こんにちは、株式会社ドローンエンタープライズ 代表の早川(@hayakawa_drone)です。
「ドローンって第三者の上空を飛行させていいのですか?」
ドローンを始めていくとそのような疑問が出てくると思います。航空法や飛行許可要件を調べていくと、しきりに「第三者の上空」という言葉が目に入ってきますからね。
多くの人が引っかかりやすく、勘違いが起きやすい「第三者の上空」。
今回のブログ記事では…
- ドローンは第三者の上空を飛行できるのか?
- 具体的に第三者に関わる法律や許可要件は何なのか?
- どうすれば第三者の上空を飛行できるのか?
この3点中心に「第三者の上空」を法律面から解説していき、さらにモラル・安全性などを考慮した見解を執筆します。
できる限りリアルに、法律や許可要件を交えて、しっかりとお伝えします。
この情報を知らずにまた、第三者の上空を飛行している映像が世の中に公開されれば、それが証拠物件になりえるので十分に気をつけましょう。
このページに書いてあること
ドローンは第三者の上空を飛行できるのか?
結論から書きます。
重量200g以上のドローンは第三者の上空は飛行できません。99.99%の割合でNGです。
理由は3つです。
- 航空法の「飛行前確認」にて、飛行経路に第三者がいないことを確認しなければならないため
- 飛行許可条件に「第三者の上空は禁止」しているため
- 墜落や操縦ミスによる第三者への安全性が大きく損なわれるため
ドローンは空中を飛ぶものであり、当然ですが重力がある限り墜落します。危険性はあるものは必ず制限があります。
上記3つについて、順を追って解説していきます。
ドローンが第三者の上空で飛行できない3つの理由
なぜ第三者の上空をドローンが飛行できないのか?を法律や許可条件、そしてモラルを含めて書きますね。
少し長いですが、熟読いただければと思います。
理由01. 航空法 第132条の2第2号の「飛行前確認」があるから
まず法律でドローンを飛行する際に「飛行前確認」をすることが決められています。
2019年9月18日付けで航空法の一部が改正、追加されました。
令和元年9月18日付けで「航空法及び運輸安全委員会設置法の一部を改正する法律(令和元年法律第38号)」・「航空法施行規則の一部を改正する省令(令和元年国土交通省令第29号)」が一部施行・全面施行され、以下の無人航空機の飛行の方法が追加されます。違反した場合には罰則が科せられますので、ご注意ください。
もともと存在していた飛行方法の禁止の中に「飛行前確認」が法律に加わりました。
簡単に言うとドローンを飛行する前に必ずチェックしてね、という法律です。
飛行前に機体の点検等を実施することで故障等による落下を防止するため、航空法 第 132 条の2第2号により、飛行に必要な準備が整っていることを確認した後にお いて飛行させることとしている。
では、具体的な飛行確認とはなんだろうか?と見ていくと…そこに第三者の上空が入ってきます。
国土交通省航空局からの引用をすると…
(2)当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況を確認すること
具体的な例
- 飛行経路に航空機や他の無人航空機が飛行していないことの確認
- 飛行経路下に第三者がいないことの確認
飛行前確認の具体例として「飛行経路下に第三者がいないことの確認」と定めています。
つまり、第三者がいないところをドローンが飛行しなければなりません。もし飛行経路下に第三者がいた場合には飛行できないということです。
この飛行前確認(=経路下に第三者がいない)を怠った場合には「航空法 第 132 条の2第2号」の違反になります。
この理由1の時点ですでにどのようなエリアや条件下になったとしても「第三者の上空」というのが、法律上で全面的に禁止であるということです。
理由02. 国土交通省の飛行許可条件に「第三者の上空は禁止」しているため
DIDや物件から30m以内などのドローン飛行の場合には、国土交通省航空局から飛行申請を行わなわなければなりません。
一定の飛行スキルをクリアした後、安全対策を施した場合に限ってドローン飛行許可が降ります。
その許可条件の中に「第三者の上空は飛行しない」ことが記載されています。
4-3 無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制
4-3-1 次に掲げる事項を遵守しながら無人航空機を飛行させることができる体
制を構築すること。(1)第三者に対する危害を防止するため、原則として第三者の上空で無人航空機
を飛行させないこと。
この文言をそのまま読めば分かるのですが「第三者の上空で無人航空機を飛行させないこと」が定められています。
これが許可条件となっているため、第三者の上空は禁止であるのは当たり前のことです。
理由03. 墜落や操縦ミスによる第三者への安全性が大きく損なわれるため
国土交通省から一般ユーザーに向けて分かりやすいように、ドローン飛行ガイドラインが出されています。
そこには第三者の上空はどのように記載されているでしょうか?
