こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
ドローンの飛行申請を出す際に飛行マニュアルを添付しなければなりません。
この飛行マニュアルは、ドローンを飛行させる際に安全管理や技量、飛行方法を記した「ドローン飛行する際の約束ごと」です。
この約束を守る代わりに、国土交通省が審査をおこない飛行許可を得ることが可能になります。
今回のブログ記事では…
- 飛行マニュアルとは何なのか?
- 国土交通省航空局が用意している「航空局標準マニュアル」は何なのか?
- 許可を取得しても「できること」「できないこと」は何なのか?
この3点を中心に「航空局標準マニュアルを徹底解説」をおこないます。
航空局標準マニュアルに記載されている1つ1つの文章に意味があり、それを遵守しなければなりません。
じっくりと解説しますので、必ず読んでくださいね。
このページに書いてあること
- 1 そもそも飛行マニュアルって何なのか?
- 2 航空局標準マニュアルの徹底解説
- 3 航空局標準マニュアルをもとに実施するべきこと
- 4 航空局標準マニュアルを読破して理解するのが申請の1歩目
- 5 あとがき
そもそも飛行マニュアルって何なのか?
「飛行マニュアル」という名前だけでは、あまりピンっと来ないですよね?
ドローンは航空法によって飛行エリアや飛行方法に法律的な規制をかけています。違反的に飛行させた場合には罰金刑に処せられる重たい法律です。
基本的には、飛行禁止エリアや禁止飛行方法では、ドローンは飛行できません。
ただし、一定の条件をクリアすることで、国土交通省に申請、審査の後、許可を得られれば所定の条件下で飛行が可能になります。
その国土交通省に申請をするにあたって、絶対に必要になるのが「飛行マニュアル」です。
これがなければ、そもそも申請すらできない重要な書類です。いったいどのような内容が書かれているのかというと、おおまかに…
- 無人航空機の点検・整備、記録の方法
- 無人航空機を飛行させる者の訓練・遵守事項
- 飛行する際に安全を確保するための体制
- 非常時の連絡体制 など
ドローンを飛行させる上で「これだけの技量があります」「この安全対策は守ります」と記載する十数枚におよぶ書類です。
つまり飛行マニュアルというのは、ドローンを飛行させるイロハ的な方法ではなく、飛行が禁止されているエリアで飛行させるための約束事というわけです。
当然ですが、この約束事を守らないと許可を得ていたとしても違反飛行になってしまいます。
航空局標準マニュアルの徹底解説
ドローンの申請を行う際に飛行マニュアルの添付がMUSTです。
ただし、国土交通省航空局が事前に要している「航空局標準マニュアル」を使用することも可能です。
では、この航空局の標準マニュアルというのに何が書かれているのでしょうか?
各項目ごとに解説します。
標準マニュアル:無人航空機航空機の点検・整備
ドローンは機械ですので点検・整備は必要不可欠です。
飛行前後に点検をおこなう
飛行前と飛行後には、下記のようなチェックをが必要になります。
- 各機器は確実に取り付けられているか
- モータの異音はないか
- プロペラに傷やゆがみはないか
- バッテリーの充電量は十分か
- 機体にゴミ等の付着はないか
- ネジのゆるみはないか
- モーターやバッテリーの異常な発熱はないか
このあたりは当たり前のことですので、そのチェック項目を進めれば問題ありません。
20時間ごとに点検結果を所定書式に記録する
しかし必要とされているのが20時間ごとにも点検をおこない、別シートに記録をおこなわなければなりません。
20時間の飛行毎に無人航空機の点検・整備を行った際には、「無人航空機の点検・整備記録 」( 様式1 )により、点検・整備を実施した者がその実施記録を作成し、 電子データ又は書面により管理する。
事故を起こさないためにも自己チェックは必要というわけです。
プロペラは消耗品なので例えば20時間使用したら交換したり、エアダスターをモーターにかけたりするのがベターですね。
標準マニュアル:無人航空機を飛行させる者の訓練及び遵守事項
次は飛行する者(操縦者)の必要な訓練と、操縦者が守らなければならない遵守事項です。
十分な経験を有した者の監督下で10時間以上の操縦練習をする
まずは訓練方法と必要な技量について。
プロポ の操作に慣れるため、 以下の内容操作が容易にできるようになるまで 10 時間以上の操縦練習を実施する。なお、操縦練習の際には、十分な経験を有する者監督の下に行うもとする。 訓練場所は許可等が不要な場所又は訓練のために許可等を受けた場所でおこなう。
ドローンの飛行訓練として必要なのが10時間以上の操縦練習です。
