飛行できない方法などあります。条件に満たさないことあるので、少し下調べをするといいかもしれません。
⇒参考記事:国土交通省のドローン飛行許可を取っても自由に飛行できない理由は?
⇒参考記事:ドローン規制&法律を知りたい!ドローン飛行のガイドライン(総集編)
どこに通報するのが良いのか?
「違法飛行かもしれない!」そう思って、どこに通報すれば良いでしょうか?
98%くらいは警察になります。(残り2%は実害を被った施設管理者など)
ドローンに詳しい方は「国土交通省に通報しよう。航空法を管轄しているのだから」と思うかもしれませんが、それは誤りです。
組織と役割を考えると、分かりやすくなります。
航空法を改正してドローンを法律の対象としたのが国土交通省です。さらに飛行許可を出すのも国土交通省です。
国土交通省はルールをつくったり、ルールを運用させたりする組織ですね。そのため違法者を捕まえたり、法律で裁くことはありません。
違法者を捜査したり捕まえたりするのは警察の仕事だからです。その権限は、警察にあると考えると分かりやすいですね。
さらに警察が持っていた事件を立件するのが検察(検察官)です。
- 国土交通省 … ルールをつくる
- 警察 … ルールの違反者を捕まえる
- 検察 … 警察が捕らえた違反者を審判する
それぞれの役割が定められているので、通報する場合には警察になるわけです。
警察のどこに通報すればいいのか?
警察に通報するといっても「では、どこに?」と思いますよね。
110番もあれば、警察の相談窓口や管轄警察署もあります。どこに電話をすればいいのか正解はないと思います。
あくまで目安として考えていただくと…3つに分かれると思います。
その1)緊急性の高い事案:110番
今その場で「これはヤバイ!自分に危害がある!」と思った場合は110番です。
現在進行系で危険を感じているなら、すぐに対応できる110番は即効性が高いです。110番の在り方というのは、緊急事態を対応できるよう司令経路が構築されています。
たとえば、渋谷のスクランブル交差点の上空にドローンが飛んでいたとしましょう。
「テロかもしれない」「墜落してきたら間違いなく数人はケガをする」「私の上空に飛んできた」
そのような緊急度が高い場合には110番です。すぐに操縦者を操作しなければなりませんし、交差点内の交通を制御しなければなりません。
また別件なのですが過去にドローンユーザーが航空法で逮捕された事案があります。
加賀容疑者の逮捕容疑は5月9日午後9時55分ごろから、許可を得ず江戸川区の公園でドローンを飛ばした疑い。加賀容疑者は「許可が必要とは分かっていたが、公園では飛ばせると思っていた」と供述している。
「公園で不審なドローンが飛んでいる」という110番を受け、捜査員が加賀容疑者を特定した。同容疑者がドローンの任意提出を拒み、捜査関係書類の自署欄に虚偽の氏名を書くなどしたため証拠隠滅の恐れがあるとして逮捕したという。
近所の公園でドローンを飛行させていたユーザーがいて、110番通報によって捜査員がかけつけた…という話です。
こういった話は110番というわけです。
その2)緊急性の低い事案:管轄の警察署(生活保安課)
緊急性は高くはなくて、決してその日のその場での解決しなくてもよい事案の場合です。
この場合は、捜査を担当する管轄の警察署に通報をします。
例えば渋谷で起きた何かのドローン飛行だとしたら、渋谷警察署ですね。ネットで調べれば代表番号はすぐに見つかります。
警察署内には、会社と同じように多く部署があります。一般的にドローンの場合は「生活保安課」になります。(もしくはそれに近しい名称)
一般市民の生活を脅かす、もしくは安全を阻害する行為に対して、捜査をおこなう部署です。
ただし、警察署ではドローンに関わる法律(航空法)に長けている警察官は少ないです。話がスムーズに行かない場合には、国土交通省航空局の連絡先を教えたほうが、相手もスムーズに動きやすくなりますね。
もしくは、警察署のひとつ上の県警に通報するのも考えておきましょう。県警レベルなら、もっと話はスムーズになるかもしれません。
過去に、Youtubeの違法飛行について県警が動いた事案があります。
書類送検容疑は、昨年5月22日午前5時40分~同9時50分ごろ、上北山村小橡~三重県大台町の大台ケ原上空で、無許可で150メートルを超える高さにドローンを飛行させたとしている。
同署によると、動画共有サイト「YouTube」を見た男性から奈良県警に「高いところから撮った映像がある」と情報提供があり発覚。サイト内には計約30分の山の景色の動画がアップされており、最大約420メートルの上空から撮影されていたという。
動画が撮影されていた場所は奈良県なので、奈良県警に情報提供されて書類送検になっています。
本来なら当事者として自分自身に実害があった場合に警察は動くのですが、こういった証拠が残っている場合には、警察が動くこともあるようです。
その3)よくわからない場合の事案:警察相談専用電話#9110
「もうなんだかよくわからない」という場合には、通報もしくは情報提供の相談として警察相談専用電話に電話しましょう。
前述の通り、110番は緊急性の高いものだけを扱っています。そこに、細々とした話を110番すると、他に起きた緊急性の高い事件に対応できなくなります。
よくわからない…そのような場合は、まずは警察相談専用電話#9110に電話しましょう。
生活の安全に関する不安や悩みは警察相談専用電話 #9110へご相談ください
犯罪や事故の発生には至ってないけれど、ストーカーやDV・悪質商法・近隣や職場でのトラブルなど、普段の生活の安全や平穏に関わる様々な悩みごとや困りごとを抱えていませんか。そのようなときには、警察相談専用電話#9110にご相談ください。全国どこからでも、電話をかけた地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながります。そして、警察では問題解決に向けて、相談者の要望などを尊重しながら様々な対応を行います。
ちなみに相談窓口という、ゆるいネーミングにもかかわらず、警察という権限をしっかりと所持しており、関係所管に引き継いでくれるようです。
<問題解決のための警察の主な対応>
(2)警告、説得
相談時点では刑罰法令に触れないが、将来、相談者などに危害が生じるおそれがあると認められる場合は、相手方に対する警告または説得(3)検挙、補導
相談に係る事案が刑罰法令に抵触すると認められるときは、捜査担当部門に引き継いで、被害届の受理、必要な捜査を行い、被疑者を検挙・補導
警察って本当に凄いですよね。尊敬します。
これだけのことを警察はやってくれるのですから、通報や情報提供には、より分かりやすく伝えたほうが動きやすいのではないでしょうか。
警察に通報するとどうなるのか?