3.注意事項
無人航空機を安全に飛行させるためには、航空法を遵守することはもちろんですが、
周囲の状況などに応じて、さらに安全への配慮が求められます。具体的には、以下の
事項にも注意して飛行させましょう。(1)飛行させる場所
操縦ミスなどで無人航空機が落下した際に、下に第三者がいれば大きな危害を及ぼすおそれがあります。第三者の上空では飛行させないでください。
飛行させる場所にも「第三者の上空では飛行させない」とガイドラインに記載があります。
その理由として安全への配慮を求めるためとあります。
このあとに後述しますが、実際に事故が起きていますので、怪我をさせるという点では第三者の上空は限りなくリスクが上がります。
安全のために第三者の上空に飛行させないのは至極当然です。
「第三者の上空」の第三者とは誰が対象なのか?
そもそも第三者とは誰が対象になるのか気になりますよね。
簡単に言うと「そのドローン飛行と関わり合いのない他人」と考えるとスムーズです。
国土交通省航空局のQ&Aには…
「人」とは無人航空機を飛行させる者の関係者(例えば、イベントのエキストラ、競 技大会の大会関係者等、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者を指します。
ドローンを飛行させる者の関係者はOKであって、それ以外が第三者の人と説明されています。
つまり、関係者の上空はOKで、第三者の上空はNGです。
ドローン関係者の上空はOK
そのドローン飛行に関わっている関係者の上空は、ドローン飛行はOKです。
例えばテレビドラマの撮影で、エキストラの上空を飛行するのはOKになります。撮影開始する前に「この経路でドローンが飛行しますからね」と知っていること、かつエキストラは撮影関係者であるからです。
同様にドローンの操縦者の上空はOKですし、一緒にドローンを飛行させに来た友人の上空もOKです。第三者ではないですからね。
第三者の上空はNG
そのドローン飛行に関わりのない人間のすべてが第三者になります。
例えば、通行人。ドローンを飛ぶことを知らなければ、ドローンが誰の所有者かも知りません。全く関係のない第三者ですよね。
同様に、同じ会社に帰属しているスタッフだとしても、そのドローン飛行を知らないのなら、「ドローン飛行に直接的または間接的に関与している者」とは言えません。
ドローンの飛行に対して、非関係者であって、第三者となりえます。
第三者の上空は安全性を考えると?事故したら?
第三者の上空にドローンが飛行して、もし墜落したらどうなるでしょうか。
ドローンが墜落して第三者の頭部に直撃する事例
2016年6月、カナダのイベント会場で起きたドローンの事故映像です。
歩行中の観客にドローンが落下、直撃後気絶して病院へ搬送、首の頸椎を損傷し重傷という事故です。
第三者の上空を飛んでいて墜落した場合は、上記のように「首の頸椎を損傷し重傷」になる可能性は非常に高いです。
日本の工事現場でドローンが墜落、顔に大怪我した事故
2017年2月神奈川県藤沢市で、工事現場で撮影を行った際に、第三者である工事作業員に墜落。顔に大怪我を負いました。
原因は電波障害による操縦不能とされていますが、ここでの注目すべき点はヘルメットをかぶっている工事作業員でさえ、顔に大怪我を負っていることです。
プロの操縦士でさえもドローンを墜落しまくっている
墜落させるなんて素人でしょ?と思われがちですが、プロの操縦士でさえ墜落させています。
国土交通省には事故に関わる過去のレポートが公開されています。
その一部を抜粋すると…
- 急な雨と風で機体を見失い、民家の倉庫に墜落
- 操縦経験150時間、制御不能になり林に墜落
- 測量中にプロペラが外れて墜落
- バッテリー残量低下およびGo Home機能で墜落
- 報道機関のテスト飛行中に操縦不能で海上に墜落
- 制御不能になり空港に隣接する店舗の普通自動車に接触、墜落
とにかくボコボコと墜落してます。それぞれ簡易的に解説していますので、下の参考ページを御覧ください。
どうすれば第三者の上空を飛行できるのか?