その操縦練習には「十分な経験を有する者」が監督しなければなりません。つまり1人で「練習しました!」というのは認められないことになっています。
10時間の練習内容には所定の飛行訓練が必要(GPSなし)
そして10時間以上の操縦練習が必要なのが下記の項目です。
離着陸
操縦者 から3m離れた位置で、3mの高さまで離陸し、指定の範囲内に着陸すること。この飛行を5回連続して安定して行うことができること。ホバリング
飛行させる者の目線高さにおいて、一定時間のホバリングにより指定された範囲内 (半径 1mの範囲内)にとどまることができること 。左右方向の移動
指定された離陸地点から、左右方向に20m離れた着陸地点に移動し、着陸することができること 。この飛行を5回連続して安定して行うことができること。前後方向の移動
指定された離陸地点から、前後方向に20m離れた着陸地点に移動し、着陸することができること。この飛行を5回連続して安定して行うことができること。水平面内での飛行
一定の高さを維持したま、指定れ地点順番に移動することができること。この飛行を5回 連続して安定して行うことができること。
ドローンの操縦訓練で具体的に必要な内容がかかれています。
「左右方向の移動」は言葉にしてしまうと簡単そうに聞こえてしまいますが、実際には20m離れた着地点に目視で着地させることです。しかも安定的に、5回連続で。20mは意外と遠いものです。
また前後左右の移動も、人間の視覚は距離感がつかみにくいため、日頃から慣れないと着地は困難です。
ちなみにGPSやビジョンポジショニングなどの飛行補完システムはナシでおこなうのが申請条件になっています。
対面飛行や8の字飛行を安定的に5回連続でおこなえる
上記の訓練の他にも…
対面飛行
対面飛行により、左右方向の移動前後、水平面内での飛行を円滑に実施きるようすこと。飛行の組合
操縦者から10m離れた地点で、水平飛行と上昇・下降を組み合わせて飛行を5回連続して安定して行うことができること。8の字飛行
8の字飛行を5回連続して安定して行うことができること。
リモコン操作の左右が逆になる「対面飛行」や複雑な動きの「8の字飛行」もマスターする必要があります。
上記の飛行訓練をトータル10時間以上が要件になっています。
ただホバリングしていただけで「10時間GETしました」というのは、このマニュアルに反してしまいますね。
標準マニュアル:飛行するにあたっての遵守事項
ドローンを遵守しなければならない遵守事項があります。
第三者の上空・風速5m以上では飛行できない
代表的なものを引用すると
- 第三者に対する危害を防止ため、第三者の上空で無人航機飛行させない。
- 5 m/s以上の突風が発生するなど、無人航空機を安全に飛行させことできなくるよう不測の事態が発生した場合には即時飛行を中止する。
- 不必要な低空飛行、高調音を発する急降下など他人に迷惑及ぼような飛行をおこなわい。 など
といった、許可を受けたとしても「第三者の上空」「風速5m/s以上」の場合は飛行は禁止されています。
操縦者として、安全を確保するために最低限に守らなければならない事項と言えます。
特に「第三者の上空」に関しては、国土交通省は航空法の審査要項で昔から厳しいです。徹底しなければOUTです。
標準マニュアル:安全を確保するために必要な体制
飛行する際に必要な体制はすべての飛行内容に共通して守らなければならない事項です。
代表的なものを引用すると…
- 場所の確保周辺状況を十分に確認し、 第三者の上空では飛行させない。
- 雨の場合や雨になりそう場合は飛行させない 。
- 飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、 相互に安全確認を行う体制をとる。
- 補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。
- 補助者は、飛行経路全体を見渡せる位置において、無人航空機の状況及び周囲の気象状況変化等を常に監視し、操縦者が安全飛行させることできよう必要な助言を行う。
結構いろいろと書いてあるのですが、めちゃくちゃ重要です。
第三者の上空は飛行できない
飛行する上で、まずは第三者の上空はここでもNGと言っています。
場所の確保や周辺環境を確認しなければ、当然、第三者の存在を発見できません。
飛行する際には補助者を配置する
さらに飛行させる際には補助者が必要です。
「飛行範囲に第三者が立ち入らないように注意喚起する」補助者、また「飛行経路を見渡せる位置にいて常に監視し、操縦者に助言する」補助者です。
飛行経路にもよりますが、上の2つは1人の補助者でまかなえません。
注意喚起する人は通行人がいるか監視しなければならなく(=地上を見て通行人を監視する補助者)、全体を見渡しドローンを見続ける人(=空&ドローンを常に監視する補助者)は離れた場所にいなければなりません。位置関係的に厳しいです。