もしドローンの違法飛行だろう事案を見つけて通報した場合、その後はどのようになるのでしょうか?
どんなに「これは絶対違法だ!!!!」と確証を得ていたとしても、航空法違反になるかどうかは、捜査する警察次第です。
警察がどう判断するかで物事が決まります。
事件として検挙して立件されるかもしれないですし、警告だけになるかもしれません。もしくは、無かったことになるかもしれません。
もう一度書きますが、通報したとしても警察次第です。通報者が抱く正義はそこにありません。
ただ、もちろん危険性が高いと判断されたり、時世によっては軽微なものでも捜査が入ったりします。例えば、皇居周辺でドローンが飛行していた頃は、ドローンに対する摘発は目立ちました。
⇒参考記事:警察が本領発揮!ドローン違法飛行で一斉摘発へ(逮捕・書類送検/外国人含む)
ここまで警察のことばかりを話していましたが、国土交通省は何もしていないわけではありません。
警察から国土交通省に問い合わせや相談があった場合には、国土交通省も情報提供を速やかにおこないます。航空法を熟知しているプロですからね。
飛行許可の有無や法律の抵触といった捜査協力をするのが国土交通省です。
警察→国土交通省→警察という流れで航空法違反に値するのかどうかを、警察が捜査していきます。そうして書類送検として、検察に事件を引き継いでいきます。
ドローンの法律違反は分かりにくい…
冒頭にも書きましたが、ドローンは航空法という法律に、思いっきり対象となっています。
日本の何処かで、ドローンが飛行した瞬間に航空法が適用されます。たとえ、1cmだけでも空中に浮いただけでも。
Amazonでは簡単に航空法対象のドローンを購入できます。購入したときに「これをすると違反です」と教えてもらうことなんてありません。すべて自己責任です。
ドローンユーザーも、一般の方も、さらに映像制作会社も、いま現状の空気感を察すると「ドローンの法律違反は分からない…」が大多数を占めています。
航空法だけではなく、道路法や民法、公園法など法律はいたるところにあります。日本にいる限りは、すべての人に法律が施行されています。
だからといって「ドローンを飛行してはいけない」と論ずるつもりは一切ありません。
ただドローンを飛行するにあたっては、法律がすべてであり、第三者への安全の配慮を敷かなければなりません。
安全が成されていないから「これは通報しなくては!」となるからです。
ドローンユーザーの方は知見を広げましょう。法律の基礎がわからないのなら、ドローンスクールという塾に通ってもいいですし、私のブログを参考にしても構いません。
映像制作会社の方は、ドローン操縦者に注意しましょう。法令に抵触した飛行方法で撮影された映像が、使用できなうなる場合もあります。(完成公開後に、突如削除された商用動画があります)
最後に一般の方に。
通報する場合の「身の危険を感じる」が一番の判断材料です。
- ドローンが目の前を飛んできて、プロペラで怪我しそうだった
- 大勢いる中でドローンが上空を飛行していた
- クルマで走行していたらドローンが低空飛行していてぶつかりそうだった
そのような「これは自分が怪我をする」「誰かの死を感じる」と思ったら、通報するのがベターです。通報することによって、安全を確保できますから。
そしてもうひとつ。
ドローンが悪いことをするわけではありません。ドローンを操縦する人間が悪いのです。
ドローンを一括りにして「悪者扱い」はしないで欲しいです。
あとがき
ドローンと通報について記載しました。
私自身は、弁護士ではないですし、警察官でもありません。国土交通省航空局の中の人でもありません。
そのためニュアンスに不備があるかもしれません。もし専門家の方から見てご指摘がある場合には遠慮なくご連絡ください。