「なるほど、第三者の上空はNGだとわかった。でも何か逃げ道あるでしょ?」
そんな貪欲なひとに、2つ方法があります。
重量200g未満のドローンは第三者の上空OK
今までは重量200g以上のドローンの話だったのですが、重量200g未満のドローンは航空法のドローン飛行対象となりません。
そのため上記にある「第三者の云々」は対象外となるわけです。
例えば、199gのMavicMiniといったドローンは法律面では制限がかかりません。
しかし航空法以外で、何かしらの条例違反になる可能性もあります。航空法とは別に存在する条例で「迷惑行為や危険行為に対する条例違反」になる可能性もあります。
例えば海岸や河川では、それぞれ法律や条例が存在します。
その1文として危険行為について明記があるのなら、第三者の上空は危険行為として扱われて、何かしらに処させる場合も考えられます。
航空法に関わらないといったとしても、その他の法律や条例に反する可能性があることは忘れてはいけません。
第三者の上空で飛行できる基準をクリアする機体&スキルを有すること
これに該当するのは0.01%くらいですので、思いっきり割愛します。
国土交通省の許可審査には「やむを得ず第三者の上空を飛行させる場合」に基準を設けています。
5-2(2)やむを得ず、第三者の上空で最大離陸重量 25kg 未満の無 人航空機を飛行させる場合には、次に掲げる基準に適合すること。
ドローン自体の基準として、バッテリーが並列化されていたり、有線でバッテリーに電力供給されていたり、パラシュートを展開できる機能がついていたり。
これらはDJI等の既製品では販売しておらず、当然ながらクリアできないため非現実的です。
上記の審査要領PDFを読み込んで、自分でなんとかやってください。また、審査要領の意味がわからないのなら、そもそも無理です。(突き放してスミマセン…)
第三者の上空を制限するのは「安全に万全に期する」こと
第三者の上空を飛行させるというのは、全く関係のない第三者に危害を加える可能性を与える行為です。
もし墜落をしたとしたら、首の頸椎を損傷したり、顔を怪我させることは容易に想像できるはずです。
「ドローン保険に入っているから大丈夫だよ」とチープな発想をする方もいますが、怪我を負った第三者の人生はどうなるのかの想像できますよね。
国土交通省航空局の飛行ガイドラインの冒頭に、こう記しています。
航空法の一部を改正する法律(平成 27 年法律第 67 号)により、無人航空機の飛行に関する基本的なルールが定められました。無人航空機の利用者の皆様は、同法及び関係法令を遵守し、第三者に迷惑をかけることなく安全に飛行させることを心がけてください。
また、無人航空機を飛行させる者は、航空法や関係法令を遵守することはもちろんですが、使用する無人航空機の機能及び性能を十分に理解し、飛行の方法及び場所に応じて生じるおそれがある飛行のリスクを事前に検証し、必要に応じてさらなる安全上の措置を講じるよう、無人航空機の飛行の安全に万全を期すことが必要です。
少し長いですが、ドローンを飛行する上で、
- 法令を遵守する
- 第三者に迷惑をかけない
- 飛行の安全に万全を期する
を心がけて、ドローン飛行の安全に対してこの3つを求めています。
だからこそ、一定の制限があるのは当然のことですし、大事故が起きる前に予測可能なことは制限をかけるのは当然です。
第三者の上空は全面的にNGだけど、将来、特定条件下で飛行できるように制度設計中
2021年の段階で、第三者の上空は全面的にNGです。
ただしドローン宅配といった産業にとって、この第三者の上空が制限がかかることは不合理と言えます。
そのためドローンに関わる航空法や制度設計をおこない、
- 機体承認を受けたドローン
- ライセンス登録された操縦者
この2つがクリアできた場合にはカテゴリ3に該当する第三者の上空が飛行可能になるように検討されています。
2022年度に実現できるように、専門者が進めており、ドローン宅配等の産業に向けて
- 今まで :第三者の上空は飛行不可
- 法整備後:機体承認+ライセンス操縦者+経路等の個別申請で飛行可
ただし、思いっきりハードルが高く、あくまで宅配などの産業用の制度であるため、空撮と言った分野には無関係です。
あとがき
「ドローン飛行=第三者の上空は飛行禁止」
これだけ覚えておけばOKですね。