また地上を目を離さず常時見ることと、空を目を離さず常時見ることを同時に行うのは不可能。これを1人でおこなうには目が4つ必要です。
また飛行エリアが広ければ広いほど、第三者の立ち入りを注意喚起する補助者の人数が必要不可欠です。場合によっては補助者が5~10人が必要になる場合もありますね。
とても操縦者1名だけで補助者0名という体制では、ドローンは飛行できません。
標準マニュアル:包括申請の場合の安全を確保するために必要な体制
航空局標準マニュアルの包括申請の場合には、下記の要件も条件に加わっています。
- 第三者の往来が多い場所や学校、病院等の不特定多数の人が集まる場所の上空やその付近は飛行させない。
- 高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない。
- 人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所及び周辺の第三者の立ち入りを制限できる範囲で飛行経路を選定する。
- 飛行場所に第三者の立ち入り等が生じた場合には速やかに飛行を中止する。
学校・病院では飛行できない
文章が書いてあるとおり、学校・病院では一切の飛行ができません。
また、それらに該当する不特定多数が行き来するような場所も飛行できないこととなっています。
離発着する際には、人または物件から30m以上を確保する
どのような条件下においたとしても、人または物件から30m以上を確保して、離発着をおこなわなければなりません。
これは「人または物件30m」の許可を得ていたとしても、この条件は残っているため、必ず30m以上を確保することとなっています。
さらに第三者の立ち入りを制限した飛行経路になり、立ち入った場合には中止しなければなりません。
離発着で30m以上を確保するのは、離発着の場所を考える必要がありそうです。
標準マニュアル:安全を確保するために必要な体制(人口集中地区)
人口集中地区(DID)で飛行する際の安全体制では…
人又は家屋の密集している地域の上空における飛行又は地上又は水の地上又は又は物件との間に30 mの距離を保てない飛行を行う際の体制
- 飛行させる無人航空機について、プロペラガードを装備して飛行させる。装備できない場合は、第三者が飛行経路下に入らないように監視及び 注意喚起をする補助者を必ず配置し、万が一第三者飛行経路下に接近又は進入した場合は操縦者に適切に助言を行い、 飛行を中止する等 適切な安全措置をとる。
- 無人航空機の飛行について、補助者が周囲に周知をおこなう。 など
このように2つの条件があります。
プロペラガードを装着する
原則的にプロペラガードを装着しての飛行です。できない場合には補助者による安全対策が必要です。
補助者を配置して周囲に周知をおこなう
さらにプロペラガードがあったとしても、補助者は前述のとおり必要であり、周囲に周知(=注意喚起)をおこなわなければなりません。
人口集中地区も同様に、操縦者1名だけで補助者0名という体制では、ドローンは飛行できません。
標準マニュアル:安全を確保するために必要な体制(夜間飛行)
夜間飛行については…
夜間飛行を行う際の体制
- 飛行高度と同じ距離の半径の範囲内に第三者が存在しない状況でのみ飛行を実施す る。
- 操縦者は、夜間飛行の訓練を修了した者に限る。
- 補助者についても、 飛行させている無人航空機の特性を十分理解させておくこと。 など
高度が深く関わってきます。
飛行高度に応じて第三者が存在しない状況をつくる
例えば高度50mだった場合に、半径50m(直径100m)の地上に第三者が存在しないのが条件です。
例えば直径100mの中に、第三者の住宅や歩道・道路があった場合には、第三者が存在してしまうため夜間飛行ができません。
広大な敷地での飛行でない限り、高度の高い夜間飛行は不可能に近いと言えます。さらに補助者はドローンの知識を有している必要があります。
人口集中地区では夜間飛行はできない
注意しなければならいのが、航空局標準マニュアルの包括申請の場合には、
- 人又は家屋が密集している地域の上空では夜間飛行は行わない。
人口集中地区(DID)では夜間飛行が許されていないということです。包括申請で許可を得ている場合、これに反してしまうと許可外での飛行になり、航空法違反になるため要注意です。
標準マニュアル:安全を確保するために必要な体制(目視外飛行)
最後に目視外飛行については…
目視外飛行を行う際の体制
- 飛行の前には、飛行ルート下に第三者がいないことを確認し、双眼鏡等を有する補助者のもと、目視外飛行を実施する
- 補助者についても、飛行させている無人航空機の特性を十分理解させておくこと。 など
危険を回避するために条件がありますね。
双眼鏡を有した補助者を配置する
目視外飛行を操縦者が行う際には、飛行ルートに第三者がいないことが大前提となっており、補助者が双眼鏡などで監視。
さらに補助者に対してもドローンの特性を十分に理解が必要とのこと。
一概に目視外飛行といっても補助者はそれ相応の準備や対応をしなければなりません。
人口集中地区では目視外飛行はできない
夜間飛行同様、航空局標準マニュアルの包括申請の場合には、
- 人又は家屋が密集している地域の上空では目視外飛行は行わない。
人口集中地区(DID)での目視外飛行は許可されていません。人口集中地区で目視外を行った場合には航空法違反になりますね。
標準マニュアル:非常時の連絡体制
重力がある限り、モノは落下します。ドローンも同様に墜落します。
不測の事態が起きた場合には、関係各所への連絡をおこなわなければなりません。
あらかじめ、 飛行の場所を管轄する警察署消防等連絡先調べ2-8 (1 1) に掲げる事態が発生した際には、 必要に応じて直ちに警察署 、消防署 、その他必要な機関等へ連絡するともに、 以下のとおり許可等を行った国土交通省航空局安全部運航課、地方航空局保安部運用課又は空港事務所まで報告する。
事前に飛行場所の警察署および消防署の電話番号を調べておき、何かあった際には早急に連絡ができる体制を敷かなければなりません。
例えば、東京の渋谷区渋谷で飛行する場合には
- 渋谷警察署(03-3498-0110)
- 渋谷消防署(03-3464-0119)
になります。
その他に、東京航空事務所(03-5757-3022)も対象になります。
航空局標準マニュアルをもとに実施するべきこと
航空局の標準マニュアルに記載されているのは第三者への安全のためです。
もともと禁止されいているエリアおよび飛行方法なのですから、そこでの飛行を許可するには、それなりの条件が加わってくるのは当たり前です。
航空局の標準マニュアルを使用する際には、
- 必要な点検を日頃からおこなう
- 十分な経験を有する者が監督して10時間以上の指定の訓練飛行をおこなう
- 操縦者の安全管理を遵守する
- どのような飛行でも補助者を用意し、第三者の上空は飛行せず、第三者への注意喚起をおこなう
といった要項を遵守しなければなりません。
遵守せずに条件に該当しない方法で飛行した場合は、許可外での飛行と見なされてしまいます。
同様に、包括申請をおこなう場合の航空局標準マニュアルでも前述したように
- 人口集中地区では夜間飛行してはいけない
- 人口集中地区では目視外飛行をしてはいけない
- 離発着は30m以上確保する
などと言った飛行条件があります。
「夜間飛行の許可を持っている!」と言ったとしても、人口集中地区では飛行しないことが条件の許可です。(たまに勘違いしている方がいらっしゃいます…)
航空局標準マニュアルを読破して理解するのが申請の1歩目
上記のように様々な飛行する上での条件が課せられています。
もし、その条件を無視して飛行を行った場合には、航空法違反に抵触すると十分に考えられます。
航空局の標準マニュアルを読破する。1文言ずつ、理解をする。
もしどうしても意味がわからない場合には、お金を払ってドローンスクールのような塾に通ったほうが無難です。
ただ単純に「ドローンの申請できる」というわけではなく、
- 一定での操縦スキルを有する
- 一定条件下を敷いた安全対策をする
それを守れる人間が、人口集中地区や夜間飛行といった禁止飛行でも申請を出せるというわけです。
そして許可を取ったとしても何でもかんでも自由に飛行できるわけではありません。
マニュアルに記載された飛行方法や安全対策でなら飛行できるだけです。第三者を傷つけないためにも、強く認識しなければなりませんね。
あとがき
航空局標準マニュアルというのが、ドローンユーザーの中で少しふんわりと漂ってしまっている感じがします。
特に電子申請が始まってから肌感覚ですが、ゆるい空気が流れている気がします。
きっと警察に通報されたときや事故を起こしたときに、「とんでもないことになるんだろうな…」と黙って見守っていました…。
航空法はあくまで空のルールです。
地上にもルールが存在するので、より正しい認識をもっていただくには↓の記事を一読いただけると嬉しいです。
ドローン自体を強く縛ることは避けたいです。
ただ最低限でも定められたルールを守ることは必要不可欠です。だって法律ですから。
もし違反をすれば刑法でしょっぴかれますし、事故が起きればさらに法律が厳しくなるのは目に見えています。(2017年11月の大垣イベント事故以降は、イベント飛行が極端に厳しくなりました)
自らの首を絞めないためにも、申請を出そうと考えている方は「航空法を違反せずマニュアルの約束事を守るのは最低限である」ことを必要以上に認識をしなければならないと思います。